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UTAU式人力特化でMIXを語ってみる


注意事項

この記事に、音源の切り出しやUTAUの使用法,コツなどについての記載はありません。あくまで調声後のMIXについての記事となります。UTAU自体について知りたい場合は他記事をご覧下さい。一通り作り方はわかるけど!  という中級者向けの記事となります。
(また私は音楽の専門ではない為、間違い多々あると思います。あくまで人力を触っている一般人の一意見としてお読み下さい)

調声は出来るけどMIXがなおざりになってる、もっと声をオケに馴染ませたい、声を映えさせたい、といった方の助けとなれば幸いです。

解説ではこの二つの人力動画のmix手法を参照しています。ぜひ聴いてね




使用DAW


まず一つ。


Audacityで!!!! MIXを!!!! するな!!!!!!!!


音源の切り出しなど、何かと便利なAudacityさんですが、彼は"音声編集ソフト"であり、DAW(Digital Audio Workstation)ではありません。DAWを入れましょう。

ここで代表的なDAWを紹介します。

Cubase

Logic pro

Studio one

REAPER

もちろん上記にないDAWでも大丈夫です。難しいことはわからないけど、ラクに無料で済ませたいという場合は"Studio one Prime"を強く勧めます。無料DAWを用いる場合は、狙った効果を得るために無料VSTプラグインをインストールし、試行錯誤する必要があることをご留意下さい。頻繁に触るという方は有料daw,有料プラグイン導入も一つの手かも…?

(以下、"Logic pro"を用い説明を行います)


ざっくり手順


EQ(削る)→マルチコンプ→コンプ→EQ(ブースト&調整)→ディエッサー→エキサイター→サチュレーション→空間系(今回はディレイ)

となります。


EQ(一回目)

コンプレッサーで音を潰す前に、耳障りな音を先に目立たなくさせる為のEQです。この初手のEQでUTAUっぽさが潰せるので何気に大事です。ここではかなり極端に削っています(-10dbとか)

削る帯域は3つ

1, 低次倍音

男性:150Hz~300Hz

女性:200Hz~400Hz

2,基音周辺

男性:800Hz~1200Hz

女性:1500Hz~1800Hz

3,50~80Hz未満は全カット(ローパス)


特に2は元の声によってかなりブレるのであくまで参考程度に、自分の耳を頼りに耳障りだと感じるところを大きく削ってください。(尚、元の声のキャラが優しい場合や曲調がバラードで声自体が目立ちやすい、といった場合は削りを甘めにして素材を大切にした方がうまくいきやすいです。ケースバイケース…!!)


マルチコンプ

EQで整えたものをさらに整形します。

耳障りになりやすいとされる500Hz~600Hzをピンポイントで3-4db下げた上で、EQで削り切れないところなどを更に下げます。私は低次倍音を若干下げることが多いです。マルチコンプによって声がやや丸くなるかも…?


コンプレッサー

コンプで音を作るときは音を歪ませすぎない事、音質をとにかく整えたいのでアタックを遅めに設定する事を念頭に置いています。具体的な数値としては

レシオ:2:1~3.5:1 (4:1も定番ですが、人力にかけると機械っぽさが出てしまうかな? という印象でした)

アタック:30ms~50ms(キツい感じを出したければアタックを短くする。柔らかくしたければ長くする)

スレッショルド:-10~-25db(耳で聴きながら要調整)

尚音量差が激しい場合、コンプで音が劣化する場合もあるのでオートメーション機能で音量を整えてください。(人力の場合元の音素の音量がバラバラゆえ、ここで事故る事も多いです。波型を見て細かく音量調整してください)


EQ(2回目)

ここでは倍音を目立たせて、輪郭を与える為に調整します。声が化けます。キャラらしさをどう出すかを念頭に置きながら、パラメータを弄ってみると良いです。ここで初めて音をブーストするのですが、上げすぎに気をつけてください。一気に+5dbとかしてしまうと急に不自然になってしまうので、少しずつ慎重な調整が必要です。

人力は声が太くないことが多いので、

800Hz~1.5khz(女性の場合は1.2kHz~2kHz)をまずブーストします。

その後倍々に、3~6kHzといった帯域も、子音の鋭さを聞きつつブーストし、最後に10kHz以上の高域をブーストします。(空気感が出ます)

またこの時、UTAU特有のキュルキュルとした高音ノイズが目立ってしまう場合があります。そういう場合はノイズの周波数を探し、(経験上3-4kHzが多い)凹ませるとある程度ごまかせます。酷い場合は調声し直しましょう!!

その他この時点で気になるノイズがあれば適宜下げて直しましょう。(EQを更に一つ重ねるのもアリ)


ディエッサー

(子音が気にならない場合は飛ばしてOKです)

EQで目立ってしまった子音を抑える為のプラグインです。プリセットがあればプリセットで大丈夫。そのままだとかかりすぎて発音が悪くなる場合があるので、スレッショルドで適宜調整しましょう。Splitモードを使用してください。

(参考)

Frequency:7.5kHz~8kHz

がおすすめ


エキサイター

(無料DAWにはないことが多いプラグインです。無料プラグインや、場合によっては有料のもので対応すると良いです)

なくても成り立つけどあると雰囲気がいいね、といった効果が得られるプラグインです。高域を上げてくれるので空気感が出ます! (EQでうまく上げられない時に補助で使う感じ)

設定についてはまんまMitche Mさんの受け売りとなってしまうので、詳しく見たい方は以下のサイトをご覧下さい。

周波数を15900Hzに固定した上で、ハーモニクスを聴きながら調整する形です。


サチュレーション

声を前に出したい、暖かみを加えたい場合使用します。音を汚してキャラクターを与えるプラグインです。

ここではlogic pro内蔵の"OverDrive"をサチュレーションとして使用しています。

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Toneを上限の20kHzに。Driveが0dbですが、このプラグインの仕様上倍音が付加されるそうです。すげ〜。オケが激しい時はDriveを少し持ち上げてもいい感じになります。無料VSTで同様の効果を得たい場合は"サチュレーション"で検索してください。


空間系

一番むずい〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜!!!!!

空間系は人によってかなり様々なので、色々な意見を拾いつつ自分なりのものを探すのが一番です。

空間系は大きく分けて

ディレイとリバーブ

があるのですが、人力の場合はディレイのみで調整すると発音が濁りづらく良い、というのが個人の感想です。(リバーブは単純に扱いが難しいというのもあります…💦 私ももっと勉強しないと) 

メインはディレイだけで、ハモリは広がりを与える為に(ハモリの調声の雑さを誤魔化す為に!)プリセット任せで強めのリバーブを足すのが常です。

空間系をインサート(通常通りの掛け方)するかセンドにするかだけで、ちょっと1記事書けちゃうくらいの大きな議題なんですが、こと人力においてはどちらでも構わないかな…? というのが本音です。ただ合唱など何トラックもエフェクトをかけなければいけない場合は、pcがフリーズしてしまうのでセンド・リターンで負荷を軽減させましょう。


以下ディレイの設定について、

(センドの場合はwet100にしてください)

1, 低域と高域をカット(私は~100Hzと8kHz~をカットしてます)

2, 60〜100msあたり、短めにディレイを設定する。左右でディレイタイムを変える所謂ピンポンディレイに設定すると面白かったり

3,フィードバックは20%を基準に聴きながら設定

(4,インサートの場合はmixを10%~20%あたりに設定。聴きながら調整)


マスタリング

https://bakuage.com/

↑↑騙されたと思って一回使ってみてください↑↑

一時期話題になっていた無料マスタリングサービス"音圧爆上げくん"。名前通り爆上がるので重宝しております。私はこれかiZotopeマスタリングのAI機能(有料)を主に使用してます。
手動マスタリングならば
マルチコンプ→EQ→マキシマイザー/リミッター
の順でかけると良いです。
マルチコンプは帯域を四つに分ける。100Hz以下、100Hz〜1kHz、1kHz〜5kHz、5kHz以上。
その上でレシオ低めに、アタックを低→高に従ってだんだん速くするのが個人的に好きです。

おまけ


フランジャー

冒頭に紹介した動画の2つ目(シiャiーiデiンiフiロiイiデ )のラスサビで使用しています。(DLしたくない場合は冒頭の動画リンクから効果をお聞きください。2:58~,3:16~で使用しています。)オーディオが2つなくても、2個あるように聞こえるダブリング効果が働きます。使用する時は使いたい部分のメイントラックをコピーして別トラックでかけることが多いです。強烈なうねりが発生する為、例では「バグ」の表現として利用しました。飛び道具としてちょうどいい。フランジャーはその他薄くかけるとがなりを目立たせる時にも使えたりする。

スクリーンショット 2022-02-14 13.42.42

例のmixは以上の通りです。mixを低くしてその他微調整するとがなりっぽくなります。

オケにEQ

邪道です。でも強力な技。やり方は簡単、1kHz~2kHz広めにレンジを取って、-0.5~-1db押し下げます。これだけであら不思議、声が前に出てきてくれる。声がオケに埋もれてしまった時にやると良し。

タイミング調整

(ロジプロ,studio one最上位版,Cubase他有料dawでないとキツい? かも)

UTAU上では大体楽譜通りに歌わせていることが多いので、そこから敢えてずらして人間らしさやグルーヴ感を出す時に使用します。UTAU上でも調整できるので無理にDAWでやる必要はないのですが、オケと合わせながらタイミングを整えられるのは強みです。


まとめ

MIXは10人やったら10人やり方が違う、というくらい奥の深いものですし、私も日々掛け方を変えつつ試行錯誤している真っ最中です。是非ネット上のやり方ブログに縛られず、推しの声が一番際立つMIXを探してみてください。MIXは調声作業の一つですので! また、今回の記事は"人力特化"と銘打ちましたが、この方法は他の合成音声や歌ってみたのMIXなどにも通ずるものがあると考えています。音作りの参考に、少しでもなれば嬉しい限りです。そしてUTAU式人力文化が広がるといいな〜〜〜〜!!! 
最後に、記事にて動画内画像の使用を快諾くださった動画師の四ノ庫様に感謝致します。


キジ(るし)




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