『Aマッソのがんばれ奥様ッソ!』について

Aマッソのがんばれ奥様ッソ!
悩める大家族の奥様のお悩みを解決!(前半戦)

https://video.tv-tokyo.co.jp/Amasso_Okusama/episode/00084015.html

・まずはネタバレを全く踏まずに視聴したい方はこちらへ。
見る順番としては、大家族編(前・後)→田舎暮らし編(前・後)→特別編①→特別編②が放送順に則っており自然かと思います。

TVer、ネットでテレ東の配信は1月25日まで。一度見始めれば案外サクッと見終わると思います。

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以下、読み進めるにつれやんわりとネタバレを含みます。ご了承ください。

・虹コン岡田彩夢さんのインスタのストーリーを眺めていたら、この2日ほどで喬太郎師匠の死神に触れていたり、『奥様ッソ!』を視聴していることを知った。数日前から #だぁやえーる #岡田布教 のツイート群が流れてきていたので、なんとなくどういうことが行われているかは察していた。

・正直、これはとても嬉しいこと。というのも、奥様ッソ!を見た視聴者が楽しむ上で”考察”がもうひとつのコアとなるだからだ。実際、番組ハッシュタグを遡れば、番組に関する様々な考察が引っ掛かる。ほら、だぁちゃんそういうの好きそうでしょ。刺さるべくして刺さった感じ。

・年末年始に様々な特番を見たが、インパクトとしては個人的に一番の番組だったかなと思う。ちなみに2番目は「渡辺篤史の建もの探訪 新春SP ゲスト・千原ジュニア」でした。

・番組のスタッフロールで作り手が竹村武司さんであることを知る。構成は全部で4人だったが、名前の順番的におそらくメイン構成は竹村さんだろう。竹村さんは”山田孝之のブレーン"と称される方。様々な番組を担当され、特に「イグナッツ!」はおひとりで構成を担当。「10文字委員会」「勝手に昔話の続編選手権」など、独自の色を持つ企画を出されている印象。ワクワクするコンテンツを世に産み出し続ける名クリエイターだ。

・『奥様ッソ!』は、「放送禁止」「フェイクドキュメンタリー『Q』」に類似するとSNS上で指摘がある。実際その通りだと思うが、いずれにしても”モキュメンタリ―の傑作”であることは変わりないだろう。ここまでバラエティ番組に見事に擬態させたモキュメンタリーを私は見たことがない。

・放送局はBSテレ東。テレ東といえば、昨年テレ東の深夜(未明)に人知れず放送され一部界隈で大きな話題を呼んだ『蓋』(演出・上出遼平)を放送した実績がある。民放の中では一番前衛的で実験的な番組を打ち出すクリエイティビティさあふれるテレビ局である。今回の制作にも頷けた。

・今回一番驚いたのは「おせっかい奥様」としてレポーターに起用された金田朋子(ラジオリスナーだったので個人的に朋ちゃんと呼ぶ)である。
田舎暮らし編の紺野ぶるまは演技は上手だったが、それは「演出、演技が裏で見え隠れしている上での上手な演技」であった(ちなみに何も知らないふりをして不自然な部分に過度に突っ込むと物語として全て崩れてしまうから、紺野ぶるまがこう見えているのは正しい)。
ただ、朋ちゃんはその演出意図を汲みながらレポーターとして何も知らされていない、この物語とは全く無縁な能天気でちゃらんぽらんな出演者に見えたのだ。この辺が不思議である。おそらく本人は台本通り忠実にやっているのだろうに。
もちろん、本人のバラエティでのキャラ・活躍ぶりが下地にあることは間違いない。しかし、彼女は声優であり役者である。この放送で朋ちゃんの持つ実力をまざまざと見せ付けられた。
おかげさまでこの物語への没入が進み、違和感を与えるポイントに達した時点で明瞭に”違和感”としてくっきり捉えることが出来た。彼女を影の功労者として評価したい。

・後々、この番組を配信で見た視聴者はこぞって「何も知らされずに深夜、暗い部屋の中で偶然出会いたかった」と言う。
だが、この番組においてはそれは難しいだろう。それを言うならばむしろ前途の『蓋』はそうだと思う。蓋はコンセプト的にも放送時間(平日の深夜4時頃)的にも条件が合致するからだ。
『奥様ッソ!』は、年末の夜帯に4夜連続という形で放送された(確か12/27~30の22:30-だったっけ?)。しかも放送局がBSテレ東である。年末のこの時間にザッピングして偶然見かける可能性は正直低いだろう。せいぜいBS放送を流しっ放しの高齢者が「ん?何かバラエティー番組が始まったな」と手を止めるくらいか。

・この番組自体、大雑把に流し見をすれば全く違和感を感じることなく見終わってしまう可能性がある。SNSで指摘されていた「もう少しわかりにくくすればもっと面白かった」という意見は、TVerなどで番組を真剣に見ているからそう思うだけで、リアルタイムの流し見の視聴者でも直感的に違和感を感じてもらうべく、制作側はあえて”粗く作った”と考えていい。

・しかし、この番組にリアルタイムでたまたま出会えたバラエティーファンは奇跡というか僥倖と呼べるレベルにあると思う。年末のこの時間帯は激戦区であり、リアタイはよっぽどのAマッソのファンか…いや、それにしたってこの層ですらほとんどが録画対応や配信待ちのような気がする。
つまりは、オンエアー→SNSで評判に→配信視聴数が回る→各種考察が行われる、という現在のこの広がりは、むしろ制作陣にとっては想定の範囲内だろう。だからこそ、配信限定の”特別編”が存在するわけだ。ある意味、ここが全ての答え合わせ・種明かしである。

・文春砲を食らって両者とも奥様バレをしたAマッソ2人が、まさか年末にこんなトンデモ番組を仕掛けてくるとは全く想定していなかった。よく考えれば、Aマッソがこんな見かけ上の生ぬるい番組をそう易々と引き受ける訳がないと喰ってかかるべきだった。
ただ、この番組が誕生するきっかけこそすれ、文春砲に感謝するつもりは一切無い。

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