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これを見たら連絡をください

今、人を探している。共通の知人から連絡があり、その人が失踪したことを知った。突然誰とも連絡がとれなくなっているらしい。会う約束をしていた人が彼に会えなかったそうだ。彼が最近どうしているのか知らなかった。7月上旬にtwitterのアカウントが消えていた。消えていたことにしばらく気づいていなかった。

ずいぶん前に知り合った人で、それほど会わなくても親しい気持ちを持っていた。消息がわからなくなっていると知ってから、彼のことをいろいろ思い出してみている。思い出してみると付き合いが長いのでたまにしか会わないのに無限に思い出が出てくる。それとともになぜか熱い涙が目から出てくる。前会ったのは1年半くらい前か。そのときは元気だった気がするが。そんな素振りも見せずになにか苦労していたのかもしれない。涙が出てくるのはもう会えないのかもしれないと何となく思っているのだ。そんな確証はないのに。どこにいるのかわからない、最悪のことも考えなければならないのかと思い始めると考えがまとまらなくなってなかなか眠れなくなった。検索をしてみたりすると、文章を書いていた人なので彼の文が検索結果に出てくる。短い文章がぬるりと立ちはだかり、面になって、像になって、それが風景にならずにそのまま空気になるようだった。話すとつねに面白いことを言っていた。

探しているといってもあまりそれらしいことはできていない。どこに行ったのか知りませんかと誰も彼もに尋ねるわけにはいかない。事務的にすべきことは彼のもっと親しい友人たちがたぶん既に手を尽くしている。しかし手がかりがない。

日常的な自分の仕事は最終的に誰かと誰かが会えなくなってしまうのを横でサポートする仕事だ。ふだんあまり他人の別れに堪えることはない。これはこの関係において運命だとか長い人生のなかの結果だと思ってしまえるからだ。(たぶん)(そう思う準備をしすぎている)しかし自分のことになると死ぬ死なないのことでもなく昨日まで数年会っていなかった人にこれから会えなくなるのかもしれないと考えるだけでただひたすらに怖くて悲しい。強い感情に揺さぶられるたびに、自分が感情のことを何も知らない人間だったように感じる。雨も降って風も吹いて雷も落ちるようなそういう感情の中に無防備に立っているような状態だった。先日看取った方の遺族から御礼の電話があり、いつもであれば淡々とお話を聞くが、滂沱の涙で話を聞いた。安全な場所にいてもそうじゃないみたいに雨に降られたり風にふきまくられたりしている。

これを見たら連絡をください。無事だと教えてほしい。私はあなたにまた会いたい。もし困っていることがあったら助けたい。あなたの友人はみな同じ気持ちです。

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