Essential ―ショートショート―

「かわいいは作れる」と誰かが言った。

 だから作った。

 整形した。

 私は誰よりもかわいくなった。

 ちやほやされた。

 するとどうだ。

 整形がばれた。

 叩かれた。

「あんたはかわいいわよ」ブスなマスミは汚らしい言葉で私の耳を陵辱する。「あたしだってあんたみたくなりたいもの」でも私は知っている。どれだけブスでもマスミは私のようにならないことを。マスミはブスだけど、整形は社会じゃクズ呼ばわりだってことを知っていた。マスミが私のようになりたいかなんて知ったこっちゃなかったけど、でもマスミは私のようにはならない。絶対に。「だから、あんたが悪いんじゃないわ」私が悪くない?そんなの知ってる。私は何も悪くない。みんな化粧だってするし髪を染めるしアイプチだってするし歯の矯正もする。でも整形だけダメ。なんで?私は何も悪くない。悪いのはいつだって社会だ。親の体だ、とか、整形するともとの人とは変わってしまう、とか、サイボーグ、とか。その考えがおかしいんだってどうして気づかない?「運が、悪かったのよ」

 叩かれた。

 整形して、叩かれた。

 おおいに叩かれた。

 マスコミに、ファンに、社会に――私に嫉妬した人に。

 叩かれた。

 仕事帰りの夜道に、男を連れて、よってたかって叩かれた。

 殴って蹴って犯して捨てて――。

 体の傷は治った。

 でも、心の傷はまだ癒えない。

 その後遺症で、私は話すことができなくなった。

 私から出るものといえば、塩っ辛い涙だけ。

 ――かわいいは、作っちゃダメだったの?

 もしも話せるのなら、私はそれを誰かに訊きたい。


………………


※ショートショートのお題、待ってます!10文字程度のお題をください。

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