勉強は、なぜするの? ―ソラとお姉さん―

 

「おやおやソラちゃん、どうしたの?」

「あのねあのね、お姉さん、どうしてソラたちは勉強しなきゃいけないの?」

「うーん、それはむずかしい質問だね。ソラちゃんは勉強きらい?」

「うん!」

「あはは、そんなに元気いっぱい頷かれると、お姉さんも困っちゃうな。でもね、そうだなー、今日はソラちゃんに『勉強はしなきゃだめ』ってことをお姉さんが教えてあげるね」

「おもしろくないもん、勉強なんて」

「ソラちゃん、すぐそうやって決めつけるのはソラちゃんの悪いクセだぞ。……うーん、でもそうだなぁ、勉強は面白くないね。それはそうだ。『学ぶことの楽しさ』については、またべつの機会にしよう。今日は、『勉強』の話だ」

「じゃあさ、勉強って、なんでするの?」

「お、いい指摘だね」

「えへへ」

「じゃあ逆に、お姉さんから質問するよ。ソラちゃんって、なにか部活とかやってる? もしくは習い事とか」

「ソラねー、あのねー、ピアノ習ってるの!」

「おーすごいね。ソラちゃん、ピアノ楽しい?」

「うん!」

「じゃあピアノはソラちゃんがやりたくて始めたの?」

「ううん。ソラのお母さんがねー、ピアノやりなさいって言ってたの。ソラもさいしょイヤだったけど、ピアノがんばってたから、だんだんうまくなったから、たのしい!」

「そっかそっか。それはいいことだ。じゃあさらに質問するね、ソラちゃんは、もしもピアノを習っていなかったらピアノを楽しいと思ったかい?

「え? ……わかんない。あ、でもね、でもね、ソラ、ピアノ好き!」

「そう。ピアノを習ったからこそ、ピアノの面白さを知れたんだ。これって勉強にも言えるんだよ」

「でもソラ、勉強いっぱいするけど、勉強たのしくないもん!」

「そうだね。でももしかしたら、算数の博士になるかもしれないでしょ」

「ううん。ソラ、算数きらーい」

「むむ、こいつは強情だな。……そーだなぁ、うん、ソラちゃんは将来になりたいものってあるかな?」

「うんとね、うんとね……うーん……と……」

「まだ決まってないかな?」

「……(コクリ)」

「そう。だから勉強をするんだ」

「え?」

自分がやりたい何かを見つけるために、勉強をするんだ。勉強しなけりゃ、自分が何に向いているのか、どういうことが好きなのか、何もわからないんだよ」

「でもねでもね、ソラね、お勉強ぜーんぶキライなの」

「そうかもね。それはみんなそうさ。ただ、面白いことに勉強嫌いには壁があってね、そこを越えられると急に面白さが得られるんだよ」

「うー、そうなの?」

「だからね、ソラちゃん、『勉強なんてしなくていい』なんて言う大人は信じちゃダメだよ。そういう大人たちも勉強をしたから何が苦手で何が得意かを知って、今のお仕事をしているんだ。たとえばソラちゃんが大人になったら算数が得意になってるとしよう。……ああ、そんなにいやな顔しないでよ、ソラちゃん。もしものお話だから。もしもソラちゃんが算数が得意になったら、算数博士になるかもしれない。そういうとき、算数を勉強していなかったら『算数博士』って目標も立てられないはずなんだ

「あー! ピアノのお話といっしょだー!」

「そうだね。ピアノのお話といっしょ。算数を勉強したからこそ、算数の面白さに気づけたってことだね」

「すごーい!」

「じゃあソラちゃんも勉強、がんばろっか」

「でも勉強きらーい!」

「ありゃりゃ……」

「でもねでもね、ソラがんばってみる! 勉強、キライだけど、がんばる!

「おお、すごいや。その意気だよ!」

「でもその前にあそぶー!

「あちゃー」


ソラとお姉さんシリーズ
次回は「学ぶことの楽しさ」について。
ご期待ください。

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