リアリティの在り処(5)

(承前)
話を戻そう。
造形に陰影の情報が含まれることで塗り方を制限される気がする、ってとこまで。

人間の目は輝度変化(明るさの変化)には敏感に反応するが、色調の変化には比較的鈍感なんだそうで。この特性はペイントでは結構重要な要素なんだけど、これはまたそのうちまとめよう。
つまり形状は明暗で把握しているって事で、そのコントラストの強弱が造形のメリハリに直結していることが多い。だからこのメリハリが極端なもの(つまり明暗の階調が少ないもの)は、ペイントで明暗の諧調を描きこむ事で造形に不足している情報を補填するように錯視させる必要がある。これはペイントの醍醐味のひとつでもあるので否定するものではないし、ある意味基本でもあるかなとも思う。

だけど。だけどだよ?

発表媒体が写真だったり、ましてブラウザだったりという世の中になって、模型は事実上サイズレスになったと思うのね。もうほんとに勘弁してよって思うレベルまで拡大されたりする。
造形はその造形物のサイズで造形者が適切だと思う明暗のコントラストで作られているわけで、拡大したら破綻するのはいうまでもない。
それをペイントでフォローするのも限界があるし、最初に書いたように「実際の人間の写真のようにみせたい」となるとこりゃもう自分には無理。そんな画力があったら画家になってます。
つまり長々と書いてきたけど造形に塗り方を制限されるっていうのは、自分の画力程度ではサイズレスで陰影の整合をとりつつ不足している階調を追加して、尚且つ質感も表現するのは無理ですごめんなさい、っていう話。

明暗の呪縛から開放されたい。

これが3Dスキャンフィギュア登場直前の、自分の切実な願いだったわけですよ。

さあ自分でも着地点が見えなくなってきたけれどとりあえず続く

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