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リアリティの在り処(4)

(承前)
それまでの造形が下手だといっているわけじゃあない。当時自分でも何度かフィギュアを造形してみたりもして、それがどれくらい難しいか痛感してもいるし。
で、何が問題なのかというと、大抵のフィギュアは陰影の情報が造形に含まれてしまうということなんだ。
この陰影のコントラストの強弱が彫りの深さであったり面構成にも大きく影響してくる。だから凄く塗りやすくて写真で見ると文句の無いフィギュアも、手にとって良く見たら人間の顔の形じゃない!なんてこともあったりする。サイズが小さいと気にならないけど1/12くらいだともうはっきりわかっちゃう。これは塗りやすさと表裏一体な気がするんだけど、造形に塗り方を制限されている気がし始めたのだった。
と今なら言えるけど、実際にはタミヤのフォードGPAのフィギュアが3Dスキャンで~という模型誌の記事を見て、買ってみたけど塗れなかった事で気付いたのだ。だから2014年3月の話。

いやもう、GPAはトラウマになるかっていうくらい上手く塗れなくて。
造形の情報量がそれまでとは全く違うのは一見してすぐわかるので、それを丁寧に追いかけるように陰影を描いてー、と普通思うじゃない。だけどコレ、単純にディテールだけを追うとゲームミニチュアペイントでよく見かける「ディテール毎の陰影は綺麗だけど全体の形状としての陰影はまるでダメ」という悪夢に陥りやすい。自分は1つの作品の中で色価(バルール)が合っているか否かっていうのが凄く気になるので、そういう仕上がりは本当にダメ。で、そのあたりをちゃんとやろうとしたら、作業工数も異常に多い上にとても難しい。まあ投げ出したよねー。そんな画力は無かった(笑)

何とか省力化を図ろうとして(そのあたり製造業脳というか…)ウォッシングとドライブラシで何とかならないかとかエアブラシで角度付けて吹けばとか、まあ色々試したものの結局挫折。しばらくはなんとなくモヤモヤしながらお茶を濁していた。その頃には雑誌作例も引き受けるようになっていて、HOW TOなんぞもやっていた訳だから申し訳ない限りではある。ただ、そのおかげで常にタミヤの最新フィギュアに本気で取り組む機会を得た。
そうするとタミヤの造形自体の変化も感じられて、ある時突然塗りやすくなった。タミヤの方で折り合いをつけたんだなってその時は感じたよね。
この折り合いをつけたところの水準の高さというか塩梅の上手さがタミヤのフィギュアを絶賛している理由でもある。
この絶妙な造形のおかげで今の塗装方法をやってみる気になったのだ。

なんかタミヤの話になっちゃった。
続く。



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