セレンディピティ

= 思わぬものを偶然に発見する才能(weblio 英和和英辞書より)

私の中でこれが顕著に現れたのは、自分の好きな色についてである。

小さい頃から、ピンクよりは水色が好きだった。選ぶ色の中に青系の色があれば、即刻それを選んでいたし、プロフ(懐かしいねぇ)や自己紹介などにも好きな色=水色とよく書いていた。

中学時代は、水色の甘さが自分には可愛すぎると思うようになり、青や緑などより濃く暗めな色に惹かれていった。それに加えて、ガラスや宝石、液体などの透明で光を通すものも好きになり、青いビー玉みたいなものはずっと見ていられた。また、さくらももこさんの『宝石物語』を読んで、パライバトルマリンという宝石があることを知り、これが1番好きな色に近いと思った。その色は「地球の色」とも言うとか。素敵。

そして高校時代。部活では、部員お互いを知り仲良くなるための自己紹介帳なるものを毎年書いており、好きな色=青と緑と白をいい感じに混ぜた色と3年間貫いた。確かにその通りだけど、自分の好きな色に名前はないのかなぁと思って、ときどき色彩辞典を眺めたりもしてみた。

エメラルドグリーン、パリスグリーン、ピーコックブルー。なんだか語感が強すぎる。和名だとどうかな。浅葱色、瓶覗、白群。きれいだけど色的になんだかピンとこない。

そんなモヤモヤを抱えたまま大学生に。私は高3辺りからヨルシカというバンドが好きになり、よく聴いていた。昨年リリースされたアルバム『だから僕は音楽をやめた』の8曲目、『五月は花緑青の窓辺から』という曲が1番気に入っている。その走り抜けるような爽快感、胸を打つ強いメッセージに侵されていった。

ふと、「花緑青」という言葉が気になり、検索欄に入れてみた。きれいな言葉だなぁと思ってたけど、それが何かを知らなかったのだ。

参考:伝統色のいろは https://irocore.com/hanarokusho/

心が震えた。電撃が走った。この色を見た瞬間。これだと思った。やっと見つけた。本当に「青と緑と白をいい感じに混ぜた色」だった。その名前も美しく、儚く、求めていたものだった。

好きな色に関しては、ずっと気になっていたから、その「知りたい欲」みたいなものが引きつけたのだろうと思う。パッと好きな色が決められていなかったことも、ヨルシカというバンドに出会えたことも偶然かもしれないけれど。でも、出逢うべくしてこの色と出逢えたと思っていたい。

花緑青はドイツで作られた人工顔料だという。その強い毒性が確認されてからは、使われなくなり色名だけが残った。その気安く触れてはならぬ佇まいにも心惹かれた。

私は一生、この色を愛し続けるだろう。そしてどうか、私を殺すときには花緑青を飲ませてください。

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