日本語競技アカデディベート、パート別ワンポイントアドバイス(中編)

こんにちは。前回の続きです。

第一反駁概論

過去に自身が作ったスライドで使いやすいものがあったので、引っ張ってきました。

スライド6

また、上記スライドは(このスライドや分析に限らず、僕のディベートに対する技術面や取り組み方の多くの部分は)下記ブログの筆者の方の分析を参考にさせていただいております。ディベートにある程度慣れていらっしゃる方は、下記ブログ記事等をお読みいただける方が良いかと思います。

さて、上記の反駁の四要素と、スピーチへのアドバイスがどう絡むか、といいますと、多くは①②④いずれかの欠落が問題となります。

①サインポスティングの欠落
…コミ点を減点される一番の要因です。どこに反駁を打ってるかが分からない。よく、「メリット全体に対して反駁」「解決性全体に反駁」という声が聞こえますが、ジャッジとしてはかなり困ります。
というのも、次項でも説明するのですが、「結局この反駁は相手の論点のどこをどう返しているの?」という部分が不明瞭なまま試合が進むことで、「ジャッジが斟酌し介入したら評価できるが、そこまで汲み取ってあげる必要があるのか」という葛藤をジャッジに生ませるからです。
試合中に出てきた議論をどこまでジャッジが介入して評価するかは個々のジャッジの匙加減となりますが、大前提として、ジャッジはなるべくならば自身が介入するのではなく、選手の主張を基に判定を決めたいと考えています。それは一つに、「試合中に出てきてなかった話をジャッジが勝手に決めて勝手に投票した!」と思われることが選手にもジャッジにも幸せでない、という点であり、一つに、「一旦その介入をすると決めると、両チームに不利にならないよう、相手の反駁にも同じような介入をする必要があるのでは?」というバランス感覚が働く事で、判定を出す行為をより難しくしてしまう(=だったら変に介入せず、選手の説明不足で切った方が楽じゃん!)点があります。
上記のような事象が起きる背景としてよくあるのが、「とりあえず解決性に打っといて!」と言われ、反駁ブリーフの指定された部分を上から読んだ、というようなケースです。選手の方も、「なんとなく相手と逆のことを言ってる」「他のチームが第一反駁で読んでた」みたいなところを念頭に置いているのだと思いますが、当然試合の議論によって、その反駁が必要なのか、当たっているのか、という部分は変わりますので、しっかり相手の議論の何にどう反論したいのか、この反駁でそれが言えるのか、ということを事前に確認し、適切なサインポスティングをしましょう。

②主張の欠落
ほとんど上で言ってしまいましたが、相手の議論をどう返したいのか、という部分の主張を明示してもらえないと、上記で書いたように反駁を適切にジャッジに評価してもらえない可能性があります。また、別の指摘ポイントとして、②④の部分の主張が③の資料と噛み合ってない、といケースもありますので、資料で立証している内容と、自分たちの主張したい内容との整合性を分析するようにしましょう。

④反駁の結論の欠落
よくある指摘として、反駁が「削る反駁」にとどまっており、切る反駁や返す反駁が少ない、というものがあります。

スライド7

上図の通り、反駁は強さに合わせて大きく3種に分類することができ、当然ながら試合においては「より強い反駁」を打つ方が勝ちやすくなります。ですので、反駁を構成する際には、この反駁が削る反駁なのか切る反駁なのかを区別したうえで、なるべく強い結論となる反駁を優先的に採用できると良いでしょう。

ちなみに、こちらの反駁の結論については、重ねてのご紹介となり恐縮ですが、下記ブログの記事が参考になります。

(良いディベート記事、定期的に存在を布教しないと若い世代に届かないがち。)

否定側第一反駁

オーソドックスな否定側の勝ち方は「1ARを機能不全に追い込み、2NRで相手がドロップした論点を伸ばす」というものになります。従って、1ARに如何に「圧」をかける反駁ができるか、というのがポイントとなります。裏を返せば、「1NRの大量のアタックを返すために、1ARのブロックで大量に時間を使ってしまい、アタックが殆どできなかった」というパターンが肯定側の負け筋となるため、

・1ARが返しづらいアタックを
・質も
・量も

充実させる必要があります。

・1ARが返しづらいアタックを
 …よくあるのが、肯定側立論の元の分析を伸ばしてしまうだけで返ってしまうような反駁です。つまり、当たっていない反駁。前述の通り、サインポストや主張の段階で、相手の議論をどう返しているのかが明示されないと、1ARに10秒ほどで処理されてしまいます。

・質も
 …「これって内因性を削ってるだけで、我々のロジックは否定されていない」の一言で返されると厳しいです。削る反駁より切る反駁やターンを優先しましょう。

・量も
 …反駁量が少ないと、1ARにアタックの余裕を与えてしまいます。そこで、なるべくたくさんの反駁を読む必要があります。
ここで大事なのは、ただ物量が多ければいい、という話ではなく、論点を分散させながら(かつ、上記の質も達成しつつ)反駁を撒く、という点になります。同じ論点に似た趣旨の反駁を重ねると、「まとめて反駁します」と一気に返されてしまうので、内因性、解決性、重要性それぞれに、或いは肯定側のストーリーそれぞれに、反駁を打つように心がけましょう。

1NRは事前のブリーフのクオリティと、当日相手の議論を見ながらのクレームの調整の両方が要求されるポジションです。ただ、圧倒的に事前準備で解決する部分が大きいですので、プレパの際のクレームの作り込みを意識しましょう。

肯定側第一反駁

上記1NRの所で述べた裏返しとして、1ARは

・短く、効果的なブロックと
・一発でヘビー級のアタックを

両立させる必要があります。時間配分等も含め、かなり戦略的に取り組む必要があります。

・短く、効果的なブロックと
 …試合を聞いていると、「これって内因性を削ってるだけで、我々のロジックは否定されていない」くらいで済ませればよい話を延々とブロックしていたりすることがあります。もちろん、丁寧に返すには越したことがないのですが、とにもかくにも1ARは時間がないので、致命的でない反駁は「まぁなんかケチついたけど別にどうにかなるだろ!2R任せた!」くらいの気持ちで軽く触れるに留める方が良い結果を生みます。
 ただ、上記の決断をすることはかなり勇気がいりますので、「本当に捨ててよかったのか?」という部分については、練習試合などで実践を行い、ジャッジからのフィードバックを見ながら自分のスピーチに反映する必要があります。いわゆる「練度」の差がモロに出る場所ですので、意識的に実践の中でスピーチに反映し、フィードバックを貰いに行きましょう。

・一発でヘビー級のアタックを
 …時間がない中でも、論点を絞り、2NRを困らせるような反駁をする必要があります。アタックする場所はどこでもよいのですが、ただ、一般的に発生過程は海外事例等の援用で「なんとなく起こりそう」という形でneg側も残しやすいので、固有性アタックによって「現状も同様の問題は起こるのだから、プラン前後の差分がない」とデメリットを切りに行くことが有用だとされています。強い固有性アタックに、発生過程の事例つぶし、そしてインパクトは肯定側の重要性や観察を援用しながら比較して反駁、というのが、基本的には有用とされる構成ではないかと思います。

1ARについては、試合状況や1NRのクオリティを見ながら、試合中にプレイヤーとしての判断でスピーチ時間や構成等を操縦する必要があるため、かなり実践経験がモノをいうパートになります。しかし、これはただ試合数をこなせばいいという事ではなく、1試合1試合の練習試合のスピーチ構成に根拠を持っているか、そしてその選択にフィードバックを貰いに行っているか、というPDCAサイクルの伴った経験が重要になります。練習試合の機会を確保しつつ、毎回新しいチャレンジを積み重ねていくこと、試合後にフィードバックを貰いに行くことを意識しましょう。


1Rだけで全編と同じ量になってしまいました。
2Rについては、2R概論だけでかなりの文字数がいきそうな予感がしており、4部作~5部作になるかもしれません…

質問や要望などあれば、コチラにお願いします。




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