ディベート甲子園予選振り返り

大会振り返りは都度ツイートでやっていた気がしますが、今回は書く事が多い気がしたのでnoteで。

関東2-3日目は中高どちらも見させていただき、最後は中学3決(渋幕中-創価中)の主審をさせていただきました。特に最後の試合は、試合を聞いていて「この試合と選手なら!」と思い、試合の判定と切り分けて全国への各論点のアドバイスをかなり手厚く喋らせて戴きましたが、選手の皆さんに何か役立てていただける部分が1つでもあれば幸いです。

という訳で、各試合の講評でお伝えした部分を抜粋しつつ、東海予選/全国大会に向けて検討してもらいたいポイントをお伝えできればと思います。

ちなみに今期論題の大会所感は下記各ツイートをタップしてリプライツリーを見て戴ければ。

【関東春】ジャッジではなく引率でしたが。

【関東1日目】

【新人戦】高校論題と同じなのでついでに。

【近畿】

■ 中高共通

・「メモ渡し」文化
中高問わず見られた場面として、スピーチ中にチームメイトがメモを渡すシーンが見られました。別に良いのですが、多くの場合「メモに書ける文字数程度の内容を渡されてもスピーチ担当者はその場で説明できない」し、「必死に喋ってる中で突然メモがくると混乱してペースを乱し、結果無駄になる」事が多いです。自身が見ていてメモが功を奏した様に見えた事例はありませんでした。
全国大会は更に緊張すると思いますし、メモで余計にペースを乱すことがあると思いますので、個人的にはやらない方が良いと思います。準備時間までにちゃんと連携して意思疎通を図り、スピーチが始まったら仲間を信じて黙って見守るようにしましょう。

■ 中学論題

・スパイクプランについて
使いたい気持ちはわかりますが、読まれた所で評価が不能なスパイクプランが散見されます。講評でお伝えした例では「不正投票に対する罰則を厳罰化する」「安全なサーバーにデータを集める」などがありましたが、いずれも気持ちはわかるものの、追加プランのその一言でデメリットを抑止できるとジャッジが取ることはかなり難しいです。「厳罰化すればみんなやらないか~」と取るには、少なくとも罰則の量刑を明確にした上でそれが抑止力たりうる量刑であることを立証して貰わないと評価不能ですし、「安全なサーバー」も何をもってしてどう安全なのか、そのサーバーならなぜDAで出てくるような諸々の被害が起きないのか、具体的に示して貰えないと評価不能です。

追加プランでデメリットを抑止できるスパイクプランは一見魅力的ですが、プランに入れれば何でもOKという訳ではありません。反駁と同じように丁寧な説明をしましょう(そして得てして立証で行き詰まり、スパイクプランを出すことを諦めるようになります…)。

・資料前後のクレームを充実させる
特に中学論題において、サイバー攻撃やセキュリティ関連の証拠資料を前後の説明なく読むチームが散見されます。ブロックチェーン技術や認証システムなどの技術について、専門用語の多い資料を読んだだけではジャッジも内容を理解できない場合があります。また、質疑応答の様子を見ていると、多分選手の方自身も内容分からずに読んでいるな…と感じるシーンもあります。例えば51%攻撃の話をする際は、資料の後に「ブロックチェーン技術では、多数のサーバーで分散して管理しているデータを照合し、多数決で正しいデータを判断しているため、確かに1つのサーバーだけ結果を書き換えても効果はないですが、過半数のサーバーの結果を書き換えしまえばそれが正しい結果だと判断されてしまいます。」などと添える事で(僕は専門家でもないので左記説明の正確さは保証しません)、具体的にどういう形でその事象が発生するかをジャッジにより分かりやすく説明できると思います。資料は読めばOKというものでもないので、プレゼンテーションの仕方にも注意を払いましょう。

・重要性/深刻性比較を絡めたアタックを組み入れる
AD/DAの発生に関する議論は多々出ているものの、重要性や深刻性は放置され、その結果どちらも発生は怪しいが残り、比較基準が皆無のためジャッジに自由に判定させてしまう、というケースが多いです。特に今期論題は発生を完全に切り切る事はできないと思しき論点が両サイドにあり、分かりやすく「AD/DAどちらかの発生が切れたから」と投票する事が難しいパターンが多いため、余計に発生×価値の「価値」の部分に対する言及を欲しています。ジャッジは選手から出された議論で判定を出したい(ジャッジ自身による恣意的な介入でなるべく判定を決めたくない)と考えている事が多いため、選手から良い比較基準が提示されれば投票において採用する可能性は高まります。もしよければ考えてみてください。

■ 高校論題

・特定事例への過度な依存を避ける
特に否定側において顕著ですが、立論の発生過程がイギリスに頼りすぎ→イギリスの事例をちゃんと返される→極めて立証の薄いロジックだけしか残らずDAは評価されない、という展開が多かったかなと感じています。特定事例に依存する議論は当然事例を切られると苦しいため、そもそもロジックを強化したり他国事例も挟み込んだ構成にするとか、そうでなくともせめて相手の事例反駁への再反駁は用意しておくとか、その辺りの準備は丁寧に行うと良いかなと思います。特にシーズンが進めば進むほど、否定側に対する事例アタックがしっかり開拓されていっている気はしており、個人的にはこの辺りが肯定側の勝率変化に影響を与えた一因かなと感じています。

・抽象度の高い語彙の使用に注意を払う
「公平」「平等」な選挙、「長期」視野での政策提案、審議の「停滞」…政治論題は経済論題と比較して効果を定量的に(数字で)見づらいという事もあり、かなり抽象度の高い表現が出てくる傾向にあります。これは仕方がない事ですが、さりとて「プランでどれくらい公平になり、その程度の公平性の改善が重要性で言っている価値観に照らしてどれほど解決すべき課題なのか?」「停滞ってどれくらい遅れると何が問題なんですか?」という疑念は当然ジャッジも抱いており、自身が使う表現に対してもう一歩踏み込んだ検討をしてみて欲しいところです。この辺りは試合における比較やアタックの起点にもなるため、特に応答において適切な返答ができるよう、立論者との認識の擦り合わせが重要になるかと思います。

・プラン後の参議院との関係性を整理して論じる
この論題を検討する上で非常に難しいポイントかと思いますが、プラン後も解散権が及ばない参議院は継続し(一部スパイクプラン下を除く)、かつ参議院選挙も3年おきに発生するため、その状況下での変化を整理して論じる事が大事だと思います。自分たちのサイドの固有性/解決性が参院の存在によってかなり怪しくなり、かつ相手サイドへの反駁では参院の存在を軸とした議論を展開される試合などもあり、両サイドでの主張を整合的に解釈すると全てが消えうる場合もあります。自分たちが出している反駁との整合性を気にしつつ、解散権のみが制約されるプラン後の状況で何が変わるのか、是非検討してみてください。


という訳で!個人的に思うところ/講評でお伝えしたところをまとめてみました。全国大会まであと3週間と少し、皆さんがここから議論をどう伸ばしていくかを楽しみにしています。


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