畑

里山の日常(仮タイトル)二

 すみまんせん。まだ、導入部分なので設定が明確に決まっていません。おそらく、この文章は、その内修正が入ると思います。

若葉なつ20歳 その一

 朝、日の出とともに外に出る。農産物販売を手伝うようになって生活のリズムが変わった。夜は十時に床につく。風呂にはいると昼間の疲れがどっと押し寄せ、まぶたが吸い付くように降りてきて意識がもうろうとしてくる。学生だった頃のように、携帯電話に夢中になることもなくなった。友達には老人くさいと言われるが、夜早く寝て朝早く起きる生活は、日々心地よいリズムを刻んでくれる。
 
 朝、アパートを出て国道と交わる交差点方向へと向かってゆっくりと走り始める。この区域は、認可を受けた以外の車が区域中心部に出入りすることを禁止している。区域内は、徒歩か、リヤカー、もしくは自転車での移動となるが、自転車には専用道路があり、そこのみ通行可能となっている。従って、国道に向かうということは、区域の一番外側に向かって走ることになる。

 なつが勤める農産物販売所は、国道沿いにある道の駅内にある。この道の駅には訪問者が停めることのできる駐車場以外に、区域住民のための駐車場と駐輪場が設置してある。区域の住民は、みな車や自転車をここに保管するルールになっている。区域の外には、田んぼや畑が広がっていて、区域の住民がこれらを管理している。田んぼや畑の一部で自然栽培が行われていて、農薬や肥料を使わない米や野菜が育てられている。もちろん、有機農業を利用するものもいるし、一般的な農法を利用しているものもいる。田んぼや畑をどう管理するかは、それぞれの住民に任されている。
 採れた米や野菜は、区域の住民が農産物販売所に持ち込み、それをなつが販売する。朝一で採れた野菜などは日の出と共に農産物販売所に届くが、区域住民は各自鍵を持っていて自由に野菜などを納めていくので、なつが立ち会う必要はない。米や野菜には、それぞれ管理し育てた住民の名前と地域名が入ったラベルが貼られてある。
 今なつが目指しているのは、道の駅にある農産物販売所ではない。道の駅から区域の外周を回れるジョギングコースを目指している。ジョギングコースは一周約5キロある。なつにとってちょうど良い距離だ。家を出て、道の駅に向かいジョギングコースを一周し帰ってシャワーを浴びる。それがなつの毎朝の日課となっている。
 ジョギングコースに出ると、田んぼでウシガエルがうるさいくらい鳴いている。5月は、ウシガエルたちの恋の季節だ。あのグロテスクな顔を見たいとは思わないし、なく声もお世辞にも気持ちのいいものではない。だが、牛のようなのんびりしているがさわがしい、その鳴き声を春の風物詩と思ってなつは聞き流すことにしている。
 キャベツ畑で早くも収穫を始めている住民がいる。なつは大きな声で「おはようございま~す!」と挨拶をすると住民もこちらに手を振ってくれる。高校を卒業して、販売所に勤めて2年。ほとんどの住民がなつのことを覚えていてくれる。最近、なつはようやっとこの区域の住民になれたと感じている。

つづく

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