体の芯まで温まる

 朝、ジョギングしていても、あまり汗をかかない季節になってきた。夏場だと、どんなに朝早く走っても、着ている服が汗でびしょびしょになる。そして、走る前と走った後で、体重を測ると1kg近く落ちている。体重が落ちたふうに感じるが、実際は水分が抜けただけで、体重が減っているわけではない。

 効率良く脂肪を燃焼させ、痩せるためには、適度な汗をかく必要があるのだろうが、大量に汗をかく必要はないとも思う。

 人は、体温を一定に保とうとする。だから、運動して体温が上がってしまうと、体温を下げようと汗をかくのだ。この発汗作用は、車でいえばラジエターのような役割だと思う。

 そして、大量に汗をかいた状態は、オーバーヒートに近い状態。激しい運動で体温が急激に上昇してしまい、通常の体温コントロールでは、追いつけない。それを一気に下げようとして大量の汗をかくのだ。

 だから、あまり効率がよくないのだ。脂肪を燃焼させるには、走るよりも長い時間歩いた方がよいといわれている。効率良く体を動かして、長い距離を移動し、エネルギーを消費するしかないのだ。

 肌についた汗は、蒸発するときに気化熱が発生し、肌から熱を奪う。さらに体を冷やす効果がある。寒い時期になるとこの効果は逆に風邪の原因になったりする。これは、急激に体温を下げたときの副作用のようなものだと思う。

 お風呂に入ったときなどに、「体の芯まで温まる」という表現が使われることがあるが、実際には体の芯まで温まるといったことは、起きていない。なぜなら先ほど述べたとおり、人は体温を一定に保とうするから。実際は、肌から数センチのところまでが温まるに過ぎない。

 数センチのところまで温まれば血液が温まり、血行が良くなると思うかもしれない。しかし、これも一瞬のことで体全体を温めるほどのエネルギーは血液に伝わっていないと思う。

 おそらく、肌の辺りが温まると脳がポカポカと温まったと感じるのだろう。
「体の芯まで温まる」という表現は、何かの作用で、肌が温まり、精神的にリラックスしたときに脳が感じる感覚の比喩に過ぎないと考えた方が良さそうだ。

 こう言ってしまうと、なんだか味気ない気もするけど。

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