ヒトとは?人間とは?(14)

 約700万年~約300万年前ごろに、われわれヒトの祖先が住んでいた熱帯雨林に変化が起きます。乾燥化が進み、それまで、うっそうと茂っていた樹木が少なくなり、草原のような背の低い植物たちが繁栄していきます。今まで、樹木に昇れば手に入った食料を得るのに、長い距離を移動せざるを得ない環境に追い込まれていきます。

 この頃のヒトは、まだ道具を使えるほどの脳の大きさを持っていませんでした。したがって、ライオンなどの肉食動物が狩った獲物の残り物などを食べてしのいでいたと思われます。

 干ばつなどで食料を採れなかったり、ライオンやヒョウなどの大型肉食動物に襲われるといったことがたびたびおきるようになります。そんな状況のなか、われわれヒトの祖先は、4~5年に一度、子をもうけるという少産多保護の戦略では、生き残れない状況に追いこまれていったと考えられます。そこで、子どもを産む期間を短くし、同時に複数の子どもを育てながら生活するという多産多保護のスタイルに変化していきます。

 養育する子どもの数が増えるのですから、当然、確保しなければならない食糧も増えます。また、移動中は、肉食動物などの敵から複数の子どもを守らなければなりません。そうなると、今までのように、場所を移動しながら食物を得るというやり方では、生活が難しくなってきます。

 われわれヒトの祖先は、川の近くにある比較的隠れやすい森などの場所を選び、そこに半定住して、子どもを隠し、食物を他の場所に採りにゆくといった行動を始めます。

 女性は、子どもに授乳するために、頻繁に子どものところに帰ってこなければなりません。また、女性が食料を採りに行くとき、子どもの面倒を誰かが見ていないといつ敵に襲われるかわかりません。そこで、女性は、男性に子育てを手伝わせることにしたと考えられています。

 それまで、男性は、自分が食べる分しか、食物をとっていませんでしたが、女性と子どものために、食物を男性がとって、定住している場所に持ち帰るようになります。

 食物を持ち帰るためには、両手を使えた方が便利です。そこで、我々ヒトの祖先は、二足歩行を始めます。

 男性が確実に女性や子どものもとに帰ってこさせるためには、その子どもが男性の子どもであることをわからせなければなりません。

 そのため、特定の男性とだけ、性関係をもつ家族というユニットを作って、子どもが男性の子どもであることを認識させたと考えられているのです。

 これは、ヒトの二足歩行の研究社であるオーウェン・ラブジョイ博士の説です。

 アフリカの乾燥化していく大地で、われわれの仲間であるヒトの祖先が、次々と絶滅していく中、集団のなかに家族というユニットをつくって、男女が協力して育児をするようになったものだけが、奇跡的に生き残り、やがてわれわれヒトとなったと考えられているのです。

 さて、チンパンジーやボノボの社会を除くことで、われわれヒトがどのように進化していきたかを見てきました。このあとは、ヒトならではの進化に移っていきたいと思っています。

 そこで、ちょっとお時間を頂いて、資料を整理したいと考えています。申し訳ありませんが、少しお時間を下さい。なるべく早く再開したいと思っています。

 エッセイ集Ⅱ もくじ

 参考文献は、ヒトとは?人間とは?(1)に記載してあります。そちらを参照して下さい。

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