海

光沢とは何を見ているのだろう?(3)

 前回までで、話は終わりましたが、ちょっとおまけを書こうと思います。

 最近の自動車は、かなりカラフルになってきていると思いませんか。メタリックカラー(光沢のある色)がかなり増えているような気がします。そういえば、新型のクラウンが発売されたとき、ショッキングピンクのクラウンにプレミアがついたと聞きました。昔、赤系統それもピンクのような淡い色は耐候性が悪く実用化が難しいといわれていました。

 1980年代頃、車の色と言えば、黒か白、またはシルバーがほとんどで一部赤や黄色、緑といった色もあったのですが、カラフルな色の車は、5年ぐらい乗っていると、ツヤがなくなってしまい、ボンネットや屋根から色が抜けていってしまうことが多々ありました。

 さて、何が変わったのでしょうか?

 去年車を買い換えるとき、ディーラーから「色は何色にしますか?」と聞かれ、塗装の値段が二種類あることに気づきました。何で値段が二種類あるのか聞くと、「塗装1回か2回かの差です」という答えが返ってきました。そして、2回塗装の高い方は全てメタリックカラーでした。そこで、なるほどと思ったのです。

 おそらく、普通のカラー塗装をした上に、耐候性のよい透明なプラスチックにパールを入れたものを塗装しているのだと思います。

 金属以外で光沢を出すにはどうすればいいでしょうか?キラキラ光るものを透明なものに混ぜればいいのです。そして、そのキラキラ光るものがあちこちの方向を向いていれば全体が光って光沢があるように見えます。

 ラメを思い出してみて下さい。小さなそして薄い長方形のラメを使うとキラキラ感がでますよね。あれと同じ原理です。

 ラメは薄いプラスチックのフィルムにアルミなどの金属を蒸着(非常に薄く接着)したものです。プラスチックのフィルムに色をつければカラフルなメタリックカラーになります。

 パールは、ラメと同じように、広い面と薄い厚みを持った切片です。光に対してキラキラと光ります。車のボディーに一度赤や青または黄色などの色の塗装を行います。これは、ラメで説明したプラスチックのフィルムに色をつけるのと同じ作業です。そう、この段階で車のボディは金属がむき出しにはなっていないのです。表面はプラスチックです。そして、その上にパールを入れた透明なプラスチックを塗ります。そうするとボディに光沢がでてメタリックカラーになるのです。

 実は、この方法、車だけじゃあないんです。例えば、スマホのカバーなどでメタリックカラーのものはほとんど同じ方法が使われています。最近では、文房具や家電製品にも応用されいます。光沢感のある炊飯器などを見かけるようになりました。あれも表面はプラスチックで金属ではありません。

 昔、テント生地の設計をおこなっていた頃、あるビール会社の仕事で、ゴールド色のテント生地を要望されたことがありました。今のように二層に分けて作れば問題なかったのですが、コストなどの問題から一層でゴールド色を出そうとして、透明な黄色いフィルムにシルバー粒子(パールと同じ効果がある)をまぜ、試作品を作りました。業者からそれでOKをもらえたので、そのまま製品を作り、納品しました。

 ところが、できあがったテントは光るには光っていたのですが、まさしく仏壇色。にぶーい光沢でこれは、クレームになるのかなあと思っていたのですが、幸いにも業者からクレームが返ってくることはありませんでした。そのテントは、ビアガーデンとしてとある夏の1シーズンだけ東京ドーム脇で営業されていました。おそらくビールの色にも似てたのでしょう。助かりました。

 光沢が足りなかった理由は、コストを考えて二層にしなかったことが原因です。車の塗装のように二層にしておけば、きちんと光沢が出たはずです。きちんと原理に従って、ものをつくるべきだといういい教訓になりました。

前回までの記事

光沢とは何を見ているのだろう?(1)

光沢とは何を見ているのだろう?(2)


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