地球の成り立ち(9)

 前回に引き続き、藤岡換太郎著「海はどうしてできたのか」(ブルーバックス)をもとに、地球の成り立ちについて述べてみたいと思います。

 約7億年前、46億年の歴史の中でも危機的な大事件が地球に起こります。地表のほとんどすべてが氷に覆われてしまう「スノーボールアース」という現象が起きます。

 現在では、このスノーボールアース事件が過去に少なくとも3回あったと考えられているそうです。約22億年前、それから約7億年前、そして6億年前だそうです。

 ただ、最初のスノーボールアースについては、時代が古すぎて、ほとんどのことはわかっていません。それに対して7億年前に起きた2度目のほうは、その後の地球史に与えた影響がある程度わかっています。

 このとき、赤道付近でも気温はマイナス50℃まで下がり、地表のみならず、海も水深1000mまで凍りついた状態が数百万年から数千万年続いたといわれています。当時の地球をもし外から眺めることができれば、まさに雪球のように見えたでしょう。途方もないくらい長い間、地球は真っ白でした。

 その原因はいまだによくわかっていないそうですが、もっとも有力視されているのが、二酸化炭素の減少によって、温室効果が小さくなったという考え方です。たしかにこの時代までの海には大量の炭酸カルシウムが沈殿していることから、多くの二酸化炭素が当時の大気から除去されて海水中に取り込まれていたと考えられいます。

 一方で、超大陸が完全にできあがると超大陸の形成時に活発化していた地下のマントルが不活発になり、火山活動が少なくなって二酸化炭素が減るためという見方もあるそうです。

 大気の二酸化炭素の量が、増加すると地球は温暖化し、減少すると寒冷化します。地球の歴史の中では何度も大気の二酸化炭素量が変わり、温暖化と寒冷化を繰り返してきたようです。そのたびに、海水も、温暖化したときは増加し、寒冷化したときは減少してきました。

 これらの現象は、気温とともに、海岸線の位置が変わるため浅瀬に棲む生物たちに大きな影響を与えてきました。その時代、その時代に生息していた生物が大量絶滅を繰り返してきたのは、この大気中の二酸化炭素の量の変化が一つの原因だったと考えられているみたいです。

 そして、このスノーボールアースは、寒冷化の極端な例の一つだったのでしょう。

 いずれにしても、いったん地球の表面を氷が覆ってしまうと、太陽の光を反射してしまうアルベドという作用が大きくなるために、太陽の熱は地表を暖めることができなくなります。

 スキー場で、良く日焼けするのは、雪が白くので、差し込んできた日ざしをよく反射し、その照り返しに含まれている紫外線を皮膚が浴びるためです。いったん、真っ白な雪や氷で覆い尽くされると地表には太陽の熱がほとんど届きません。

 当時の生物たちにとって、この事件はいうまでもなく大打撃でした。すべての生物が海の中で生息していた当時、海が1000mの深さまで凍りついてしまっては、生息できる場所さえなくなります。

 ところが、この極限状況下でもかろうじて命をつないだ生物はいました。海底にわずかに、液体の水が残っていたからです。水は4℃のときに密度が最大になり、もっとも重くなります。コップの中の氷が浮くのはこのおかげです。液体の水の方が、固体の氷よりも重い。普通は逆ですよね。液体の方が密度が低いため軽く、固体の方が密度が高いので重いはずです。しかし、水は例外なのです。

 また、海水は凍る直前で密度が最大となります。そのため、海水より軽い氷よりも下に、海水が液体の状態で存在します。もし海を満たしていたものが水ではなかったら、地球生物は全滅していた可能性がありました。

 スノーボールアース仮説はまだ提唱されてからまもないため、ほとんどのことがまだはっきりしていないそうです。

 確実なのは、この2度目のスノーボールアース事件の直後に、酸素濃度が急上昇していることです。こんな状況下(真っ白な地球)でも海底の熱水系から供給され続け、生物に消費されずに沈殿していた有機物、とくに生命活動の制御に重要なリンが、地表の解凍とともに海の表層に上昇し、そのためにシアノバクテリアが大繁殖して光合成活動が盛んになったから起きたと考えられています。この影響で、地球に大きな変化が起きます。その話は次回述べたいと思います。

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