地球の成り立ち(4)

 前回に引き続き、藤岡換太郎著「海はどうしてできたのか」(ブルーバックス)をもとに、地球の成り立ちについて述べてみたいと思います。

 生命が誕生したのは、いつ頃だったのでしょうか?それは、およそ38億年前だそうです。この頃の地層で、生物であろうという化石が見つかっています。それは、古細菌の一種だとみられています。

 この頃になると、生命の源である有機物が自然と作られる環境が整ってきます。有機物とは炭素を主体とした化合物で生命に欠かせないものです。

 簡単な有機物が原始大気から合成されることは、ユーレイとミラーの有名な実験によって実証されているそうです。二人は、フラスコの中に水蒸気を満たして循環させ、原始地球の大気の組成に近いメタン、アンモニアなどを入れて放電を繰り返したそうです。その結果、フラスコ内では生命こそできませんでしたが、簡単な有機物(アミノ酸や塩基など生物を構成する要素)が作られました。

 しかし、その先、どうやって生命が誕生したのかについては未だにわかっていません。生命の条件のひとつは、自分自身で「複製」できることなのですが、それを可能にするDNAがどのようにして作られたのかは、いまだにわかっていないのです。

 生物はどこで生まれたのかというと、海底の熱水が噴出するあたりではなかったかと考えています。海底では、硫化物などの火山ガスと同じような成分を吹き出すチムニーといわれる煙突状の排出口が見つかっています。ここは、深海のため、太陽の光は当然入ってきません。

 チムニーの近くには、目も口などをもたないチューブ状の奇妙なチューブワームという生物やイソギンチャクなどがたくさん生息しているのが発見されています。これらの生物が初期の生物というわけではなくて、彼らの身体の中で共生しているバクテリアが、初期の生物だと考えられています。

 共生とは、私たちの体の中で、共存している腸内細菌のように一緒に生命を維持し合っているという意味です。

 このバクテリアは硫黄などを含む硫化物を好んで食べてエネルギーに変換します。そして、チューブワームなどは、硫化物を身体に取り込んで、共生するバクテリアに硫化物をエネルギーに変換してもらって生きています。

 つまり、当初の生物は、太陽の光も酸素も使用せずに、火山ガスの成分である硫化物をエネルギーとして生きていたのです。酸素を必要としない生物のことを嫌気性(けんきせい)生物といいます。誕生したばかりの生物は、嫌気性生物だったのです。嫌気性生物は、海底で発見されたように今でも存在します。

 これに対して、われわれのように、酸素を利用する生物のことを好気性(こうきせい)生物といいます。好気性生物に関しては今後の話の中で登場します。

 そして、地球上に酸素をつくり出す生物がいよいよ現れます。そう、地球上に酸素を作り出したのも、実は生物なのです。およそ27億年前のことです。生命が誕生してから10億年ほど経った時期です。

 当時の生物たちにとって、酸素はエネルギーは大きすぎて、毒だったらしいです。そんな酸素を作り出したのが、シアノバクテリアという顕微鏡でようやく見えるほど青緑色した小さな生物でした。彼らが、27億年前に大繁殖します。

 彼らは、「光合成」という酸素生産システムを持っていました。当時の生物に毒だった酸素をつくることで、ものすごいスピードで繁殖していったのでしょう。彼らの登場で、地球の環境は劇的に変化していきます。

 そう、今でも海や河川に生息して、活躍しているシアノバクテリアは、当時のまわりの生物を駆逐しながら、地球環境を劇的に変えた破壊者であり、また、現在の地球をかたち作った地球史上で最大のスーパースターでもあったのです。いよいよ現在の地球の姿に近づいていきます。
 その話は、また次回にしたいと思います。

 エッセイ集 目次

 地球の成り立ち(1)

 地球の成り立ち(2)

 地球の成り立ち(3)


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