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湘南モノレール

 鎌倉や江ノ島に向かうのに、当初は横須賀線を利用していた。だが、土日だと鎌倉へ向かう観光客で横須賀線はものすごく混んでいる。さらに鎌倉から江ノ島へ向かう湘南電車は、通勤電車並のラッシュでさらに混雑している。そこで、他の方法はないかと考えて、大船から湘南モノレールを使ってみた。

 すると、江ノ島方面に行くモノレールはそれほど混んでいないことがわかった。ただ、この湘南モノレール、電子マネーのスイカが使えない。ちょっと、不便なところがある。

 三上延著「ビブリア古書堂の事件手帖5」に、この湘南モノレールの描写がある。

 ブレーキの異音で店のライトバンは修理中だったので、門野澄夫の実家がある深沢までモノレールで行った。カーブが多いせいか左右によく揺れる。妙にスピードがあることでも有名だ。ただ、高いところを進むので、窓からの景色は悪くない。

 この短い文章で、湘南モノレールの特徴をよく表している。そう、このモノレール、ジェットコースターほどの迫力はないが、けっこう高低差があり、かつ急カーブの連続なのに、かなりのスピードで走っていくのだ。

 羽田空港へ向かう東京モノレールも速いのだが、あちらは、平坦な場所を走っている上に、レールが下側にあるので、それほどスリルを感じることはない。

 しかし、湘南モノレールは、まずレールが上側にあるため、カーブを通るたびに、振り子のように左右に揺れる。そのうえ、地面からかなり高い位置に配置されているため、ビルの四五階の高さで上下動を繰り返してるように感じられる。

 浅草花やしきのジェットコースターの子供版といった雰囲気が味わえる。(花やしきのジェットコースターは、高低差はあまりないが、近隣の建物との隙間を走るため、閉塞感をともなったスリルを感じられる。)

 そして、無人駅があるため、電車の中を車掌さんが動き回る。無人駅で運転手側に出口がある駅では、車掌さんが車内を運転席側に移動してホームに降りる。

 そして、切符を受け取ると、そのままホームを移動し、元いた車掌が乗車する定位置に戻ったりする。運転手に比べ、車掌さんは非常に忙しいのだ。この二人の行動ギャップ差もこのモノレールの楽しみだ。

 狭い路地を走っていく湘南電車も湘南の楽しみのひとつだが、この迫力ある湘南モノレールも湘南の名物のひとつだといっていいと思う。

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