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風の道

 川沿いに住んでいると川が風の通り道であることに改めて気づかされる。

 朝、川縁をジョギングしているとき感じる風は、必ず向かい風か追い風だ。とくに、この時期、風が冷たいため、風を感じやすくなっている。

 地下鉄の出口、ホームから地上までの通路も風の通り道だ。電車がホームに入ってくるときの圧力でトンネル内の空気は外に押し出される。逆に電車がホームから出て行くときには、空気がトンネル内に吸い込まれる。地下鉄の出口では、電車がホームに出入りするたびに風が出入りする。

 寒風吹きさす真冬の時期に、地下鉄出口の階段を地上へと上っていくと、乗ってきた地下鉄がホームから出て行くタイミングで、冷たい北風が、この風の通り道に沿って吹き込んでくる。思わず襟元をたてて立ち止まってしまう。

 車が走る道路も、実は風の道なのだが、なぜかこちらはあまり風の道であることがわからない。川との違いは、下に水があるかないかの違いなのに、どうしてだろう。ところが、道路の両側に高層ビルなどが建ち並んでいると、そこが、風の道であることに気づく。風の道は、ある程度なにかに囲まれている必要があるのかもしれない。

 夏場のヒートアイランド対策として、八重洲から皇居までの都市整備が進んでいる。ビルの合間に風が通るように、風の道をつくる計画だ。夏場は、涼しくなるだろうと思うが、逆に冬場は、冷たい風が吹き抜けることになる。

 寒いのは、厚着すればしのげるが、暑さはそうもいかないということか。しかし、暑さを忘れてしまったこの時期、あまり風の道とはお友達になりたくはないと思うのは僕だけだろうか?

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