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なぜほとんどのものに色がついているのか?(2)

 前回、光(電磁波)はエネルギーであり、波長が短い物ほど、エネルギーが高いことと、電子は、飛び飛びの場所しか入ることができず、かつ入れる数に制限があることを述べました。

 今回は、核心に入っていこうと思います。

 まず、色が着いているものを二つに分けます。目的をもって色をつけたものと結果的に色がついているものに分類します。前者は、人間が意図的に色をつけたものです。例えば、身の回りにある衣服や文具、雑紙や本などは意図的に人間が色をつけたものに分類されます。後者に分類されるのは、植物や人間を含めた動物などの生き物や、地球を形成している土や岩といった無機物がそれに当たります。

 まずは、説明が簡単な意図的に色をつけたものから考えていきたいと思います。

 まず、本や紙を考えましょう。雑紙を含めてこれらのものは文字や絵そして写真などを媒体として情報を伝えることが目的です。そのため、媒体が見やすいように人間が工夫し、色を意図的につけています。もちろん、デザインも考慮されています。

 次に、衣服です。こちらも意匠性やデザインなどで色をつけているものがほとんどです。流行色は、インターカラー(国際流行色委員会)というところが、翌年の流行色を事前に設定し発表しています。各デザイナーは、それらの色を参考に翌年の衣服や商品のデザインを考えて商品化を提案します。こうして、意図的に色が決定してされていきます。

 ただし、衣服の場合、違った観点から色が決められている場合があります。これは、自動車など使用年数が長い製品でも重要視されます。それは、耐久性です。衣服は、屋内だけでなく、当然屋外でも使用されます。そのため、屋外では太陽光にさらされ、さまざまな光(電磁波)にさらされます。

 ここで、問題になるのが紫外線です。紫外線は、光の説明の通り、可視光や赤外線に比べると波長が短いためエネルギーが高く、衣服等にダメージを与える可能性があります。衣服のダメージといえば、色あせや黄ばみですよね。これらダメージをひき起こすのがエネルギーが高い紫外線なのです。

 衣服側にも問題点があります。衣服の場合、ほとんど(雨合羽などをビニール製のものは除く)のものは、染めた糸を織って生地にし、それを縫製して衣服にしています。つまり、衣服を形成している糸に色をつけているのです。そして、糸に色をつけるときに用いるのが染料というもので、糸と化学結合しています。

 この染料は、電子が他の分子とは、ちょっと違った形をとっています。普通は、分子内で一つの原子が数個の電子を引きつけているのですが、染料の場合、特定の原子が5個から6個集まって複数の電子を共有している部分を持っています。この部分は、電子の自由度が金属のように高く、可視光を吸収したり反射したりします。そして、吸収した可視光のエネルギーは熱になって放出されるしくみになっています。

 この可視光を吸収する部分の電子は、それよりもエネルギーが高い紫外線も吸収しやすく、紫外線を吸収することで、分子の一部が壊れ、別に色(最初は黄色くくすみ、徐々に黒くなる)に変わることがあります。これがダメージを生む原因です。

 そのために、紫外線を捕獲して害の無い状態(熱に変えるなど)する薬剤(紫外線吸収剤)を糸に付着させ紫外線対策を施したりします。

 それでも、色落ちが速い色の染料は、あまり使われることはありません。鮮やかな赤とか、オレンジの服が少ないのはそのせいです。

 では、糸や布を染めないで、糸のまま使用したらどうなるでしょう。綿地のカバン(ちょっと茶色がかった白)を見ればそれなりに耐久性はあります。屋外で1年くらいは使用出来ます。しかし、屋外で3年、5年と使用した場合、紫外線の影響を受けて、糸や布自体が劣化していき、ぼろぼろの状態になっていきます。色をつけることでカバンに耐久性が加わり、綿地のカバンを長持ちできるようになります。

 このとき用いられるのは、電子の状態が不安定な染料ではなくて、顔料という同じように色を発色する粉状のものが使われます。染料が小さな分子であるのに対して、顔料は分子がたくさん集まって結晶構造でできた塊です。

 紫外線などの波長よりもかなり大きい塊なので可視光や紫外線によるダメージを受けにくくなります。従って、染料よりも顔料の方が一般的に耐久性が高い発色材料となります。この顔料の多くは、地球上にある鉱物から採取されます。長く使われる自動車の塗料にも、この顔料が使われています。

 このように、人間が意図的に色をつけたものは、意匠性やデザインといった人間の嗜好性と耐久性を与えるために色をつけている場合が多いと思います。
 それでは、もう一つの結果的に色が着いているものは、なぜ色が着いているのでしょうか?それについては次回述べたいと思います。

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