地球の成り立ち(5)

 前回に引き続き、藤岡換太郎著「海はどうしてできたのか」(ブルーバックス)をもとに、地球の成り立ちについて述べてみたいと思います。

 前回、酸素を作り出す「光合成」というシステムをもつシアノバクテリアという生物が登場しました。「光合成」とは、水と二酸化炭素から、太陽の光エネルギーを利用して酸素と有機物をつくり出す反応のことです。シアノバクテリアは、海の水と当時の大気成分だった二酸化炭素から太陽の光を使って酸素を大量に作り出したのです。

 酸素原子(O)は、もともと地球のもととなった隕石の中に存在していました。隕石にくっついていた酸素原子は、隕石が地球内部で熱せられ、マグマになるときに、隕石から飛ぶ出して、自由の身になります。

 しかし、酸素原子は反応性が高いため、すぐ別の物質とくっついてしまいます。鉄が錆びるのは、鉄の表面に空気中の酸素原子がくっつくことで起きます。そのぐらい、酸素原子は、すぐ別のものとくっつこうとします。

 そんな酸素原子が同じ酸素原子と結びついたのが酸素(O2:酸素原子二つからできている)です。気体状の酸素が、地球上に私たちが生活していけるほどたくさんあるのは、他のものとくっつきやすい酸素原子が他のものとつっくいても、酸素として存在し続けられるほど、たくさんの酸素が、地球上でつくられたからです。その立役者がシアノバクテリアでした。

 前回も書いたように、シアノバクテリアの大増殖は、酸素を大量に地球上に供給するのと同時に酸素に弱い他の生物をどんどん駆逐していきます。ところが、そんな中で酸素をエネルギーとして利用できる生物が誕生します。好気性生物です。

 そして、ワームチューブが嫌気性生物と共生していたのと同じようにその好気性生物と共生することで生きていける生物が生まれます。それが、我々人間を含む真核生物です。真核生物とは、細菌類や藍藻類の除いた現在存在する生物のほとんどで、細胞に核膜をもつ生物のことです。

 ミトコンドリアという名前を聞いたことがあるでしょうか?我々を含む真核生物の細胞の中で共生している好気性生物です。

 呼吸によって取り込んだ酸素は、血液などによって運ばれ各細胞に届けられます。酸素を届けられた細胞は、その酸素を細胞内に取り込みます。取り込まれた酸素をミトコンドリアがエネルギーに変換してくれて私たちは体温を維持しているのです。

 ミトコンドリアがもともと他の生物だったことは、どうやってわかるのでしょうか。それは、ミトコンドリア自体が我々のDNAとは別のミトコンドリア自身のDNAを持っているからです。

 このようにして、酸素を利用できる生物が増えていきます。現在では生物といえば、真核生物といっていいほど、その数は増えています。もっとも、細菌類や藍藻類も大きさこそ小さいですが、現在でもたくさん生息しています。

 ちょっと、話がそれてきました。シアノバクテリアによって大量の酸素を供給された地球の環境は劇的に変わっていきます。まず鉄分が多く含まれていた海水が酸素と反応して酸化鉄となって海底へと沈んでいきます。

 そして、シアノバクテリアが光合成のために二酸化炭素を使用するため、大気中の二酸化炭素濃度も減少していき、大気中にも放出された酸素により酸素濃度が上昇していきます。

 この当時、誕生した生物たちのほとんどが、海や川の中で生息していたと考えられています。この頃は、まだ、太陽から届く光の中にある有害な紫外線を反射していくれるオゾン層がなかったため、陸上で生物は、生きられなかったのです。

 次回は、ちょっと、脱線して二酸化炭素の循環について述べたいと思います。そして、陸が形成されていく様子にも少し触れていきます。

 エッセイ集 もくじ

 地球の成り立ち(1)

 地球の成り立ち(2)

 地球の成り立ち(3)

 地球の成り立ち(4)


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