統計検定1級 受験体験記

このnoteでは、2023/11/19(日)に受験した、統計検定1級について、私が実施した勉強法と当日の様子をお話します。統計検定1級を受験予定の方にお読みいただければ嬉しく思います。


1. 私の背景情報

まず、本記事の執筆者の能力について、話させて頂きます。統計検定1級の記事をお読みになっている方々はご存じの通り、統計検定1級の統計数理・応用において、大学初年度程度の微積分・線形代数の知識が必要になります。私自身、理系の大学・大学院を修了していることもあり、初級程度の微積分・線形代数の計算の基礎はあります。ただ、各種の解析手法は知っているものの、自らスクラッチ実装をしたことはなく、各種の統計パッケージ(R,SAS,Python etc )を利用して解析をする統計ユーザーです。受験前に数理統計学の書籍を通読した経験はありません。数理統計においては、統計検定2級+α程度の知識だったと思います。

2. 2023年11月の受験対策

私が本格的に2024年の統計検定1級の受験を考えたのは、2023年3月です。データ分析業務をしていることもあり、生半可な知識ではこの業界で生き残っていくことは厳しいと考え、体系的に数理統計学を勉強したいと思っていました。そのモチベーションとして、統計検定1級の受験を決めました。勉強法を模索している中で、社会人として平日は仕事をしており、効率的に勉強時間を確保したいと思い、”すうがくぶんか”さんの数理統計学の受講を決めました。こちらの講座は、2023年4月~8月の毎週土曜日10時~12時にZoomで開催され、数理統計学の基礎知識を体系的に理解することができました。私自身、数理統計学をきちんと手を動かしながら学んだことはなかったので、受講して良かったと思ってます。受講料は安くはないですが、社会人の方で、勉強時間の確保が難しい方には自己研鑽としてお勧めです。

”すうがくぶんか”さんの講座に加えて、統計検定1級対策に利用させて頂いたのが、大澤先生の数理統計学のゼミです。こちらのゼミは、オンライン上で、久保川先生の「現代数理統計学の基礎」を2章~8章+αを輪読するものでした。大学院生時代に友人と「現代数理統計学の基礎」を輪読しておりましたが、内容も難しく、演習問題もすべては解けなかったので、この機会にゼミに参加しました。

大澤先生の分かりやすい解説もあり、2024年4月~11月の統計検定直前まで現代数理統計学の基礎の本文を理解し、演習問題を解いていました。大澤先生のゼミがなければ、統計検定1級受験のために必要な演習量は確保できなかったと思います。大変感謝しております。これから受験を検討される方は、久保川先生の「現代数理統計学の基礎」のような数理統計学の書籍で演習量を積むことをお勧めします。ただ、社会人の私にとって、大澤先生のゼミの演習問題を全て解く時間を捻出できず、受験日までに現代数理統計学の基礎を5章まで1週解いた程度のレベルで試験会場に向かいました。6章以降の最尤推定量と仮説検定は大学院時代の知識に期待しました。

2023年8月頃から統計数理の対策に加えて、応用の対策方法を考えるようになりました。応用は「医薬生物学」を選択しました。医薬生物学は範囲が広く、統計検定に特化した対策本はないので、様々な本を利用しました。特に役立った(お勧めしたい)と思う書籍は下記2冊です。医薬統計特有のテーマとして、カテゴリカルデータ解析、生存時間解析があると思っていて、この2冊はそれらの式展開が丁寧に書かれています。応用でも式展開を理解する力は必要になりますので、これらの本で筋トレをするのが良いと思います。”医薬データのための統計解析”には、生存時間解析の章もありますので、こちらから読むことをお勧めします。こちらの2冊は分厚く1年間で通読は出来ないので、過去問に出ていた内容を重点的に読むことをお勧めします。私はカテゴリカルデータと生存時間に焦点を絞り、こちらで勉強しました。

ちょうど、応用の対策を始めた頃に”すうがくぶんか”さんで、「統計検定®1級応用(医薬生物学)対策講座」を2023年9月24日~2023年11月12日 10:00-13:00 全8回で開講する旨の案内がありました。数理統計学の講座がとてもよかったので、応用対策として受講しました。


こちらの講座では、過去問に出ていた医薬生物学のテーマを解説してもらいました。知っている内容もありましたが、全てを自分で計算したことはなかったので、非常に勉強になりました。例えば、”Cox回帰を部分尤度で最適化することは知っている方は多いと思いますが、簡単な生存時間データで部分尤度を自ら構成できますか?” こういう細かい点の演習を効率よく積むことができ感謝しています。アーカイブ講座の販売にはなりますが、社会人等で勉強時間を確保できない方にお勧めです。

3. 試験当日

2023年4月から対策を始めて、あっという間に試験当日になりました。会場は、大阪にある某大学です。(大学名を忘れてしまいました。申し訳ございません。)受験会場は、いわゆる理系大学生+理系出身(と思われる)社会人が多く(私もそう思われてた1人ですが)、初めての統計検定1級受験で緊張しました。午前の統計数理は、問1、問2、問3を選択しました。自己採点の結果、4割程度しか解けず、合格は厳しいかなという印象でした。正直、過去問対策も十分にできず、現代数理統計学の基礎を5章までしか読めていなかったので、仕方ないかと思います。来年のリベンジを誓いながら受験してました。午後の応用は、問1、問2、問4を選択しました。自己採点の結果、5割~6割程度でギリギリ合格か不合格か、ボーダーラインという印象でした。

4. 結果

合格発表は、2023/12/18(月)にWebで発表されました。結果は、統計数理は不合格、統計応用(医薬生物学)は合格でした。統計応用だけの合格でしたが、4月からの努力が報われたと思い、嬉しかったです。ただ、個人的に統計検定1級は当日の試験問題と自分の得意分野の相性があると思っていて、統計応用については、まだまだ勉強不足を痛感します。

5. 私が推奨する勉強法(数理)

私のような、社会人の方であれば、"すうがくぶんか"のような有料講座の受講と並行して、数理統計の書籍を1冊を軸に据えて、効率良く勉強されるのが良いと思います。数学力がある or 時間がある方は有料講座は不要かもしれませんが、毎週決まった時間に学習できるメリットがあるので、私個人としてはお勧めです。数理統計の書籍について、私は「現代数理統計学の基礎」を軸において勉強しましたが、他の本でもよいと思ってます。これらの本を利用して、十分な演習量を積む必要があると思います。私は、この演習量が不足しており、不合格になったと思います。反省です。

学生の方であれば、有料講座を受講する金銭的余裕はないと思うので、同じ志を持つ友人をリアル or Web上で見つけて、一緒に数理統計学の書籍を勉強することに尽きると思います。その際に、自分より数学力が高い人と勉強することが良いと思ってます。数理統計学の書籍は(私にとっては)非常に難しく、自分一人で読むと「???」とチンプンカンプンになりかねません。私の場合は職場・友人で、統計検定1級を受験する仲間を見つけられず、大澤先生のゼミに頼りながら勉強していました。

6. 私が推奨する勉強法(応用:医薬生物学)

応用の勉強について、まずは統計数理の基礎固めが大事だと思います。応用とは言いながら、最尤推定量やフィッシャー情報量の導出、デルタ法の適用、サンプルサイズ設計、AIC等の知識が必要になります。応用対策のための書籍から始めるのでは、これらの分野の理解が定着しないと思っており、まずは数理統計学の書籍で、各種の分布とその性質、推定論、仮説検定をきっちり理解するべきと思います。そのため、統計数理と応用を同時に受験される場合は、まずは統計数理の対策をきちんとした後に、上で紹介した2冊+αや医療統計の講座・セミナーの受講を検討してみるとよいと思います。

7. 最後に

2024/11の試験で統計数理をリベンジします。受験される方は一緒に頑張りましょう!