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現代NFLチームの作り方(ランスを信じろ)

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ランスの指名から早一年、ランス指名の背景と今後の期待をまとめておくために、そもそもの昨今のリーグの状況をまとめておきます。「こんなん知っとるわ」という部分は小見出しだけ読んでもらうのが良いかと思います。


そもそもなぜ、SFが2019年にSB進出に導いたQBであるガロポロさんと袂を分かつのか、そこを焦点にして昨今のリーグの状況踏まえ書いておきます。

リーグにとってもチームにとっても結局QBが一番大事

まず大前提としてリーグの大命題は一般企業と同じく「社会的役割を果たし永続的な発展を遂げること」であり、そのためにも「ファンを満足させ、その上でリーグ拡大を目指したい」わけです。その結果として、様々な取組(ヨーロッパや中国でのレギュラーシーズンゲーム開催とか)を行っていますが、肝心のゲームについても同様にテコ入れをしています。新たなファンも飽きさせずに試合を"面白く"するためにどうすればいいか、そのための一つとしてリーグが選んだのは、点が入らない塩試合玄人好みの渋い試合よりも点がたくさん入ってわかりやすく楽しめる試合を増やすことでした。そのためにリーグはルール調整を行ってきました
例えば
・ディフェンスのPIの基準を厳しくしてオフェンスが進みやすくする
・ラフィングザパサーの基準を厳しくし大事な大事なQBを守る
などがそうですね。正直良いQBがいなきゃ始まらない欠陥スポーツと化しているNFLでは当然の措置とも言えます。

加えて試合への影響力の非常に大きい"Dual Threat QB"が増えてきました。
従来QBは「パスを通し試合をつくる役割」がほとんどでしたがたまに「QBなのにめちゃくちゃ走れるアスリート」というのもいました。Michael VickやColin Kaepernickなどがその例ですね。モバイルQBなどと持て囃された彼らですが大抵パスがそこまで上手くなく、対策が進んだり衰えが見えるとそのまま姿を消していきました。ある程度成功したのはDonovan McNabbや(プレーは知りませんが)Warren Moon、Steve McNairなどでしょうか、彼らはそもそもちゃんとパサーとしての能力もあったからちゃんと活躍できたということかと思います。
ところが2010年代、2012年の憎きRussel Wilsonに始まり「自分の脚も使えるけどパスも上手い」QBが多数現れ状況が一変します。その典型が誰もが知っている2017年の憎きPatrick Mahomesでしょうか。彼らは多少パスラッシュがかかっても自分の脚で時間を稼ぎプレーが崩れたところでロングパスを決める能力を持っています。彼を筆頭にJosh Allen, Justin Herbertなどパスもランも両方できるQBがリーグを席巻しているのがここ数年、その結果、短時間で大量得点出来るオフェンスがPOで勝ち進む条件となってきているのが実情です。昨年POのBUF@KCはその典型でしたね。
Twitterでお馴染み、K猫さんがよく言う「今のAFCは打倒KC/Mahomesでチーム作りが行われてる」というのは具体的にはこの辺の話かと。

オフェンス優勢の時代のチーム作り+SFの体制

という状況において、各球団が目指すチームの作り方は大きく二つ、
・多少点を取られてもそれ以上に点を取れるチーム
もしくは
・相手の点をある程度に抑え、時間やボールをコントロールできるチーム

になります。
当然チームの経営陣やHCの思想にも左右されますが、前者を作るにはそれができる先述の"Dual Threat QB"がいないと話が始まりません。(出来てブレイディ、ロジャースクラスか。)また、後者の場合強固なディフェンス、ボールコントロールするためのランゲームなどチーム全体で必要なピースが多く一朝一夕にいきません。
例えばBALは恐らく後者で、ラマーの出来る役割「困ったら走る、困らなくても走る、たまに投げる」を最大限生かしつつランゲームとディフェンスで試合をコントロールし接戦に持ち込み最後はタッカーによるFGで締める、という作り方をしています。だからこそドラフトではディフェンス中心の指名が未だに目立つのではないかと思います。この辺は某奴隷の人が確かまとめられてた気がしますので割愛。

では、これまでのSFはどうだったか?
天才シャナハンの多彩なランプレー+強固なディフェンスでボールをコントロールし要所でガロポロさんがパスを決める、そんなチームだったのではないでしょうか。その結果しっかり勝ち進み2019年SBまで進みましたが最後の最後はMahomesの個人技にやられました。
(ランス指名後の2021年はNFC CCまで勝ち進み、接戦に持ち込んだもののAaron Donald+Von Millerに文字通りプレーを壊され敗れました)

ランスにかける期待

そこで2020年、SFは大きく賭けに出ます。1巡3年分をMIAに売り渡し「試合経験が非常に少なく時間はかかるものの、走力、肩の強さなど身体能力はピカイチ、加えてプロスタイルの適正もある」という評価のTrey Lanceを指名しました。これによりこれまでのシャナハンオフェンスに加え、脚を使ったプレーや肩の強さを活かしフィールドを縦に使ったパスの組み立てなど、これまでガロポロさんでは出来なかったことも出来るようになります。さらに土壇場でプレーが崩れたときに"なんとかできる"能力も持っているはずだ、そんな理由から指名したのだとファンの中では期待されているわけです。
イコールでこれがMac Jonesを指名しなかった理由にもなります。Mac Jonesではガロポロさんと出来ることは大きく変わらないので。
(今年NEはRBを増やしているのでランプレーが増えるのではという話を聞きましたが、それもやはりJonesで無理に殴り合いをするのではなく、トータルで試合をコントロールする(しないといけない)意図があるのでしょう。)

下の動画2つなどが分かりやすい例です。
一つ目はディフェンダーをかわしつつ後ろ重心のままミドルパスを決めたプレー、ガロポロさんだと恐らく手前のWRに投げるのが肩の強さ的に限界に思えますがランスは奥、1stダウンの狙えるほうに投げました。
二つ目はライナーで40ヤードのパスを決めたプレー、これもガロポロさんでは投げられない軌道のパス、シンプルに球速があるのでディフェンダーもボールに寄ることは難しいらしい。


ということで、ランス指名は不可解なギャンブル+ガロポロがいるのに非情に思われたかもしれませんが、ファンとしてはまあ納得な選択だったかと。(SBに勝ちさえすれば「ガロポロの控えを一年経験したからこその成長だった」とか美談にできるので!)
ちなみに、ちょうど今日の試合でTENの3巡ルーキーのMalik Willisがでてましたが、彼の成長次第でTENも同様の改革を期待しているのかもしれません。彼もまだまだ未完成のようなので来年以降タネヒルがいなくなったとしても楽しみですね。

ということで今年からのランスの飛躍を楽しみに、まずは明日のプレシーズンを待ちたいと思います。
(どのくらい見せるかはわからないですが、オプションなど今年使っていくのであればW3には多少見せてくれるのではないかと思います。この辺はシーズン開幕前にまとめようかと。)

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