『Life is Strange 2』感想

コロナ禍の最中、発売とほぼ同時にDL版をプレイして遊んでいましたが、なかなか感想がまとめられずにいました。
今作でメインに据えられているアメリカの抱える問題が現実のアメリカの出来事と被るのを見て遅ればせながら感想をまとめる事にしました。

※ネタバレ全開なので未プレイ方はこの先読み進めない事をおすすめします。


〇全般的な感想
高評価を得ていた続編としては、非常にうまく仕上げられたものかと思います。
基本的に丁寧なつくりは踏襲しつつ、テーマを大きく変える事によって、前作とは趣が異なったものとなっているけれど、匹敵するくらいに良いものになっていると感じました。


〇前作との大きな違い
すぐ目につく・気付く違いは、主人公が白人ではない事と、それに関係したヘイトを受ける存在であるという点です。
またヘイトについては現実に即した内容を事細かに再現したものとなっているのもあって、前作のように「基本善人しか登場しない世界」ではなくなっているのも実感されるところでした、

またキャッチコピーも大きく変わっており、実際にゲーム中でも前作が「一つの選択肢で大きくその後が変わる」だけではなく「小さな選択肢の積み重ねが後々に影響する」ものとなっています。


〇ゲームという貴重な疑似体験
ゲームの面白さの一つに「現実には体験が難しい事を疑似体験できる」点があるかと思いますが、本作でもそれは実現されており、かつ自分が今まで遊んだゲームのそれとは全く違う体験ができました。
それは「ヘイトを集める存在に自分がなる」という事です。

主人公は前作と違い、白人ではなくメキシコ系移民の父と白人のアメリカ人の間に生まれた男の子です。
母親は彼の弟を生んで間もなく蒸発、結果父親に男手ひとつで育てられました。

開始早々自宅の隣に住む白人の同級生からヘイトスピーチを投げかけられるところからゲームは始まります。主人公と親しい女友達もアジア系の移民のようです。
その後自宅にて、父親が非常に良い人間かつ父親である事が分かる展開があります。しかしその父親は、特段悪い事をしたわけでもないのに早々に白人警官に撃たれ、兄弟の眼の前で命を落とします。

眼前で繰り広げられた衝撃的な光景がトリガーとなって、主人公の弟が能力(サイコキネシス?)を発動。その場にいた警官は死亡し、兄弟の逃避行が始まります。

その後道中で兄弟は移民というだけで買った商品を盗んだものと決め付けられ監禁されたりといった酷い目に遭い続けます。
血のつながった親族や兄弟同様に立場の弱い人間以外では、少々特殊な過去をもち、マイノリティについての記事を執筆している白人ジャーナリストの男性一人しか「親切な大人」は登場しません。

そういったヘイトもさる事ながら、自分が最初に大きな衝撃を受けたのは、兄弟、というより兄弟と同じような境遇にある人達が基本として貧しく過酷な状況に置かれている事を示唆する「選択肢」の存在でした。

逃避行を開始して間もなく、シーズンオフのキャンプ場で弟と一晩過ごした主人公は、ガソリンスタンドと小さな店舗がくっついたような(アメリカのドラマによく出てきそうな)場所に辿り着きます。
実家を離れる際に持ち出した食料(お菓子)は既になく、空腹なので「嗚呼あそこで食べ物を買おう」と呟く主人公。建物に近づいてくと、建物外に置かれたテーブルで食事をしている白人の家族連れが目につきました。
「腹減ったなあ」と呟く主人公。そこまでは理解できましたが、続けて呟いた内容が「メシ、余ってないかなあ」というもので自分は「え?」となりました。
主人公が白人一家に近づくと表示された選択肢にさらに自分は驚きました選択肢の中に「物乞いをする」「弟に物乞いを挿せる」といったものがあったからです。

「そんな事するわけにいかんだろ」と思いましたが、そこはゲームですので試しに「物乞いをする」という選択肢を選んでみました。
当たり障りのないあいさつと会話を進める主人公。主人公が「本題」に入り食べ物を分けて欲しいと切り出した途端……白人一家の父親が「チッ、またかよ」といった台詞を吐きます。
「あ、物乞いを何度もされてるんだ」とここで自分は気付きました。恐らく主人公同様の貧しい立場の人達にこの白人一家は何度も物乞いされた経験がある、というわけで、それもまた衝撃でした。

「仮に試しで」選んだ選択肢を無効にするためデータをロードして家族は素通り。店舗内に入り、食料を買い込む事にしましたが、ここでまた「選択肢」に衝撃を受ける事になりました。
店舗内で棚に並べれた商品に近付くと選択肢が表示されるのですが「見る」「買い物かごにいれる(X$)」という選択肢の後に、当たり前のように「万引きする」という選択肢が……ここにきて「嗚呼、自分は(=主人公たちは)貧しくて弱い立場の人間だから、当たり前のようにこんな選択がでてくるんだ」と気付きます。

「弟いるのにそんな事できるわけないだろ。だいたいお金は減ってるけどもまだ食べ物買えるくらいは残ってる」という事でまっとうに買い物を済ませ建物の外へ。先ほど白人一家が使っていたテーブルや椅子は一家が去ってあいていたので、そこで弟と食事をしつつ地図を広げて次の目的地の算段を……していると車が敷地内に入ってきました。車から白人男性が降り、こちらに近付いてきました「お前ら何やってんだ?」と。
主人公は「弟と旅行をしている」「食事をしながら次の行き先を離していたところです」といった普通の受け答えをするのですが、それに対し白人男性が返してきた言葉が「そうか。で、お前らそれちゃんと金出して買ったのか?」というもので「は?」となりました。

件の白人男性は、主人公たちが移民(=非白人)の子供というだけで「まともに買うわけがない。万引きだろう」と決め付けてきたわけです……

とかなり長くなりましたが、全編を通じてこんな具合でプレイヤーはヘイトを受け続ける事となります。
所詮疑似体験だろ?と言われるかもしれませんが「移民は貧しく大変」という話を単に見聞きするのとは違う次元の「実感を伴った(ように感じられる)体験」ができるのは間違いありません。
こんなゲームは他に見た事がありませんでしたので非常に驚きましたし「これは凄い」とも思いました。


〇疲労度の高いゲーム内容
そういった具合で非常にリアルな「ヘイト体験」ができるものであり、エンディングの辛さも含めアメリカの抱える問題を丁寧に描いた凄い作品だと思うのですが、反面プレイするのは非常に疲れます。
まずは前述したような「ヘイト」を自分が受け続ける事になるのが原因ですが、実はそれ以外にも疲れる要因があって「子供の言動をリアルに描いているから」というのがそれです。

具体的には「弟が我儘でコントロールできない(コントロールするのが難しい)」という部分になります。
設定上弟は9歳の子供なので当然仕方ないのですが、子供特有の我儘さや、約束した事を(忘れてしまうのか)簡単に反古にする等、妙にリアルに再現されている為、逃避行の道中にプレイヤーはずっと弟に振り回される事になります。それが非常に自分にはきつかったです。

前作と違い、実は途中で何度かゲームを投げ出しそうになりました。それはヘイトがキツイのに加えて弟があまりにヘタを打つので「また面倒事起こして!」「ああもういい!」などとなったからです。
実際にはなんとか持ちこたえてクリアしましたが……


〇まとめ
詳しく触れませんでしたが、前作と世界を共有した作品なので前作の登場人物が出てきたりといった前作プレイヤーに配慮したところなどもありますし、何よりヘイトを受ける疑似体験ができ、現実のアメリカが抱える問題を架空の世界で体感できる稀有なゲームで凄いと思いました。
ですので人におすすめできる作品だとは思うのですが、とにかく(精神的に)疲れる内容ですので、プレイするにあたって相応のタフさは必要になるかもしれません。

自分の中では高評価の一作目に負けない良くできた二作目、という事で評価は高いのですが、当然そうは捉えていない方々もおられるようです。「こんな見方をしている人もいるのか」程度に感じていただければ幸いです。

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