『天気の子』感想

前作「君の名は。」は個人的に合わなかったのですが、twitterのTLを見ていると「00年代のPCゲーム」「PSのやるドラ」「イース2」といった「何それ?」というような評価が流れていて気になったので、映画館へ見に行く事にしました。【ネタバレを含みますので未見の方はご注意ください】

○前作やそれ以前の作品への個人的感想
同じ監督さんの作品について、自分は前作「君の名は。」を動画配信サービスにて有料で、それ以前の作品は偶々テレビで「秒速5センチメートル」を途中から(!)見たくらいでした。
それぞれの個人的な印象は

秒速5センチメートル:山崎まさよしの曲の力借り過ぎ
君の名は。:前半はいいけど後半はSF設定がガバガバ過ぎて辛い

といった感じで、評価として妥当かどうかはさておき自分にとってはあまり芳しいものではありませんでした。

そういった具合でしたので冒頭でも書いたように今作は全く期待を持たず、twitter上の変わった評価を見て気になったから見ようと思ったものでした。
また配信動画で見た「君の名は。」と違い事前に情報を全くいれずに見に行く事となりました。


○驚きと理解
前作のファンというわけでも何でもなかったのですが、どうやら自分は無意識のうちに「前作のようなもの」を想定してしまっていたようで、スタート直後は「何じゃこら」とポカーンとなる事になりました。ただ、そこは無駄に年をとってそれなりにあれこれ見てきている身ですので「嗚呼そうか」とすぐにすんなり見られる状態になりました。

前作は(緩すぎる部分はあったとはいえ)SF作品でした。現実には起きないような事であっても、それらに対して「一応きっちり説明をつけよう」とするもので、結果多くの人が見られる作品になっていたように思います。
加えて中高生をターゲットにしてあれこれ盛り込んだのも成功し、とんでもない大ヒット作品(日本で公開された映画で歴代4位の興行成績!)となりました。

キャラクターデザインや劇中で流れる音楽を担当されている方が前作と同じなので、一見すると(特に映画館で見た後に確認した宣伝映像などを見ると)前作と同じように見えますが、今作は表現方法としては全くの別物かと思います。前作のSFに対し、今作は「ファンタジー」とでもいえばよいのでしょうか。「作り手の考える本分以外はそこまで細かく描かないがそれで問題ない」とする作品だと思いました。

そういったノリで作られたものだと理解すれば、(好みの問題は別として)何の支障もなく見る事ができますし、自分としては前作よりもすんなりと最後まで楽しむ事ができました。


○監督に対する印象の変化
自分が「ちゃんと過去の作品を見て発言もしっかり拾ってなかった為の思い込み」の部分が大きいのですが、作品自体の評価よりも自分にとって大きかったのは監督に対する印象が大きく変わったところです。

現在のようなレベルでの「メジャー」になる前の過去数作品のざっくりとした印象が「マニアック」だったのに対し、前作は「売れる為にそれらの大半をやめた」ような印象を受けた為、監督への印象もあまり良くなかったのです。
ところが今回、冒頭から「何じゃこら」というかたちのものを持ってこられたので「嗚呼、好きにやる事にしたんだな」と感じ、結果自分の中での印象は良くなりました。


○小説版まで買って読む
Webの商業記事で小説版の後書きを抜粋したものが取り上げられており、それを読んで「やっぱり好きにやる事にしたのか」と確認できましたが「後書きにはもっと色々書かれているのじゃないか」と思い、折角だから小説版とやらもちゃんと読んでから後書きを読もう、という事になりました。

小説版自体は(監督は後書きでは「映像をそのまま文字にしたものは小説ではなく脚本だ」といった事を言われていますが)自分には「脚本っぽい」というように感じられました。
多くの小説だと比喩表現等で上手く処理する部分が割と事細かに描写されるようなかたちだったのでそう感じ、個人的にはちょっと読みづらい感じもしました。ただそういった描写を事細かにしてくれているだけに、映画では描かれない登場人物の考えなんかも事細かに書かれているので、映画の補完に良さそうとも感じました。

で小説版をきっちり読んだ後に一番の目的だった「後書き」を読んだわけですが……ここでまた監督の印象が良くなりました。「嗚呼、結構普通の方なんだなあ」と。
映像面含めこういった作品を作ってしまう点では「普通じゃない」のですが、そこで吐露されていた内容は、とんでもないヒットとなった前作によってあれこれストレスを受けていた「普通の人」の言葉だったからです。


○まとめと次作への期待
ネタバレと書いた割には内容には触れていませんが、ファンタジーと書いただけでも十分ネタバレかと思うのでそのように冒頭に書きました。
「SFじゃなくファンタジー」という大きな違いは勿論の事、東京(ほぼ23区内)の描写は多量に引き込んだスポンサー含め前作以上にリアルになっているものの、描いているものが前作が「陽」一辺倒だったのに対し「陰」を描いているとか、前作とかなりノリが違う部分がたくさんあります。

ですので前作大好きだった方が見ると「エー(前の方がいいー)」となってしまう可能性は十分にありますが、見る価値はあると思います。
特に若い方にとってはこれから先色々な創作物を見るに際し「違う見方」をする勉強になりますし、何より前作と較べる事によってこんなにも分かりやすく監督の意思を(しかもこんな大々的に宣伝されている映画を映画館で見て!)感じられるというのは面白いし貴重だと思うからです。


映画を良く見る上司と話した際に「次の三作目が正念場じゃないの」といった話がでました。映像と音楽を効果的に絡めるというやり方が普通の人に驚かれたってのも大きかったのでは、という事を言われていたのですが、確かにその点からすると今作は「アレ?(前作ほど音楽と映像のシンクロがガッツリこない?)」という印象は自分も受けました。
そんなわけで、次作にどんなものをもってこられるかが今から楽しみです。

あと「何度も映画館へ足を運ぶ」は財政的に厳しいのでやりませんが、Blu-rayは買うつもりです。

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