大楽前のオタク雑感


7月9日(日)16:30公演。
グランドフィナーレへのカウントダウンとともに始まったキャスト1人1人によるご挨拶。
この日恭廉くんは「BEYONDではじめて表現する幸せを感じることができた」と言った(らしい)。

(らしい)としたのは、私はその現場にいたにも関わらず結局ほとんど何も覚えていないという異常な事態に陥ったのだが、別々に入っていた友人がメモを取ってくれていたためそれを頼りに手繰り寄せた記憶だからだ。言われてみれば確かに言ってたわ、という感じだ。

公演の前にこの友人に「次のキャスト挨拶は十中八九恭廉くんだから、何とかしてコメントを忠実に記憶したい」と相談し、「そのためにはメモを取るしかない」という結論に至った。
紙とペンを持っているか?と2人で確認し、鞄を漁りながら「紙はある」と顔を上げた二人が手に持っていたのはセブンイレブンのチケット用封筒だった。オタクすぎる。
私はこの時ペンを2本持っていた友人に1本借りてインクが出るか確認までしていた。かかって来いよ……と待っていたのにいざ真央さんが恭廉くんに話を振るとびっくりしてパイプ椅子ごと後ろにひっくり返りそうになった。体勢を持ち直したあとはご一緒したフォロワーさんと肩を寄せ合ってじっと見つめていた。おい、セブンの封筒とペンを出せ、今だよ今。

一方その頃、友人はまじでメモを取ってくれていた。

参照記事


厚い友情が過ぎるだろ。
しかも友人のメモ、かなりニュアンスまで捉えており「オタク」だった。オタクにとって推しのニュアンスはかなり重要だ。ありがとう友人。
友人はメモを取りながらお隣の方の「異常者を見る視線」を感じ取っていたらしい。わかる。視線というのはかなり"感じる"もので、ショッピングモールでのアイドルのフリーイベントに参加した時などは一般人の視線がかなり刺さってくる。アイドルが歌唱してる時などはまだ良いのだが、特典会は最悪だ。並んでいる時も順番が回ってきてステージに上げられる時も、至近距離で一般人の「異常者を見る視線」がぶっ刺さる。はじめは「見ないで下さい……」と冷や汗をかいていたが、やがて気にならなくなり「オタク見る暇あったらうちの推しを見ていきませんか?」となる。私は何の話をしていますか?

さて、冒頭の「BEYONDではじめて表現する幸せを感じることができた」という言葉。
好きなスケーターの口からこの言葉を聞くことができて嬉しくない人間はいないだろう。しかしこの言葉には前段がある。「現役の頃は試合でジャンプを失敗してしまったり、納得のいく演技ができなかった」というくだり。私はここで脳が激しく揺れ、最終的にこの言葉だけが記憶に残った。

めちゃくちゃ切ないのだ。ご本人はどう思っているか分からないが、ファンには切なく苦く、思わずぎゅっと目を瞑ってしまうような、そんな言葉だった。

今も忘れられないことがある。
17年の中部ブロックだった。恭廉くんの演技終了後、近くにいたスケート関係者が「ジャンプが跳べたらね~」と言っている姿を目にした。その顔も声色も発言の内容も全て腹立たしくて泣きそうになったし、この人は一般の観客がいる客席で何を言っているんだとその神経を疑った。

過剰反応かもしれない。裏を返せば「ジャンプ以外は素敵だったね」ということを言いたかったのかもしれない。でも、演技を終えたばかりの選手に対してあまりにもリスペクトが足りないのではないか。ましてやスケート関係者だ。競技はそんなに甘くないと言われるかもしれない、盲目的なファンだと言われたらそれまでだ。反論するつもりもない。でも、自分でもびっくりするくらい悔しくて悲しかった。

こんなに素敵な演技をするのだ。私にとってそれに勝るものはなく、こんなに惹かれた選手は後にも先にもいない。でも、この言葉は鉛のように胸の奥底に沈み、以降恭廉くんがジャンプの軌道に入ると祈るように拳を握りしめ、転倒するとグサグサと胸が痛む呪いの言葉になった。

ジャンプなんていいじゃない、あなたのスケートは素敵だよ。そんな半ば祈るような気持ちで見ていたら、全日本出場を目指して現役を続行するということで真の無礼者は私となり一回心が死んだ。しかも本当に全日本出場を決めたし。想像の500倍アスリートなんですけど。どうもすみませんでした。

そしてもう一つ忘れられない言葉があって、それは恭廉くんが引退の時にTwitterに綴った「スケートへの愛」という言葉。

あーーーーー恭廉くんスケートが好きだったんだ。そうなんだ。…そうだよね。

きっとまたこの人のスケートが見られる、そう思えてすごく嬉しかった。

そして今、BEYONDのキャストとして活躍する姿が目の前にある。

私はもうジャンプの前に拳を握りしめることはない。正確に言えば、ツアーの序盤は握りしめてたような気がしないでもない。でも演技の中でジャンプを跳んでいる、と感じる場面があって、その時に「この人は本物のショースケーターだ」と確信した。

もう何も怖くないし、恭廉くんのスケートへの愛を信じることができる。全身で放つ「表現する幸せ」を客席で受け取ることができる。

BEYONDは私にとって人生のボーナスタイムだ。まさかこんな恭廉くんを見られるなんて思ってもいなかった。予期せぬボーナスタイムに突入した私は無敵マリオさながら夢中でひた走ってきた。出演が発表された日から毎日がマンマミーア!という感じだ。

大楽を見届けた時に自分が一体どんな感慨になるのか想像がつかない。
「恭廉くんのご挨拶なんて聞いたら泣いちゃう……」と思っていたのに、結果的にはバキバキの目で「すみません、ジャンプのくだりしか覚えてないッス」になったし、ご挨拶後の周回では恭廉くんが緊張から解放されてニコニコしていたのでメロメロメロメロのオタクスマイルを咲かせてしまった。自分が一番自分のことをわかっていないなと思う。

あまりにも楽しくて幸せで、大楽を迎える前に今のこの気持ちを吐露したくなってしまった。

素敵なショースケーターになってくれてありがとう。あと少し。どうか全員揃って笑顔で終わりを迎えられますように。

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