東女美女烈伝.4 渡辺未詩

道場論

渡辺未詩は美しいんだ。

ビル・ロビンソンばりのワンハンドバックブリーカーにビル・ワットばりのオクラホマ・スタンピード。果てはブルーザー・ブロディ以来のゴリラスラム(ワンハンドボディスラム)。
字面だけ見たらかつて全米マーケットを席巻していた頃のNWAレスラーかと思ってしまう。
彼女のレスリングはとても丁寧でクラシカル。
ショルダータックルの後に決める渡世人のような残像。一片の曇りなき説得力。
武藤敬司引退興行で会場をまず沸かせたのは、武藤が所属するノアではなく東京女子プロレス、渡辺未詩だった。
もはや古の秘技となったジャイアントスイングを見れば子供でも分かる。

「ああ、一生懸命鍛えているんだな。」

東京女子で道場論を感じる数少ない選手。
東京プリンセスカップにおける上福ゆきとのイデオロギーの応酬は見ものだった。
一方で歌のコーナーでは誰もが目を奪われていく完璧で究極のアイドル。
レスラーとしてもアイドルとしてもトータルパッケージ。
彼女は幼少の頃からの夢であるアイドルになりたくて東女の門を叩いた。今のように団体きってのパワーファイターが嘘のように、自分の身体がムキムキになっていくのが当初はとても嫌だったという。プロレスラーとしてはこの上なく素晴らしい才能なのだが。
しかし彼女の何事も真摯に取り組みたいという真面目な姿勢はそれを許さなかった。
完璧で究極のプアイドルとプロレスラーの作り方は一緒なのかもしれない。

努力。いつの世も正義の言葉である。

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