東女美女烈伝.12 愛野ユキ
情熱の焔(ほむら)を胸に秘めて
愛野ユキは美しいんだ。
魂が震えた。
初めて行ったKFCホール。メインイベント。
プロレスファンになって眼にする2度目のフルタイムドロー。G1クライマックス2018の棚橋弘至vsオカダ・カズチカ以来。
東女でこんな試合が観れると思っていなかった。
「団体自体そうだけど彼女は特にそう。あれだけシンプルな技だけでよく試合を組み立てるなって。今時サイドスープレックスで沸く試合なんてないでしょ。道場で相当練習してるはず。」
初めて東女を観戦した古参ファンを唸らせたのはしっかりとした猪首とどっしりとした下半身からくる軸がブレない肉体あってこそ。日頃から厳しい鍛錬を積んでいる証。
試合後のリング上で彼女は当時のインターナショナルプリンセスチャンピオン辰巳リカに挑戦表明。
同じく挑戦表明をした遠藤有栖との挑戦者決定戦を制してタイトルマッチに挑むもホワイトドラゴンの壁は厚く壮絶に散った。
それでも我が魂は震えた。
いてもたってもいられず特典会へ。
試合終了からかなりの時間が経っていた。
それだけ彼女の戴冠を信じていた人が多かったということ。
実際の彼女を目の前にして驚いた。
なんとも小柄なのだ。
リング上で大きく見えるのはなぜか。
情熱の焔という戦いに対するバーニングスピリッツがそうさせているのだと思う。
バーニングヴィーナス。私は東京女子イチの二つ名だと思うが、私には東女の戦神。まさにパラス・アテナだと思っている。バーニング・パラス・アテナ。
特典会における優しい微笑みと甘い声はまさしくヴィーナスだが、リング上においてはまさに戦神であり戦姫。まさにパラス・アテナ。
私が富豪なら彫像を作ってルーヴルに寄贈したい。
クリムトが描いたパラス・アテナは口を真一文字に結び、微笑まず、いっぺんの曇りなく敵を凝視する勇猛な名画である。
彼女がヴィーナスから戦神に変わる時、東女の新たな闘いの火蓋が切って落とされるはずだ。
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