東女美男子烈伝.1 木曽大介

無個性を旨とするポゼッションダンディ

木曽大介は美しいんだ。

沖織名、ジョー樋口、タイガー服部、和田良覚。
プロレス史に残る名レフェリー達はみな、なんらかの競技に精通する猛者だった。時にプロレスラーとともに道場で汗を流し、そうすることで超人にはなれないまでも、彼らを理解し仕事に備える。それがレフェリー。結局彼らも超人。

木曽大介の場合。レフェリーデビューは30歳。早いのか遅いのかはわからないが、リング上の立ち振る舞いを見るに、名だたる名レフェリーらと並んでもなんら遜色はない。カウント速度はタイガー服部より遅く、ジョー樋口より速い。マットを叩くフォームは和田京平。
ダァイスケェェェ!

彼はかつて全日本選手権3位になったこともあるサンビストだった。審判員の資格も所有しているということは、きっと簡単に人を殺せるレベルなのだろう。加えて栄養士の資格も。SNSにアップされる彼の手料理。結婚する気はまるでなさそうだ。そういうことを言ってはいけない。
現代レフェリー界きってのアスリート。まるで若き日のタイガー服部。
彼はあるネットニュースのインタビューで、

「プロレスのレフェリーっていろいろなタイプがいるのが面白い。見た目、動きの速さや大きさ、声の出し方……そんな中で自分が目指してるのはどちらかというと無個性。」

目立ってなんぼのエンタメ界において彼は堂々とそれを否定する。ある選手から「今日いたの?」と言われることに喜びを感じるほどに。存在感がなかったということは、選手の邪魔にならずにきちんと試合を裁いているわけだから、すごくいいこと。私はコレを書くために、観戦時にプロレスラーではなく彼のポジショニングに注目してみた。
ほどよい距離感を保って決定的な場面を見逃さないように試合を裁く彼。プロレスはレフェリーにもポゼッションスキルが求められることを知った。プロレスはレフェリーも「ボールは友達」でなくてはならない。いつ森保ジャパンに呼ばれてもおかしくない。ちなみに私は彼とトイレでよくすれ違う。

さらに彼はこうも言う。
「アマチュアレスリングは1秒以上フォールしなくてはならないが、プロレスは『3カウント』で明確には『3"秒"』ではない。それはレフェリーにより違いが出る。それが面白い。」

彼のレフェリーとしての矜持。無個性に徹するという個性を持つ彼がいることで、「優しい世界」の美女達はさらに美しく煌めける。

紆余曲折を経てプロレスのレフェリーという生き方に辿り着いた木曽大介という美男子。
彼は遅かろうが人生はやっていないより、始めている時点で勝ちだと言う。天職に辿り着いた美男子。
私もそうありたい。

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