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『アイドルコネクトAsteriskLive』クラウドファウンディングプロジェクトにあたって

 『アイドルコネクトAsteriskLive』という2次元アイドルコンテンツがあります(以下『アイコネ』)。2016年8月にソーシャルゲームとしてリリースされ、わずか3ヶ月でサービス終了となってしまったコンテンツです。

 その『アイコネ』について、クラウドファウンディングのプロジェクトが立ち上がりました。明日、2/22 20:00から公開です。

 目的は、3ヶ月でサービス終了したために、物語の途中で終わってしまったシナリオを、ノベルゲームとして復活させるというものです。

 クラウドファウンディングが成功したとして、リリースされるのは今年の9月予定で、実現すれば5年の時間を経た上での復活ということになります。

 そう、5年です。決して短い時間ではない。それでも自分が何故このコンテンツについてきたのか、ということについて、今回のクラウドファウンディングの発表を機に振り返ることができたので、書いておきます。

 『アイコネ』に触れたきっかけは、リリースされた2016年頃、丁度知人と、『MIW -MUSIC OF IDOL WORLD』という二次元アイドル音楽ガイドブック同人誌(https://kamikusa.hatenablog.com/entry/2016/12/23/193421)を製作していた真っ只中で、丁度二次元アイドルコンテンツにアンテナを広く張っていたことでした。この本を作ってなかったらもしかしたら触れることがなかったかも知れません。(もちろん『アイコネ』も、この本の中で取り上げました。)

 当時は、2015年にリリースされた『アイドルマスター シンデレラガールズ スターライトステージ』を代表として、二次元アイドルコンテンツがリズムゲームとしてリリースされることが主流となった頃でした。『アイコネ』も3Dモデルを実装し、楽曲を用意し、ライブステージを背景としたリズムゲームを実装していました。
 ただ、このゲームで僕が心を引かれたのは、楽曲以上にシナリオに対してでした。今ではあまりピンとこないかも知れませんが、当時のソーシャルゲームにおけるシナリオテキストの期待値というのは決して高いものではなかった。
 『アイコネ』のシナリオに触れたときの僕の第一印象は『ノベルゲームっぽい』でした。ただキャラクターの装飾として「こういうことがあった」という事実を示すだけのストーリーではなく、物語をやろうとする意志、面白いテキストを書こうとしている意志を、そこに感じたのです。(これはそもそも僕自身がかつてのノベルゲー(ギャルゲー)に思い入れがあるオタクだからというのは多分にあります)

 これは当時半分ネタでツイートしたら自分にしてはちょっと跳ねて嬉しかったツイート。

 ちなみに、サービス終了当時までのシナリオは単体のADVアプリとして発売されています。(下記のツイートのADVアプリ)

 少し主語の大きい話になりますが、「キャラクターコンテンツをソーシャルゲームとしてリリースする」ということは、ソーシャルゲームというものが、サービスを継続していくことが一つの目的であり、ユーザーがその時間を共にしていくという性質がある以上、必然的に、キャラクターへ「生」を与える側面があると思います。だから二次元アイドルコンテンツとは非常に相性がいいんですね。
 そして、『アイコネ』はその書かれているテキストがまさに「キャラクターを生かそう」としていた。そういう「意志」があった。

 よって、『アイコネ』のサービス終了に際して受けた衝撃は、より「死」に近いものだったと言えるかも知れない。だからこそ、僕はこう思ってしまった。

「なんか、これは違うんじゃないか」

 最後まで行き着かなかった物語なんて世の中にごまんとあります。そういう意味ではごくありふれたことです。

 それでも、そこに見出された「意志」がサービス終了によって途絶えてしまうことには、悲しみ以上に、「納得のいかなさ」がありました。それは上記の理由から、ソーシャルゲームとしてリリースされていたことがやはり大きい。
 結局のところ、僕が、なんだかんだで5年間も追い続けていた理由はおそらくこれに尽きます。
 もう少し素直に「コンテンツを、キャラクターを好きだから」って言えればいいんですけど、もうこればかりは自分の性質なのでどうしようもない。

 そして、同じようにずっと『アイコネ』を気にかけ続けていた人はみんな、そう思ってるところがあるんじゃないかな、とも勝手ながら思っています。『アイコネ』のファンは、サービス終了後にその諦めの悪さから「ゾンビ」と呼ばれるようになりました。インターネットらしさ溢れるミームですが、上記の経緯もあって僕はかなり気に入っています。ライターの一人である石原宙さんも自身のブログで「ゾンビ」に向けてメッセージを書いてくれていました。

 さて、ソーシャルゲームでなければここまで入れ込まなかった理由としては、一方で、ソーシャルゲームのあり方の歪さがあります。現状、ガシャという決して褒められないであろうものがメインの収益源となっていて、ともすれば続けることは運営とユーザー間のチキンレースのような様相を呈してしまう。そしてそのある種の”共犯関係”のようなものが上手くいかなくなったとき、あっけなくサービスは終わりを迎える。誰が悪いというわけではなく、現状、ソーシャルゲームは、そしてそれを拠り所とするキャラクターコンテンツは、どうしようもなく、そういうものになってしまっている。
 「納得のいかなさ」にはこういう構造的なものへの反感もあったことは確かです。

 そういう意味では、ファンクラブの有志によって、そして今回のクラウドファウンディングによって、もし、そのとき途絶えた「意志」が再び息を吹き返すことができるのであれば、それは、とても痛快なことじゃないかとも思うのです。世界にはたまにはこういうことが起こっていいと思う。

 サービス終了後にリリースされた主題歌『Star*Trine』の歌詞には、こんなフレーズがあります。

 セピアをカラフルに変えて

 発表されたタイミングに対して、あまりに出来過ぎなこのフレーズに支えられた部分は大きいです。そして、いよいよそれが実現する手前まできている。それだけでもウソみたいですが、やっぱり、セピアがカラフルに変わるのを、そしてカラフルが虹へと変わるのを、見てみたいなと思うのです。

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