相撲部に入ったときの話

1998年春、1年間の浪人生活を経て九州大学に入学した私は、相撲愛好会に入部した。

なぜ相撲だったのか。私が相撲を見はじめた頃は昭和60年前後。千代の富士が全盛期で私も千代の富士ファンだった。その後は若貴ブーム、私は若貴のライバル的存在であった曙のファンだった。…相撲は好きであったが、この頃はその程度だった。

1997年春、高校を卒業。志望大学に落ちた私は、浪人生活を送っていた。予備校には真面目に通っていたが、予備校が終わって家に帰るとちょうど大相撲中継の時間だった。気分転換と称して相撲中継を見ているうちに、以前よりももっと深く、相撲を見ている自分に気づいた。そしていつしか、大学に受かったら相撲部に入ろうと、漠然と考えるようになっていた。

1998年3月、念願かなって九大に合格した私は、家を探すために福岡に来たついでに、今はなき六本松キャンパスを訪れた。春休みで人もまばらだったが、掲示板等に無数の部活、サークルの部員募集の張り紙がしてあった。その中に

「九州大学相撲愛好会 新弟子募集!」

と書かれた、控えめな大きさの張り紙があった。「九大には相撲部がある!」と確信した瞬間であった。

4月、入学式前に各種手続き等で六本松キャンパスを訪れた。3月と違って、新入生の長い列と、それを取り囲むように勧誘活動をおこなる各サークルでごった返していた。その中に数人、まわしを締めて勧誘する一団が。いうまでもなく相撲部である。

「今晩、近くの福岡武道館で稽古やってるので、もし興味があったら来ませんか(要約)」

みたいな感じで声をかけられた。

「わかりました、行きます。今晩、武道館ですね?」

と返事した私。おそらくそれまで、いろんな人に声をかけたけど手応えなかったと思われるが、いきなり私が行きます宣言したもので、あちらがびっくりした表情を見せたいたのを今でも覚えている。

夕方、福岡武道館へ自転車で向かった。多少道に迷って遅れたため、土俵に着くとすでに稽古は始まっていた。当時の相撲部は、4年生の部員が2人だけだったが、その日は新入部員(私のこと)が入るかもしれないとのことで大学院に在学中のOBも数人稽古に参加していた。そのうちの一人の先輩が色々と稽古を解説してくれた。

この日は見学だけで、稽古終了後、改めて入部宣言をした私は、近くの定食屋で夕食をお腹いっぱいご馳走になり、次回の稽古から参加することとなった。

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