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自分自身の課題感の整理

だんだん自分がやりたい事って何なんだ?という疑問が湧いて出てきたので整理してみる。

物が溢れる時代に生きている

私は栄久庵健司氏が言うところの「凄惨な無」が有で消された平成初頭の広島に産まれた。

これまでの人生でありがたいことに衣食住に困った記憶は無いし、昔見た幼少期のビデオテープにはヨチヨチとハイハイしながらアナログテレビのアンテナを握りしめている自分が映っていた記憶がある。

今読んでいる山口周氏の本によると、現代は「高原の社会に軟着陸しつつある」、つまり大多数の人間が生存に必要な物資を生産し物で社会を満たす文明化の段階を終えようとしているのだという。

もちろんあらゆる種類の生きづらさ、苦しさ、尊厳の問題は世の中にあふれかえっているものの、生物として生存することについての問題はほとんど解決された(ように見える)社会で自分は生きている。

確かに物は溢れていて、大多数の人にとって単純に生活必需品を揃えるだけならニトリや無印良品、イオン、ヨドバシカメラ、ホームセンターなどで(気に入るかはさておいて)大半の物は揃えられるし、自分自身も大多数側の人間だ。

大量生産の手が届かない領域の存在

誰一人取り残すことのない、というワードを最近よく聞くが、そのタイプの考え方の代表例といえばユニバーサルデザインとインクルーシブデザインが挙げられる。ザックリ紹介するとそれぞれ、誰もが使いやすい道具を作ろうという思想と、これまでデザインのプロセスから排除されてきた人たちと一緒にデザインしようという思想だ。ユーザーを限定できない道具や公共性が高く不特定多数が関わる空間やサービスのデザインなどに適用されていると私は理解している。

勿論上記の考えは大賛成であるが、しかしこの発想だと極端な少数派は取り残される。なぜなら極端な少数派が必要とする道具・サービス・支援は必ずしも大多数の人も使うとは限らないからだ。

かつて学生の頃にとある課題に取り組んだ際、大資本が乗り込んでこない領域の存在を知った。ユーザー数が極端に少ない問題や、利益の拡大が難しい領域の問題は大企業やメーカーはほとんど関わらないし、関われない。インダストリアルデザイナーと言う立場はインハウスとフリーランスのどちらにしろ大量生産というルートを通すことになる。なので、どれだけ使いやすく美しい道具や問題を鮮やかに解決する道具を作る技術を高めようとも、そのスキルを量産品というメディアを通す限りそういった人たちへ提供する事が出来ない。

ではそういった対象者が少なくかつ道具で解決可能な問題はどうされているかと言うと自分が見聞きした範囲では当事者や周囲の家族、友人、医療福祉職の方などがDIYで工夫し解決をしているという。

小さな作り手を増やし、支えたい

この記事を書いているうちに山口周氏の著書「ビジネスの未来」を読了したが、その中で「経済合理性限界曲線」という概念を提案していた。これは社会に存在する問題の普遍性を横軸に、問題の難易度を縦軸に置いてマトリックスを作る際、文字通り経済合理性がある領域に線が引けて、その内側の問題しか従来の市場の枠組みでは取り組むことが出来ない事を示している。

自分が関心を寄せている領域は明らかにこの経済合理性限界曲線の外側の問題であり、インダストリアルデザイナーの一般的な枠組みで働く限りはこの問題にタッチ出来ない。

社会の中のそういった問題は自分のような人間ではなくて問題を抱えている当事者か、その周囲の家族、友人がもつ内的動機、あるいは衝動を起点にしないと解決出来ないように思えてならない。

仮にそうだとして、自分にどんなことが出来そうか考えてみる。
・極少量生産でも魅力的で持ってて嬉しい道具を作るノウハウを蓄え、まとめ、公開する。DIY出来る人たちのための情報源になる。現在個人的に行なっている3Dプリントならではの魅力的な意匠を探る研究がそれ。また研究費用をどうにか稼ぐ。
・デザイナーやエンジニア、工場と言ったこれまでは大量生産に従事していた人々が、極少数の人のためにも働ける何かしらの仕組みを作る。
・資本の下ではなく市民の中にモノづくりの技術が広く普及すれば、営利とは関係なしに問題解決が起きうるはず。なので、小さな作り手、つまり営利企業とは関係のない個人的な興味、衝動でモノづくりする人たちが増える手助けを出来ないか。
・そもそも営利企業がカバー出来ない問題は福祉的支援の対象とすべきではないか?つまり、DIYでカバーするしかない問題にかかる費用は補助されるべきではないか?制度で解決できないかを考察してみる(すでにあるかもしれない)。


こういった自分の課題感とほとんど関係のない仕事で平日の大半を過ごしているため、すぐに全てを行動に移すのは現実的では無いが、少しずつ進めていきたい。

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