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柏原康弘詩集『詩の故郷吉備スケッチ帳』

 先日、岡山の後楽園で行われた市の朗読会でお知り合いになった柏原康弘さんから第三詩集『詩の故郷吉備スケッチ帳』をご恵贈頂いた。「牛窓」「備中高梁」「中洲の里」と題した3部構成で、30篇を収める。それぞれの地に住んでおられた頃、出会った風景を、言葉でスケッチして作品化。ご自分の詩について、いただいたお手紙に「昔の叙景詩というもので、本当に単純な作品ばかり。」とあるが、日常的な言葉で紡がれた詩句は、読んでほっとする。易しい表現が用いられているからといって、決して使い古された言葉になっていないのも柏原詩の魅力である。一篇、ご紹介させていただきます。

色を塗って

色を塗って色を塗って
 空は真っ青になりました

色を塗って色を塗って
 山が黄褐色になりました

色を塗って色を塗って
 川は暗緑色です 

皮の近くに白い家を建てました
 周りは緑の畑です

娘二人と息子と妻と
 毎日の絵の具を混ぜています

今日は何色に染めようかと 
              (全文)

 たったこれだけの言葉だけれど、五人家族の慎ましく幸福な生活が目に見えるようにスケッチされている。

柏原康弘詩集『詩の故郷吉備スケッチ帳』
 2021年10月10日発行 土曜美術社

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