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人間はくもの糸をのぼれない

 昨年度の鈴木三重吉賞作文の部特選「人間はくもの糸をのぼれない」(三原市・広島大付三原小2年 田村真理嘉さん)の朗読が素晴らしかった。
 あらすじを紹介いたします。

 授業参観で、お母さんたちに虫のかんさつをするところを見てもらった。池でヤゴがトンボに羽化していたのを動画におさめたりしたのだが、クラスメイトの一人が羽化し終えていないトンボの羽をつまんで殺してしまった。 
 家に帰ると「気まぐれで生き物を殺したりすると、地ごくに落ちるよ。」とお母さんに言われ、私は『くもの糸』の話を思い出した。カンダタは自分だけ助かろうとして元の地ごくに再び落ちてしまう。私はトンボは殺さなかったけれど、チョウをつかまえてカマキリに食べさせたりしたことがある。
 私がもしカンダタの立場だとしても、やっぱり自分の下をのぼってくる人たちに「下りろ。下りろ。」と言ってしまうと思う。とても困って自分が苦しいときは、まず自分が助かりたいと思ってしまうと思う。どんなに良い人でも、自分のことをゆう先するのは人間の正直な気持ちだと思う。
 人間も他の生き物もみんな平どうに生きている。お母さんはトンボやチョウが殺されることには心をいためても肉や魚は平気で食べるし、ゴキブリやカを殺す。良い虫、悪い虫、食べてもよい生き物と食べたらかわいそうな生き物をかっ手につくっているのは人間だ。

 以下、原文引用。

 本当はどの命も同じように大切に思わないといけないのに、自分にとって大切かどうかで、人間にとっての実さいの命の重さはかわっています。くもの糸は私たち人間にはぜったいにのぼりきれない糸なんだと思います。でももし、自分にむじひな心や自分かっ手で浅ましい心があることに気付くことができれば、地ごくは少しはくらしやすくなるのかもしれません。
                 (了)

  小学校2年生(現3年生)で、自らをここまで客観的に突き放して作品化できるのは素晴らしい。人の心を打つ文章というのは、テクニックではなく、対象を捉える姿勢にあると思った。

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