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スナック

京都の三条花見小路を三筋ほど下がった雑居ビルの5階に幸路というスナックがありました。会員制で、会員の方もしくはそのお連れの方のみお店に入ることができます。

ママがお店の名前を紹介する時に、「しあわせのみち、みちはどうろのろよ、それでこうじというの。皆さまの幸せにつながりますように。よろしくおねがしますね」と。にこやかに説明するママの姿をよく覚えている。お店のアルバイトの面接の時も確か同じ事を言っていた。

20数年たった今でもカウンターのほのかなライトの下で大きく笑うママの笑顔を覚えている。すごく大きな笑顔の方でした。

大学の1回生から5回生くらいまで、幸路でお世話になりました。時間は、夕方6時くらいから夜の1時くらいまで。お客さんがいないと12時前にお店を閉めることもあったけど、大体そんな感じです。夕方、お店を開けて、テーブル、氷、グラス、お酒の準備をします。大体7時くらいにママが出勤して、女の子は8時くらいだったと思う。シフトは、週3日から6日くらい。夏休みなどアルバイトの先輩が帰省している時はずっとお店に入ってました。笑。

お店は、ママと女の子と僕の3人がカウンターでお客様を迎えます。カウンターのみです。横長の店内にもテーブルを置くこともできましたが、テーブルは置かずに大きなガラスケースにお酒をズラッと並べてました。すごくゆったりとした雰囲気の店内でした。

お客様のグループ、人数、雰囲気に合わせて、ママと女の子と僕のポジショニングが決まります。お酒で盛り上がりそうなグループには大きな笑顔と笑っていない目のママが。常連さんには女の子が優しく寄り添う。会社の上司とその部下には僕が。僕の役割は、上司の決まっていう台詞

「大学では夜のことは教えてくれないだろ。これも社会勉強だな」

「はい。皆様のお酒のお供をさせていただき、いろんなお話を聞かせて大変勉強になります!今日もお疲れさまです。今日はどこいかはったんですか」と受け答えする事。会員制なので、暴力的な方はあまりおらず、皆さん紳士的に受け答えされていて、すごく魅力的な方もおられたので勉強になりました。でも酔っ払うと皆さん同じ事を何度も繰り返すんですよね。こんな風な会話ができる雰囲気が求められていたんだと思います。良くも悪くも。

アルバイトも数年経過するとお客様のお顔、お仕事、これまでのお店での飲み方など、色々情報が溜まってきます。すると余裕を持ってカウンター越しにお話をすることができるようになり、お客様とすごく楽しい時間を過ごせるようになりました。「スナック幸路の男の子」、というレッテルが貼られている中での接客なので、お客様の優しさに甘えていたと思いますが、当時は世の中で働かれている方々とカウンター越しにお話できることはすごく有意義なことであり、すごく有り難いなぁと思っていました。

時給も他のアルバイトよりは割りが良く、シフトを入れるほど貯金できました。でも貯金は、全部、旅行とフィルム代に使いきり、卒業する頃には、いくらも残っていませんでした。笑

大学生の頃は、何でこの人達はまっすぐお家に帰らずにスナックなんかに寄ってるんだろうと、不思議に思っていました。でも今では何となく分かるような気がします。仕事とお家の間で少し寄り道をしてお話をすることでなんとなく気持ちをリセットして、一日一日を過ごしていたんだなぁと。

スナックにもいろんなスナックがあると思いますが、お店の雰囲気が良くて何だか皆が優しく迎えてくれるお店があるとすごくほっこりできますよね。そんな優しい雰囲気のスナックって本当にいいですよね。

と、この前、隣の家の大学生の太郎くんが話していました。

ここまでのあなたの大切な時間、ありがとうございます。多分、無駄になってます。笑 ドーナツの穴も穴があってのドーナツです。もう少し無駄にしたい方は是非サポート! (ありがとうございます。小声で)