脚本っぽく書いたネタ「ぞるげくん」
実はちょっと前にジャンプ+の原作大賞に応募してました。
結果は駄目駄目でしたが、まぁせっかく書いたし勿体ないので載せてみようかと。
ちなみに過去のピンネタを基にしてます。もし「おい知ってるぞこれ。見たことあるぞ。これあれちゃうんか。なぁあれやって。見たことあるもん。あれやろこれ?なぁ。なぁて。こっち向けや。イヤホン取れや」っていう方がいれば、貴方はなかなかな清友マニアかも???
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朝の教室。
生徒達が口々に話をしていて騒がしい室内。
織村「はーい、皆静かにー」
【織村透(32)
賽ヶ岳中学 3年3組担任
コンプレックス:声が細い】
織村「1時限目のホームルームだけど、この時間では…」
織村が話していても、構わず話を続ける生徒達。
織村「ちょっと皆聞いてる?ホームルーム始めるよー、静かにして。ちょっと…皆、静かに…」
ぞるげ「静かにしようよ゙ぉーーーーーー!!!!」
大きな声と共に、びりびりと震える教室内。窓にもぴしっとヒビが入り、生徒達の髪や制服も衝撃波で少したなびく。
織村の横に、鬼のような角や牙、獣のような鋭く長い爪、額に禍々しい眼がついており、顔には魔族のような紋様の入った、学ラン姿の小柄な男子生徒が立っている。ぞるげだ。
ぞるげ「先生が話してるんだからぁ!真面目に話聞こうよぉ!!」
【ぞるげ(14)
賽ヶ岳中学 3年3組学級委員長
コンプレックス:人外】
「うっせーって、ぞるげ」「あーあ、また窓ガラスひびいっちゃってんじゃん」と、ぞるげに対して特に怖がる様子もなく、日常茶飯事のような反応のクラスメート達。
織村「ありがとう、ぞるげ。じゃ、続きはお願いしていいかな?」
ハルルル、と喉を鳴らしながらぶんぶん頷くぞるげ。
ぞるげ「この時間ではぁ、来月の文化祭のぉ、出し物を決めます!皆の意見をぉ、聞いて決めます!皆、何がいいですかっ!?」
「ん〜別になんでもいいべ?」「部活組もいるもんなー」「私も。塾とか忙しいし」と生徒達。
「とりあえず、あんまり手間のかかんなそうなやつで考えたらいいんじゃな…」
ぞるげ「よくないよ゙ぉーーーーーー!!!!」
耳を抑える生徒達。
ぞるげ「皆3年だよぉお!?最後の文化祭なんだよぉ!?最優秀賞とろうよぉ!僕は、確かに人間じゃないけど、でもこれが、大事な思い出になるって言うのは、わかる゛ぅーーーーーーー!!!!」
再び震える教室。窓ガラスが衝撃に耐えかねて割れる。
「わかった、わーかったからぞるげ」「ちょっと抑えろって、な?」と生徒達。
ぞるげ、ハルルルと喉を鳴らしている。
早見「(教室の扉を勢い良く開けて)織村先生っ!!」
織村「早見先生♡」
【早見美寧(28)
賽ヶ岳中学 3年2組担任
コンプレックス:お尻のほくろ】
「あんまり力使わせないで下さいってば」「すいません、すいません」と、早見に怒られてる織村をよそに話を続ける生徒達。
羽島「けど、ぞるげの言う通りかもね」
口を開いたのは、爽やかそうな見た目の好青年、羽島。
【羽島練(15)
賽ヶ岳中学 サッカー部所属
コンプレックス:奥歯に銀歯がある】
羽島「大人になったらもうこういうのやる機会もない訳だしさ。それを何でもいいってしちゃうのは、僕も確かに勿体無い気がするかも」
「まぁそれもそうか」「よーし、ちょっと考えてみっか」と前向きになる生徒達。
それを見て嬉しそうにぶんぶんと頷くぞるげ、チョークを手に取り
ぞるげ「じゃあ、皆の意見、聞かせてっ!!」
× × ×
話し合いで色々な案が出た3組。
黒板には「たこ焼き屋台」「お化け屋敷」「コスプレ喫茶」などがぞるげの字で書かれている。
織村「うん、色んな案が出たね。じゃ、この中から多数決とろっか?」
俯き、小さく震えているぞるげ。
織村「ん?どうしたのぞるげ?」
ぞるげ「…げき……うよ…」
織村「ん?何?」
ぞるげ「…演劇しようよ゙ぉーーーーーーー!!!!!」
先ほどより強い衝撃。震える校舎。騒ぎ立つ飼育小屋の鶏。磨いていた銅像を落とす校長室の校長。至近距離で食らって、半分意識がトぶ織村。
早見「(爆走してくる足音と共に、扉を勢い良く開けて)織村先せぇいっ!!」
ふらふらになりながら、早見にガミガミ説教されてる織村をよそに
ぞるげ「皆知ってるでしょお!?うちの文化祭は、3年生の演劇が目玉なんだよぉ!じゃあやろうよぉ!!最後なんだよぉ!?」
「演劇なぁ〜」「別にいいんだけど…」と難色を示す生徒達。
ぞるげ「なんでぇ!?何が嫌なのぉ!?」
古沢「だって2組も演劇やるんだろ?」
口を挟んだのは、少し陰気そうな少年、古沢。
【古沢慎二(15)
賽ヶ岳中学 帰宅部
コンプレックス:母子家庭】
古沢「2組には演劇部部長の矢嶋がいるじゃん。他のクラスの奴も言ってたぜ?あいつらがいちゃあ、演劇で勝負なんかできねえって」
「そうだよなぁ〜」「矢嶋の奴、プロの劇団からもスカウト来てるんだろ?」「そこと比べられるのはちょっと…」と生徒達。
ぞるげ「よそは関係ないでしょお!?僕らのクラスの話でしょお!?せっかくの最後の文化祭、僕は皆で協力して、クラスの気持ちを一つに」
息を吸い込むぞるげ。
ぞるげ「したいよ゙…」
織村「ぞるげ!」
叫びそうになるぞるげを呼び止める織村。
織村「抑えて、抑えて」
ぞるげ「…したいよ゙ぉ…」
悲しそうなぞるげ。
椎名「…あの」
手を挙げたのは、クールそうな少女、椎名。
椎名「私は、演劇ありだと思う」
【椎名燈(14)
賽ヶ岳中学 クラス一の洋楽好き
コンプレックス:妹より背が低い】
パアッと明るい表情になるぞるげ。
「えーマジで?」「燈、あんたなんか一番めんどくさがりそうじゃん」と周りの生徒。
椎名「うん、個人的にはあんまやりたくないんだけど。でも、うちのクラスにはぞるげがいるから。ぞるげを軸にした演劇なら、うちのクラスにしかできないものがやれるかなって」
羽島「確かに…他のクラスとの差別化は図れるね」
田岡「どうせなら、オリジナルの脚本書くとかもありじゃね!?」
【田岡茶太郎(15)
賽ヶ岳高校 クラスのお調子者
コンプレックス:毛が伸びるのが早い】
「確かに、それならちょっと面白そうかも」「2組にも勝てんじゃない?」とのり気になる生徒達。
田岡「なぁ、どうよぞるげ!」
ぞるげ「僕は木の役でい゙い゙」
田岡「そこ控え目なんだ」
「ぞるげが木は勿体ねえよ」「主役やろうぜ、主役」と盛り上がる生徒。
ぞるげ「ゔ〜〜…」
ハルルル、と喉を鳴らして困った様子のぞるげ。
突如、ガラッと教室の後ろの扉が開く。
赤髪でワイルドな髪型、身長も高い男子生徒。
不良生徒の神橋だ。
【神橋蘭(15)
賽ヶ岳中学 不良生徒
コンプレックス:女みたいな名前】
織村「神橋くん、遅刻ですよ」
織村の言葉を無視して歩いていく神橋、一番後ろの窓際の席にドカッと座る。
しんと静まり返る教室。
ぞるげ「神橋くんは、何がしたい?」
田岡「おい、ぞるげ。神橋は…」
神橋「あ?」
ぞるげ「文化祭の出し物、何がしたい?」
神橋「…何でもいいよ」
ぞるげ「よくないよ!最後の文化祭だよ゙!?ちゃんと話し合って、クラスが一つにならないとだから、神橋くんも参加しないと!!!」
神橋「(小声で)うるせぇな…」
ぞるげ「今ね゙、演劇はどうかって話をしてて、もしよかったら神橋くんの意見も」
神橋「うるせえっつってんだよ!!」
机を蹴り飛ばす神橋。
神橋「クラスが一つになって?はっ。笑わせんじゃねえよ…てめえ化物じゃねえか。化物がよぉ、人間様と同じようなツラしてんじゃねえよ。何が文化祭だ、こっちはお前と同じ教室の空気吸ってるだけで気持ち悪くて仕方ねぇんだ。そんな気持ちも、化物にはわかんねぇか?」
ぞるげ「……」
古沢「…じゃあ出てけよ」
神橋「…あ?今言ったのお前か?」
古沢「な、何だよ。だったら出て行けばいいだろ!俺達だって、お前がいない方が清々するんだよ!」
神橋「てめぇっ…」
ふと見ると、クラス全員の視線が神橋に突き刺さる。
神橋「…上等だよ」
教室を出ていく神橋。
「気にすんなよ、ぞるげ」「あいつの方がクラスの癌だっての」「放っといて続きやろうぜ、続き」と生徒達。
ぞるげ「…めだよ……」
生徒「ぞるげが主役もありだけどさぁ、逆に敵役ってのもどう?」
生徒「あー、それもいいかもー」
ぞるげ「駄目だよ゙ぉーーーーーーーーーーー!!!!!!!!!!!」
今までで一番強い衝撃。
衝撃は海を割り、雲を裂き、上空を飛ぶ飛行機の機体を震わせ、衛星の計器も異常反応を示し、月がひと匙程欠けた。
ぞるげ「駄目だよ、そんなこと言っちゃ!何でそんなこと言うのぉ!?」
田岡「だってあいつ、ぞるげに酷いこと言って…」
ぞるげ「関係ないよそんなの!同じクラスの友達でしょう!?僕は、確かに人間じゃないけど、でも友達が、大事なものだっていうのは、わかる゛ぅーーーーー!!!」
何も言葉が出ない生徒達。
教室を出て神橋を追いかけるぞるげ。
生徒「あ、ぞるげ!」
「どうする?」「どうするったってなぁ…」と生徒達。
織村「ぞるげはさ、このクラスが好きなんだよ」
椎名「先生」
織村「人間じゃない自分をあったかく迎えてくれたこのクラスが。だって普通、魔族と人間のハーフなんて怖いだろう?先生も最初怖かったもん。でも皆は、転校初日からぞるげに分け隔てなく接してくれた。だから、余計寂しかったんじゃないかな?こんな自分は受け入れてくれたのに、何で神橋くんのことは邪魔者扱いするのかって。皆本当は、すっごく優しい人達なのにって」
推し黙る生徒達。
早見「お〜り〜む〜ら〜せ〜ん〜せ〜い〜…!?」
織村「はっ!」
織村の背後で、怒気を放ち仁王立ちする早見。
胸ぐらを掴まれ振り回されてる織村をよそに
田岡「…行こう、皆」
椎名「うん」
次々と席を立ち、後を追いかけるクラスメート達。
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河原の高架下で、一人佇む神橋。
ぞるげのセリフがフラッシュバックする。
ぞるげ「クラスが一つにならないとだから、神橋くんも参加しないと!!!」
神橋「…気持ち悪りいんだよ、化物が」
斗戸樫「神橋くぅ〜ん」
他校の不良生徒、斗戸樫が大勢の子分を引き連れてやって来る。
手には金属バットや角材など。
斗戸樫「ちょっと遊ばなぁ〜い?」
【斗戸樫伴介(17)
富士岬高校 不良生徒
コンプレックス:体毛が濃い】
神橋「…」
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街中、神橋を探しているぞるげ。
しかし一向に見つからない。
ぞるげ「ゔゔ…全然見つからない。ごめんなさいお母さん、少しだけ使うね…」
目を閉じ、集中するぞるげ。
ぞるげ「《闇波羅》!」
額の目が大きく開き、千里眼のように遠くの景色を映す。
すると、高架下で斗戸樫達と対峙している神橋の姿が。
ぞるげ「神橋くん!!」
神橋は血塗れで、今にも倒れそう。
すると、後ろから金属バットで殴られ倒れる。
ぞるげ「っ!!」
ぞるげ、怒りの形相になる。
角は赤く変色し、口からハァァと瘴気のようなものが出て、目は獣のように瞳孔が開いている。
そして大きく屈んだかと思うと、そのままものすごい速さと勢いで跳び上がりその場を後に。
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高架下。
斗戸樫達に囲まれて倒れる神橋。
斗戸樫「どうした神橋?もう終わりかぁ?」
神橋、倒れながら斗戸樫を見上げる。
神橋「サシでやれよ…クソ野郎」
斗戸樫「これに懲りたらあんま粋がんないでさぁ、大人しく学校の奴らから上納金集めてきてよ?そしたらもういじめないでやっからさ。わかった?」
倒れている神橋の髪を掴み、持ち上げながら言う斗戸樫。
神橋、斗戸樫の顔に唾を吐く。
斗戸樫、ピキッと堪忍袋の緒が切れる。
掴んだ神橋の頭を地面に叩きつけ、「やれ」と子分達に。
子分がバットを振り下ろそうとしたその瞬間───
ドンッ!!
背後からものすごい音。
舞い上がる砂煙の中から、ハルルルと音が聞こえる。
煙が晴れてくると、怒りに震える鬼のような学ラン姿の少年が。
ぞるげだ。
斗戸樫「何だぁ?」
神橋「…お前…」
ぞるげ、怒りの形相のまま斗戸樫達の元へざっざっと歩いていく。
ぞるげ「…謝れ」
斗戸樫「あ?」
ぞるげ「神橋くんに謝れ…僕のクラスメイトだ」
神橋「…っ」
斗戸樫「何言っちゃってんのかなぁこいつは。てか誰お前?コスプレのおかげで、本当に強い気分になっちゃったかぁ?」
子分達と笑いながら、ぞるげの角を抜こうとする斗戸樫。
ぞるげ「謝れ」
斗戸樫「…あれ?この角抜けね…」
ヒュッと振り抜かれたぞるげの拳に、吹っ飛ぶ斗戸樫。
斗戸樫「あ…が…!?なん…っ…!?」
ぞるげ「謝れ…悪いことしたら…謝れ゛ぇーーーーーーー!!!!!」
斗戸樫「ひっ…!?」
子分「うっ…うわぁ!!」
後ろから、金属バットでぞるげを殴る子分。
しかしぞるげにダメージはなく、バットの方が折れていた。
子分「…っ!?」
ぞるげ「僕は…確かに…人間じゃないけど…でもこんなので、人を殴ったらダメってことは…わが𝕶𝕱𝕺𝕸𝕳ーーーーーーー!!!!!!」
怒り狂いながら金属バットを綿のようにちぎり倒していくぞるげ。
斗戸樫「あひゃっ…す…すいませんしたぁ〜〜〜!!」
退散していく斗戸樫と子分達。
いつもの表情に戻るぞるげ。
ぞるげ「神橋くん、大丈夫ぅ!?」
神橋「…何で来たんだよ。ほっといてくれっつったろ」
ぞるげ「でも…」
神橋「化物に助けられんのなんざまっぴらなんだよ」
ぞるげ「…僕は…確かに人間じゃないけど…でも一人ぼっちが寂しいってことは…わかる…」
ぞるげの脳裏に、転校前の学校で仲間外れにされていた記憶が過ぎる。
神橋「…」
羽島「ぞるげ」
声の方を見ると、クラスメイト皆が揃っている。
ぞるげ「皆」
田岡「ごめんなぞるげ、俺たち…」
ぶんぶん、と首を横に振るぞるげ。
羽島「(古沢に)ほら」
古沢「…ごめん、神橋。俺、ひどいこと言った…悪かった」
神橋「…!」
羽島「今すぐ仲良くは無理かもしれないど、せめて文化祭は、一緒に楽しまないかい?」
神橋「…木の役なら」
椎名「え?」
神橋「木の役くらいなら…やってやる」
微笑む生徒達、ぞるげも嬉しそう。
田岡「じゃ神橋が木の役だから、やっぱ主役はぞるげだな!」
ぞるげ「え゙!?」
ぶんぶんと首を横に振るぞるげ。
古沢「何がそんなに嫌なんだよ?言い出しっぺのくせに」
ぞるげ「…僕が出ると、その…見に来た人が、このクラスは化物がいるんだって思うから。皆に゙迷惑かかるから。だから…」
羽島「ぞるげ。それはちょっとずるいんじゃない?」
ぞるげ「え?」
椎名「ぞるげも3年3組の一員でしょ」
田岡「皆ぞるげのこと好きなんだぜ?」
優しい笑顔でぞるげを見つめる生徒達。
ぞるげ「ゔ…ゔ……𝖂𝕿𝖄𝖅〜〜〜〜〜〜!!!!!」
椎名「あーあ、あっちの言葉出ちゃってる」
田岡「ほんとに嬉しいやつだな、こりゃ」
皆が呆れたように笑いながら、いつまでも嬉しい雄叫びをあげるぞるげ。
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数年後。
ぞるげ「𝕲𝕯𝕷(ただいま)」
玄関の扉を開けるぞるげ。
高校生の制服を着ている。
ぞるげ母「𝕻𝕰 𝕵𝕼(おかえりなさい)」
ぞるげ母の声。
巨大な体躯や鋭い爪などは見えるが、顔ははっきり見えない。
ぞるげ母「𝕼𝕶𝕱𝕺𝖂𝕬(今日の学校は楽しかった?)」
ぞるげ、屈託のない笑顔で
ぞるげ「𝖀𝕹(うん!)」
机の上には、お芝居の格好をして皆で撮った3年3組の写真が飾ってある。
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