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凶悪事件の判決を傍聴 ~「被告を懲役20年に処する」

裁判を傍聴してきた。
去年の1月、私がちょうど新型コロナ感染でホテルにカンヅメになっていた時にすぐ近くでおきた殺人事件の判決が出たのだ。
それだけに事件をとても身近に感じて、その後の行方を気にしていた。

被告の男は別れた女性をストーカー行為の末に、夕方帰宅の人通りが多い駅前の路上で刺殺した。
事件にいたる経緯から世間の注目度が高く、判決が出るその日の傍聴券は当然ながら抽選だ。

昼過ぎ裁判所に着いて抽選券をもらいに向かう途中、様子をメモ代わりに残しておこうと写真を撮っていたら、いきなり3人ほどの裁判所スタッフが走り寄ってきたのでビックリした。
庁舎内だけでなく敷地内はすでに写真撮影は禁止らしい。
その場で写した写真を削除させられた。

抽選券配布指定場所に集まった人たちは、いかにも新聞やテレビなどの記者と見える集団が目立つ。
傍聴券を取る確率を上げるために動員かけてるんだろうなぁ。
他にも目つきの鋭い一匹狼ルポライター風とか、なぜか制服姿の女子高生とか、なぜかロリータファッションの女の子とか…
80の傍聴券に300人ほどの希望者が集まっていたが、私は最近のくじ運の強さを発揮して抽選を勝ち取った。


法廷では冒頭2分間テレビカメラの撮影があった。
これもニュース性の高い事件ゆえか。
総勢で100人ほどの人が集まっているのに、その間物音ひとつせず息づかいも聞こえてこないくらいだ。
緊張する…
すぐ後ろで「きゅるるる…」と、誰かのお腹が鳴る音だけ聞こえてきた。

法廷に入ってきた被告は、何度もテレビニュースで見ていた攻撃的で凶悪な面相とはちがって、やけに真っ白で神妙そうで弱々しい表情をしていた。
思っていたより小柄だ。
傍聴席のすべての視線がいっせいにその男に注がれる気配を痛いほど感じる。

裁判長の判決文の読み上げは以前傍聴した強盗事件の時もそうだったが、けっこう淡々として何かあっけないかんじだ。
声も小さく、あまり抑揚がない。
これが、現実というドラマなのか…
だけど傍聴席のすぐそばで被告の姿ををスケッチする担当者や、私の隣の席で判読不明のきたない字でするするメモをとる記者なんかを見ていると、そちらの方に裁判のリアルを感じた。

判決は懲役20年。

同じ空間のなかに共に身を置きながら、被告の彼と私たち傍聴席の間には厳然と高い壁があることをかみしめた。

司法や報道に興味があるので、とてもいい経験をした一日だった。

          ( 次回は「 CDショップ閉店 顛末記 」のつづきを…)


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