見出し画像

CDショップ閉店 顛末記 ~CD業界のたそがれ その8

*今回のおススメBGM:Eddie Vedder / Guaranteed

Pearl JamのVo.だね。 大好きなシンガーだ。
映画「Into the wild(荒野へ)」の一曲。
小説(ノンフィクションか)も映画もすばらしく、そのサントラがEddie Vedderでつまらないはずがない。
あてなく、果てのない物語りの内容にこれ以上ないくらい寄り添った声で歌い紡ぐ。



休日で自然豊かな里山を散策して楽しんでいたとき、携帯が鳴った。
仕事モードからかけ離れているときの携帯の呼び出しほどイヤなものはない。
出ると、案の定店のスタッフからだった。

いいハナシで休日の店長に電話するヤツはまずいない。
だいたいはクレームか、本社から上司が抜き打ちでやって来るか、万引きがあったとか、そんなところだ。
だけどそのときは違った。
「売上金が抜かれました」と言うではないか。

詳しいオペレーションの説明は省くが、前日の別レジの売上を次の日に本レジに計上する。 その処理途中に数万円が消えたというのだ。
正確な金額は憶えてないが、4~5万円くらいだったと思う。

状況的に外部の犯行とは考えにくい。
防犯カメラは初歩的なものがついていたが、全部売場の方を向いていた。


多層階全フロアを統括する総店長による、その日その時間帯店にいたスタッフへの聴き取り調査がはじまると、すぐに怪しい一人のスタッフが浮かんできた。
20代前半くらいの女性で、店に度々不審な電話がかかってきていた。
電話の主は慇懃無礼な口調でその女性名指しで○○様はいらっしゃいますかと訊くので、その女性に代わると小声で何か事務的なやりとりをしているようだった。 内容までは聞き取れなかったが…
後で思うことだったが、それはおそらく借金返済の催促だったのではないだろうか。

かなり状況証拠的に突き詰めていってその女性を追求したが、最後まで盗ったとは認めなかった。
絶対的な物証はないので、残念ながら最終的には処分保留のような形になってしまった。

後で事情聴取した総店長と話したときに「いくらなんでもそんな雑な、すぐになくなったことが露呈するようなことをしますかねえ…」という私に彼はこう言った。
「甘いね。借金で金に困って切羽詰まったヤツは見境なくなんでもやるよ」

もう二十数年もまえのことだが、そんなやりとりを生々しく憶えている。


ついでに余談を。
その事件の少し後のことになるが、もう一人借金返済催促風の電話がよくかかってくるスタッフがいた。
特に不正をしたというワケではないが、前の件があるので危うい感じがしていた。

ある日朝礼で皆が三々五々集まってくるとき、その彼がいきなり素っ頓狂な声をあげた。
皆が注目するなか彼は「やったぁ、神が降りたぁ!」というではないか。
    ???
彼は朝礼に出るまえに、インフォメーションカウンターに設置されているサッカーくじの当選告知を見ていたのだ。

なんと、彼の買ったくじは該当日のサッカーJリーグ全試合の勝ち負けが全部当たっていた!(点数もだったか?)
彼が四百数十万円を手にすることがワカッタという瞬間だった。
当然その日の朝礼は皆もざわついて、朝礼にならなかった。

彼曰くその当選金で借金をいっきに全部返し、業者からはていねいに「また次も当社でよろしくお願いします」と言われたという。
ヨカッタね、不正やらかさなくて…


これが「負」の経験の三つめ、「社内不正」

四つめはもうありません。 

                         (その9につづく)



この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?