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CDショップ閉店 顛末記 ~CD業界のたそがれ その3

*今回のおススメBGM:加藤 和彦「メモリーズ(Memories)」

この曲を聴くといつも、じりじりと焦げるように熱かった晩夏の太陽が海のかなたに沈みゆく光景を思い浮かべる。 曲も歌詞も洋楽のように湿度が低いのに哀愁を感じる。 ラブソングでもないのにうるわしさを感じる。



「山野楽器」といえばあの… といわれるくらいCD業界では象徴的な存在。
しかもその本丸の銀座本店がCD販売を終了するというのは、かなりインパクトのあるニュースだった。
不謹慎ながら私のなかではそれは「免罪符」のように感じられた。
あの山野楽器さえ持ちこたえられなかったのだから…と。

それから取り急ぎ各所すり合わせて、閉店告知を開始したのだった。
店頭、ホームページ、X…

レジで会計のとき、告知POPを指さしながら閉店を案内する。
お客様の反応はさまざまだ。

「えっ!」と絶句する人。「これからどこで買ったらいいの?」と詰問調になる人。「まぁ、しかたないね。時代だからね」と無味な正論を言う人。「アンタたちどうすんの?」と心配してくれる人。

親しいお得意さん、たまにやって来て演歌のシングル買う人、お母さんといっしょに来て、もうやめるんだってよと説明されても意味がよく呑み込めない中学生の女の子。
車椅子でときどき来てくれる障がいのある人にはゲンコのまねをされた。
毎日のようにいろんな人に「残念ながら...」と案内した。 今日もね。

そうしていると、ホントに「免罪符」などと軽々しく逃げていていいのか?って思ってしまう。

その一方で日々、取引メーカーから閉店に向けて在庫商品リストや金額を送ってくれだの、特約店契約の解約方法だのが次つぎ舞い込み、ぼちぼち在庫処分セールの準備もしなければならないしなぁ。

閉店が決まったときあと三ヶ月あると思っていたのに、もうひと月過ぎようとしている。

あれよあれよ、だ。

あー。 ホントに閉店すんのかな…


                         (その4につづく)

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