高齢者に優しい店づくりを!


飲食店を取り巻く経営環境は相変わらず厳しい。過熱する価格競争は各社が協調して一服しているが、人件費高騰や人手不足は深刻である。人件費は食材に続き、費用構造の中でも占める割合が大きく重要管理費用である。この管理の巧拙が店舗盛衰の分岐点となるのでFL(食材・人件費、フード・レイバー)コストは60%内に抑えなければいけない。


業態にもよるが、飲食店は商品力がなければ存続が困難だから食材原価をケチる訳にはいかない。低価格業態は原価がどうしても高くなるので人件費抑制に力を注がなければ儲けが少ない。高単価業態は付加価値額が高い分、調理や接客のプロが必要となるので人件費の割合が高く、また高級感漂う豪華で快適な雰囲気づくりが必須で、設備投資の為に減価償却の負担が必要となるといったように、業態によって費用構成の割合が違うものだ。

その低価格業態の店の人件費抑制策は徹底しているようだ。いつ見ても接客する人が見当たらないような感じの店も多く、低価格スーパーやディスカウントストアのようにレジ店員しか店内に存在しないような店もある。
先日、ある定食やチェーン店に行った時の話である。高齢女性が入店され自動券売機で食券を購入しようとするが、やり方が分からず困っておられた。私は近くの席で見ていたが、赤の他人の一般客が高齢女性が財布を出している所には行きにくいものだ。

しかしホールに店員がおらず、私がキッチンやパントリーに向けて声をかけるが出てこないので、やむを得ず券売機の前で困っている高齢女性にやり方を教えてあげた。高齢女性は大変感謝している様子で私に深々と頭を下げられたので、私も人助けをしたかなととてもいい気分になったものである。
その後、今度は高齢男性が来られ、これがまたやり方が分からず怒っておられた。今度はたまたまホールに店員がいたので、その高齢男性がその店員を呼びつけ、ものすごい剣幕で怒鳴った。

一方的に責められる若いアルバイトの店員。店長が不在なのか店の人間は誰も助けに来ない。しょうがなく私が間に入り一方的に怒鳴られる店員をかばった。店も機械依存で作業的には助かっているかもしれない。しかし、使い方を学習されていない高齢者も多く来店されることも認識し、こういう不測の事態に備えた運営の仕組みを確立しなければならないとつくづく思ったものだ。
人や業務の機械化・自動化が進展しているが、高齢者で自動券売機の使い方が分からず困っているのに人手不足で手伝えない店。その使い方が分からず、ブチ切れて店員を怒鳴る高齢者。どっちもどっちだが、嫌な世の中になってきたものと感じるものである。

またゆったりと座られるということで、ファミレスのガストは高齢者にも人気があるが、そのガストは最近タッチパネル式のオーダーシステムを導入し、これがまた高齢者の頭を悩ませている。

ガストは大量のクーポン券も発行しており、その入力のやり方を含め、若い人でも注文するのが難しいのに、高齢者がそれをやるのは大変そうである。結果、店員を呼びその店員の負担が増え店のオペレーションが混乱している様子を目の当たりにする。人手不足への対応策が店を混乱させ、また顧客からも不満がられている。何をしている事やらだ。先が思いやられる。


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