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サマタイム〜大島弓子

大島弓子の「サマタイム」。高校生の頃に読んで衝撃受けたコミックで、忘れられない話。

主人公は田舎に住む男の子トオル。同じ村に住む幼なじみの女の子ミヨちゃんとの結婚を控えたある夏の晩、雷が送電線に落ちて村は停電する。去年の夏は冷凍庫の中身を溶かして後悔したから今夜は全部調理してしまえ。ジャンケンで勝って隣近所を呼び込み、酒盛りだと大騒ぎの両親。干渉しすぎる近所付き合いが村の良し悪し。

結婚式に来るはずの東京に住む親友の信一と連絡が取れず、心配して東京まで迎えに行く。トオルが親友のアパートで見つけたメモには世界大戦、核戦争を暗示する文字。窓を開けると何もない真白な世界。

気づくと帰りの電車の中。彼はただ、ひたすら幼なじみの女の子がいる村を目指す。

「だがおれは帰らねばならない
帰りたい
帰るのだ
あさってあんたはうちにくる」

雷以降の出来事は?夢? シックスセンス的な⁉︎
いつもメルヘンチックな大島弓子の世界が、サマタイムは不安な気持ちだけが残った。1984年のコミック。
絵本、アニメ「風が吹くとき」('82) も怖かった。当時は東西冷戦が背景に、核戦争は現実味あるお話だった。
チェルノブイリの原発事故は1986年。人間がコントロール出来なくて逃げるしかない恐怖が現実に起きた。30年経っても戻れない街の話は歴史の教科書の1ページのように遠く、薄れていった。
今現実に、帰りたいのに帰れない町がある。町はあるのに帰れない。ある日突然、いろんなものを置き去りにして、5年経っても時間が止まったままの町。

街の灯りはLEDに取替えられて、いつの間にか眩しさを取り戻した。私の田舎、電車の窓から眺める景色は太陽光パネルがやたら目に付く。

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