Q展 in 松本 MARKING RECORDS-②

201Q年8月11日

　朝8時ごろに一度目が覚める。扇風機の音や人の声をききつつまた入眠。10時すぎに起床。サラちゃんが座っていた。常にクールな顔をしている。やっぱりいいな、猫のいる生活は。近所でふるもの市をやっているということを聞いて、リコさんとニイミさんと3人で行くことにした。

　松本の夏はずっとエアコン要らずだったんだけどここ2~3年で気温がだんだん上ってきて今年とかはけっこうキツい、という話を歩きながら聞く。なるほど、MARKINGの2階も栞日の2階も日中けっこう暑いのにクーラーがないのを不思議に思っていたけど、これまでクーラー無くても過ごせるのが普通だったということなんだな。この辺は年季が入っていい感じにみえる住居が多い。タンクトップのじいちゃんが打ち水をしていた。

　直射日光もサンサンでめちゃくちゃに暑い。日陰に入らないときついし、入ってもそんなに大きくは変わらない。この気温はちょっともう笑えないなと思った。危険だ。松本でこれだから東京も相応に暑いだろう。ここ数年の日本の気候、大きな変化を感じる。

　ふるもの市で自家製しそソーダを買って飲んだ。出店者にふたりの知り合いが多く居たみたいで僕のことを紹介してくれたりした。近況報告とかを隣でぼんやり、かき氷機を眺めながら聞いていた。

　MARKING RECORDSの開店準備のため店に戻って、ついでにリハも終わらせる。昼時でお腹がすいて来たのでチャイナスパイス食堂へ行って薬膳ラーメンを食べる。目の前の棚には砕く前のいろんな実がそれぞれボトルに入れられて並んでいる。手書きのラベルにはシナモンナツメグクローブクミンなどよく聞く名前のスパイスが漢字(中国語読み?)で、効能と共に書かれていて、読んでるだけでなんか効いてくる気がする。

　キュウリは栄養価ほとんどないという、豆知識みたいなものを人づてに聞いたときことを思い出す。食事は栄養をとるだけのものだろうか。体を冷やしてくれるとか食物繊維の働きがどうとか、そういう栄養価と別のレイヤーの働きについて思いを馳せる。専門知識は全くないのでただ体と野菜のことをぼんやり思い描いていた。薬膳ラーメンはやさしくて美味しい。来週も食べよう。

　食べ終わったらMARKING RECORDSに戻る。きのうあまり店に居なかったのできょうはなるべくカウンターに座っていようと思った。いろんな人が出入りする。観光らしき外国人、大学生、高校生、旅行できた家族、たぶん近所の人たち。ガラスのドアの向こうにみえる表の人通りも結構多い。

　オランダ人の女性はかつて松本にしばらく滞在していて2年ぶりにまたやってきたようで、もちろんリコさんたちとも知り合いだった。今回はヒッチハイクで松本まできて、きのうは乗せてくれた車の人たちが行く山梨でのキャンプにそのまま同行していたらしい。朝の山の景色が素晴らしかったと言っていた。(実はふるもの市にいく道中でばったりこの人と会ってて、これらはそのときに聞いた話)。リコさんがQ曲を流して、一緒に音楽を聞いてくれた。アノ世ノを聞きながら、この歌はなにについて歌っているのか、と質問される。歌を聞き取るのはやっぱり難しいみたい。住んでいた街を飛び出して一人で旅をする人の歌だ、ということをバックパッカーに説明するのはなんだかへんな感じだった。彼女も含めて来訪者みんな、画面の中にしかないLINEのトークがそのままが長〜い1枚の紙という実体をもったことを大変面白がっていた。

　あんなに豪快な晴れだったのに、ライブをしようと思っていた17時に近づくにつれて雨が降り出した。夕立ち…というかこれはもうスコールだな。すぐ止んだけれど、雨がひどすぎて家を出るのが遅れた人もいるようだったので、すこし遅らせてスタートした。リコさん所有のレスポールをお借りした。

　日中、カセットテープ「サンキスト」を買ってくれていたベトナム人留学生の人も観に来てくれていた。リコさんがインストアライブのことを伝えてくれたからだ。予定になかったけどサンキストも演奏した。

　ライブ終わったあとにその彼が話しかけてくれて、自分はもうベトナムに帰ること、向こうではみんなストリーミングで音楽を聞いているけど自分はカセットとかCDが好きだというようなこと(ポータブルカセットプレーヤーを持ち歩いていた)、自分はギタリストで、国に帰ったら演奏家として友達といろいろ渡り歩きたい、みたいなことをおぼつかない日本語で教えてくれた。歌詞の内容までは理解できないけどすごくいいよっ、て言ってくれてすごく嬉しかった。

　身支度をして帰路へ。帰りの特急でまた「家をせおって歩いた」を読む。村上さんが文字通り自分の足で一歩一歩進みながら紡いで行く哲学を特急の椅子に腰掛けながら読んでいたので変な感じがする。ほとんど体を動かさずに白い平面を眺めているうちに松本から新宿までの移動が完了している。僕の身体からしたら、家から駅の往復以外は大した運動をしていない。不思議だ。