自殺未遂の患者さん

久々の投稿の割にはヘビーなタイトルにしてしまった。。日本ではコロナの第4波でコロナの収束どころか、また緊急事態宣言が・・・というニュースになってるようですが、ここロスのうちの病院ではコロナ禍がようやく過ぎ、病院内の状況は画期的によくなっています。ひどい時には200人ほどいたコロナ患者が今や一桁になってます。

では仕事は楽に??・・・いやいや、普通の患者さん、コロナだからとこれまで来院を控えていたような患者さんが増え、まぁ私の部署(Woundやストマ)の仕事量は山のように増えております。仕事の日は息切れしそうになりながら働いております。。

そんな前おきはさておき、タイトルの話しに入ると・・・おととい、それこそ到底その日のうちにはこなせないような数の患者数を抱えて働いていた日のシフトの終わりごろ、プリンターからまた新しい依頼患者の情報がプリントされて出てきた。(Wound やストマの患者を見にきてくれ・・という依頼はナースやドクターたちがコンピューターでオーダー入力するとうちのオフィスのプリンターにそれが出てくる仕組み)   「ほんとノンストップだよね・・・。今日はもう見に行かないよ。。今日見た患者さんの記録先にして今日の仕事終わらせないと・・」と同僚と話しながらその新しく来た依頼を無視しようとしてたのに、ちらっとみたら知ってる名前。。。

20代前半の男の子で私がここ2-3年外来で診ている患者さん。潰瘍性大腸炎のためストマをもっており、また仙骨部に別の病気で慢性の傷もあるボーイ。彼は過去に一度自傷行為もしており非常に繊細な男の子。いつもお父さんかお母さんと一緒にクリニックには来るし、下手すると一言もしゃべらず目も合わさないタイプ。もともとの性格ももちろんあるが、この病気のせいでひきこもり、鬱病もわずらっている。

とはいえ、私ともつきあいが長くなってきており、たまーに親なしでクリニックに訪れる時にはちょっとしゃべったり、私や他のスタッフがいうくだらないことにクスっと笑ってくれたり、私の中では「かわいいとこあるやーん!」と大事な大事な患者さんの一人なのです。

そんな彼が入院してる。しかも病室ナンバーみるとICUに。。。(あれ、最近手術するとかでもなかったし、ICU?!なんでだ??)と思ってチャートをみると、どうやら家で薬を大量に摂取し再度自殺を図ろうとしたらしい。

ソーシャルワーカーのノートを読み、大体の流れを知る。この日はもうオフィスに座って残りのチャートを終わらせて帰ろう!と思っていたところだったが、彼の傷やストマを診にいくという理由もあり、シフト終わりかけではあったがやはり気になり彼をみにいくことにした。

よく知るお母さんがベッドサイドにいた。患者さんはしばらくICUでの治療が必要そうではあったが、命には別条なさそうなことを知りとりあえずホッ。お母さんは私を見て喜んでくれたが、自殺行為のことに関しては話したくないようで、とりあえずストマの状況や傷の状況を診て処置してそれ関係のことだけ話しをして、また来るねと部屋を出た。

その日は(どうして自殺したいと思ったのだろう・・・)(ほんとに死のうと思ったのかな・・)(どういう気持ちだったんだろう・・)(何が引き金になったんだろう・・)(どうしたらそういう気持ちにならないように周りの人には何ができたんだろう・・)(お母さんやお父さんはどんな気持ちだったんだろう・・)(自分の子供と置き換えて考えると生きた心地がしないな・・)などなど、まぁ彼のことがグルグルグルグル頭の中に出てきた。。

彼のDepressionの原因は私が知るだけでも複数考えられる。ストマを持っていることで鬱になる患者さんはこれまでも見てきたことがある。特に管理の難しいストマでパウチがリークする頻度やリークの危険性が高い人、そのせいで痛みやかゆみがあったり、不眠傾向にある人には多い。でも大抵は一過性のもので「受け入れる」ということができると人は前向きに生きていけることの方が多い。彼の鬱の他の原因としては殿部にある慢性の傷。Pilonidal cyst(日本語調べたら毛巣嚢胞っていうのね・・)というのが原因の治りずらいやっかいな傷で彼も過去数度手術を受けているが各回治っては再発を繰り返している。ストマとこの傷とのダブルパンチでそりゃ友達作ったり彼女作ったり・・という発想にならないのもわからなくもないが、本当に残念なことに彼から友達の話しとかは聞いたことないし、外で働いてみるという話しも聞いたことがない。お母さんもお父さんもとてもやさしい人で彼に愛情をいっぱい注いでいるのは伝わってくる。心配もしているし、実際のケアもいっぱい手伝っている。でも息子に気遣いながら声かけてるな・・・というのも伝わってくる。どういう親子関係がいいんだろう。。心を支えてくれるような友達がいたら違ったのかなぁ・・・などなど考えてしまう。

身体状況が改善して退院した後、この先彼はまだ生きていくことになる。なんだか結論はないんだけど、サポートグループなどに入ってどうか立ち直ってくれますように。。彼のチャーミングな笑顔を知ってる私は彼の顔にそんな笑顔が増えるような人生になるといいな・・・と願うばかりです。

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