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ショート台本集 5月20~26日


X(旧ツイッター)でやってる短いフリー台本のまとめです。
5月20~16日分になります。
アドリブ・改変など含めてよろしければご自由にお使いください。

悪役

やあ、お邪魔しているよ。
そんなに驚くことじゃないだろう、友達を訪ねただけなんだ。
ああ、キッチンをお借りした。
祖母の代から伝わるブカティーニだ。
私の大好物でね。
是非、キミにも試してほしい。
美味いだろう?
私の思い出の味だ。
子供の頃の私は、今よりもひどい癇癪持ちでね。
傲慢で、何でも思い通りになると信じていた。
どんな些細なことでも自分が中心にいて全て把握していないと、気が済まないんだ。
たとえば夕食にブカティーニが出るかどうか。
たとえば自分の誕生日パーティーには、クラスメイト全員が来るかどうか。
ハッ、笑えるだろう?
それから…ああ、最近もそんな感情を持て余すことがあった。
十年前に拾って目をかけてきた、元は無価値で惨めな売人だった友人が…。
ここ数日、なぜ地方検事と仲良くしているのか…だとか。
…言っただろう?
私は傲慢で、癇癪持ちで、自分の思い通りにならないと…気が済まない。
そんな私が最も許せないのは、友人の裏切りだ。
全て与えてきたぞ。
金も、家も、仕事も、地位も。
キミのために割いた時間と資金は莫大だが、信じていればこそ些細なものだった。
…そんなキミが裏切るとはな。
そのブカティーニは、私からキミへの最後の贈り物だ。
私は確約をしない方だが、これだけは誓おう。
キミ自身と、キミが守ろうとしたもの全て…苦痛を与えて始末する。
…さあ友よ、食事を済ませろ。


癒し

ね…なんだか無理してない?
息苦しい、って顔に書いてる。
…つらいこと、あった?
何がつらいかもわからなくなっちゃった…とか?
キミ、いつも頑張ってるもんね。
…頑張ってるよ。
キミ自身がどう思ってても、キミは頑張ってる。
キミが自分を褒められないなら、代わりに私が褒めるから。
誰より最初に、キミのことを私が認める。
だからね?
キミは絶対、大丈夫。
あはは、改めてこういうこと言うと、なんか緊張するね。
…でも、これが私の気持ち。
もー、照れんなよ~♪


管制機

空中管制機クロノスより作戦参加中の各飛行隊へ通達。
地上作戦は現在のところ順調に推移。
各隊、攻撃を続行されたし。
ホッグス、地上部隊ピットブルより近接航空支援要請。
キルボックス・ツー・ブラヴォー、攻撃目標タンゴ・エイト・ゼロ。
ただちに攻撃せよ。
キマイラ・フライト、敵グループがホッグスに接近、迎撃せよ。
そちらのグループ、フランカー、4機。
対象スパルタン、方位030、距離32マイル、高度1万2千フィート。
交戦を許可。
ヴァイパー42、墜落したチヌークの戦闘捜索救難要請が出ている。
方位280、距離12マイル。
地上部隊ロメオ51が急行中。
到着まで敵を寄せ付けるな。


もう…いつも言ってるでしょう?
男の子も無理しなくていいの。
寂しい時は寂しいって言って?
お姉ちゃんだって寂しいんだから。
ん…よしよし、大丈夫だからね。
お姉ちゃん、絶対キミのところに帰ってくる。
うん、約束。
どう? ふふっ、少しは元気出たかな?
…うん。それじゃあ、また後で会いましょう。
ふぅ…また後で、か。
ずるいわね、私も…ずるくて、ガラでもない。
…そういうわけだから、あなたたちを通すわけにはいかないの。
あの子は追わせない。
元同僚も結構いるみたいだけど…悪いわね。
お姉ちゃんやり続けるって、もう決めちゃったから。
ここで、私と死んでもらうわ。


検視官っぽいの

…ああ、あんたか。
よくもまあ、いつもいつも…呼ぶ前に現れるもんだ。
最近の探偵は、盗聴器でも使うのかねぇ。
まあいい、来い。
今朝、埠頭で発見された。
見つけたのは港湾組合の事務員。
死亡推定時刻は、昨夜二時頃。
この金歯には見覚えがあるだろ。
例の、カモッラへの資金提供疑惑があった実業家だ。
死因は胸と額にそれぞれ一発。
防弾ベストでもつけてると思ったのかね。
三〇八口径の徹甲弾で撃ち抜かれてる、物騒になったもんだ。
で、こっからが面白いんだが…採取した線状痕が一致した。
使われた銃はレミントンM700。
持ち主は、この市警。
正確にはSWATに配備されてるものだ。
ただしそのままじゃ辻褄が合わん。
オロクが撃たれた時間、その狙撃銃はSWATと出動していた。
街の反対側でだ。
それからもうひとつ。
頭を抜いた方の弾には、別のDNAが付着していた。
三年前にSWATが射殺した男…。
この仏さんの眉間にオフィスで銃弾叩き込もうとして失敗した、元軍人の脳幹だ。
ちょっとした難問だぞ、探偵さんよ。
三年前に兵士を撃った弾が、タイムスリップして小金持ちの悪党を撃ったか。
それとも死んだ兵隊が、墓の中からこいつを撃ったかだ。


告白する女の子

はぁー…ん? …あ、キミかぁ。
どうしたの? 忘れ物?
…あはは、はいはい、いつも告白してくれてありがと。
ん…私? 私は、その…考え事というか、悩みというか。
…そうやって請け合おうとしてくれるのは、嬉しいけどさ。
あんまり気軽に言わない方がいいよ?
たぶん…キミにとって、残酷な内容だと思う。
…いいの?
ん…私、ね? 好きな人、いるんだ。
たぶん、本気の片想い…。
でね?
これを成就させたい、とかじゃなくて…いや同じようなもんかな。
ただちゃんと、好きですって伝えたいの。
む…簡単に言うなぁ、わかってないなぁー。
だってその子…彼氏、いるし。
…ん、同性だよ。私と同じ、女の子。
だから、って言うのもあるし…お互い異性でも、恋人いなくても、同じかもね。
…伝えるのがさ、怖いんだ。
届かないってわかってるから。
きっと拒絶される。
あはは、優しい子だからね?
きっと「あなたと私は友達のままじゃダメかな」とか、そんな風に言ってくれると思う。
思うけど…そんなことを言われるのも、言わせるのも怖い。
負担になりたくないし、迷惑かけたくないし…。
ひょっとしたら嫌われるかも、って…そんな不安ばっかり増えて。
言えないのに、あの人への好きだけずっと…ずっと苦しくて、つらくて。
…ごめん。
こんなこと聞かせて、ホントに…ごめん。
私、どうしたらいいんだろ…。


副会長

起きてますか、生徒会長?
昼寝はあとにしてください。
体育祭の演目についてですが、新しい要望が一件。
空想剣術同好会から科学部と合同で「レーザーブレード演舞」なるものを行ないたいと。
はぁー…生徒会長が食いつかないでください。
言ってしまえば、自作した火炎放射器でチャンバラごっこしようという話です。
まあ論外ですので、当然ながら却下。
代わりに、先日そのための実験とやらで全焼させた部室の修繕費を請求しておきます。
…聞いてますか?
なんですか、その顔は。
今は仕事中ですよ。
生徒会室で、私に何をさせようって言うんです?
…俺は構いませんがね。
会長命令なら仕方ない。
…言わなきゃわからないか? それとも言わせたいだけかな。
誘ってんだよ、会長。
いいから、俺を抱けって。
…ん、邪魔が来ちゃったな。…意気地なしが。
誰だ?
…ああ、書記くんか。
いや、私の用件は済んだところだ。
…おい、引っつきすぎだぞ、一年。
会長への礼儀をわきまえろ。
では失礼します…チッ。
…そこは俺の席だぞ、ポっと出の一年が。

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