フリー台本「老いない魔女 番外編」*1人読み

女性の一人読み。
同名タイトルの台本の、前日譚みたいなお話です。
モノローグ作ろうとして、気付いたらちょっと違う感じになってましたが…とりあえず書けたので載せておきます。
途中で泣く場面とか、同じキャラ同士の掛け合いとかあるので少しやっかいかも…!
アドリブ・改変など含め、よろしければご自由にお使いください。


■老いない魔女と小さな夢
 
◆魔女(独白)
これは私が湖畔の魔女と呼ばれるようになる、ずっと昔の話。
その頃の私には、救われる道がわからなくて。
縋れるような存在もいなくて。
時間から置き去りにされたまま、孤独を捨てることも出来ず、ただただ逃げ回っていた。
そんないつかの、小さな思い出だ。
 
◆街を散歩中の魔女
◆魔女
ふわぁー…んにゃ…眠ぅ…。
んー…ふぅ、目ぇ覚ますの、久しぶりだもんなぁ。
太陽ってこんな暑かったっけ…?
時間感覚とか体は前と同じなのに、変なとこでしっかり鈍ってるんだもんなぁ。
…変わっちゃったなぁ、この街。
ガラスなんて貴重品だったのに。
普通に家についてるし。
あれは…本屋かな?
大衆向けに本が売られちゃってる時代かぁ…ははっ、どうなってるんだろ。
まあ…うん、そっか。
二百年も経てば、そりゃ変わるかぁ…。
…ん? 何か見られてる?
…ああ、そっか。
二百年前の魔女が外歩いてたら、そうだよね…。
あーあ…ははっ、恨まれてるなぁー…。
…見ないでよ、そんな目で…。
はぁー…もういいや、どっか行っちゃうかぁ。
…月の3番。
第一の天使よ、願わくば我を救いたまえ。
第二の天使よ、速やかに我を連れ去りたまえ。
…どっか遠くの森、とにかく人のいないとこ。
最悪、人がいないだけでいいから。
転移開始。
 
 
◆場面転換。森に移動した魔女。
◆魔女
っとぉ…うわ、クラクラする…。
はぁ…魔力増やせたらいいのに。
不老不死っても、成長も何もないだもんなぁ…。
…どこだろ、ここ。
どっかの森かな。
危なくはなさそうだけど…はぁー…。
…みんな、白状だよねぇ。
仲間だとか、一緒にいるとか、言ってもさぁ…。
やっぱ先に死んじゃうし…。
みんなだけ、お墓の中にいるし…。
挙句に、さぁ…。
私が眠っちゃうってわかってて、大魔法で国ひとつ救わせといて…。
その後、別の災害が起きたからって…。
助けを求めても、目を覚まさなかったから、って…。
 
◆押し殺した泣き声。
あんな恨まなくてもいいじゃん…っ。
私、だって…っ。
好きで眠ってるわけ、ないじゃん…!
救われたくて…っ、でも救われなくて…っ。
だったら、誰か…っ、人助けすれば少しは…っ。
少しくらい、救われた気になれるんじゃないかって…!
はぁーっ、はぁーっ、はぁーっ…ぐ、くぅ…!
置いてかないでよ…っ。
隣に、居てよ…!
 
◆泣き止んで意識が途絶える。
はぁー…はぁー…はぁー…。
あーあ…また、眠くなってるし…。
もう、さぁ…魔法使う度、こんな…死ぬことも、できないなら…。
…もう、目覚めないでよ。
ここで、このまま…このまま…。
 
 
 
◆場面転換。夢の中。魔女と夢(声は魔女のまま)
◆魔女
ああ…また寝ちゃったか。
…もう、このままでいいんじゃないかなぁ。
ここなら誰もいないし…求められないし…恨まれないし。
死ぬってこともないなら…せめて永遠に、覚めないままで…。
私の魔法って、ここでも使えるのかな。
…お、使えるっぽい。
んじゃもう、いいや。終わらせちゃおう。
月の5番。
立ち上がりて敵を散らし、我を憎むものを…我を、憎むものを…。
 
◆夢
やめといた方がいいよ。
 
◆魔女
…うるさいな。
 
◆夢
やめときなって。
ながい眠りの魔法なんて、使わないでおこ?
それ、二度と目覚めないよ。
 
◆魔女
…ぴったりじゃん。
私、もう起きたくないよ。
誰かを助けても疎まれて、憎まれて…友達になっても、次に起きたら誰もいなくて。
…私さ、なんで生きてるの?
 
◆夢
…生きたくないの?
 
◆魔女
…生きたいよ。
でも、ひとりで生き続けるのは…もうやだよ。
私だって、誰かと…。
 
◆夢
ん…一緒に生きていたいよね。
 
◆魔女
…当たり前じゃん。
だから止めないでよ。
なんで止めるの?
 
◆夢
…そうだなぁ。たぶん、私のカン?
今はさ、まだ眠らない方がいいと思うんだよね。
 
◆魔女
…なにそれ。未来視なんて、私、出来ないけど。
 
◆夢
ん…だから、ただのカン。
たぶんね。もう少ししたら、ちょっとずつ変わるから。
きっと弟子が出来るよ。
すっごい世話焼きで、おじいちゃんになってもお節介してくるのに、自分のことは考えない人。
そしたら次にさ、家族が出来るかも。
その弟子が残してくれた、最後の遺産。
私と一緒に生きてくれる、しっかり者で口うるさい子と、私を継いでくれる大事な子。
そんな家族が二人。
そんな二人と一緒にさ、湖のほとりに住んだりして。
釣りしたり、ピクニックしたり、魔法を教えたり、料理を教わったり。
そういう「楽しい」がね、待ってるような気がするんだぁ。
夢みたいだよね。
今の私じゃ、考えられないくらい。
大事な人が三人も出来るなんて。
…だからさ。どうせ諦めちゃったなら、信じてみてよ。
いいでしょ?
私の…自分のカンなんだから。
 
◆魔女
…そっか。
本当にそうなら…そうなってくれるなら…。
 
 
 
◆場面転換。元の場所で目覚める魔女。
◆魔女
ん…うぅ…あ、そっか。寝ちゃってたんだ…。
太陽は、ええと…朝っぽいから一晩かな。
今のって夢かぁ。
…夢じゃなくなったら、いいなぁ。
全部、本当に待ってくれてたら…。
…起きてなくちゃ、会えないもんね。
寝るには、まだまだ日が高い…か。
…もう少しだけ。もう少しだけ、だよ。これが本当に最後。
信じてあげる。私のカンを。

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