見出し画像

君は「NHKヤングミュージックフェスティバル」を知っているか?

 一応知ってた。ローザ・ルクセンブルグが金賞取ったNHKのアマチュアバンドコンテストでしょ? ローザの出演パートだけyou tubeで見たことありますよ。
 
 先日、ツイッターでローザの出演時、84年の本選会のフル動画を「ローザ以外はなかなか微妙なバンドぞろいで今、見ると笑っちゃう場面もあるんですけど歴史的な記録として…」と紹介してる人がいて、何の気なしに見てみたら、これが本当に面白くてツイッターで実況してたら楽しかったんですよ。まぁ、これはそれをまとめたようなものです。
 
 NHK主催の全国規模のバンドコンテストなので、地方予選を勝ち抜いた猛者たちが集まっているはずなんだけど、これが本当にダサい。もう「80年代前半のダサいアマチュアバンド」の精緻なパロディを見てるんじゃないかとややこしい錯覚を覚えるくらいにダサい。とにかく見事にダサい。完膚なきまでダサい。
 例えば一番手に登場する帯広の坂本慎一とスウィングフェイスは、一見、杉真理風のカジュアルなポップスバンド、しかし実際は学園祭のステージに出て来た軽音サークルのバンドのようで華がない。
 
 もういちいち各バンドについて触れませんよ。義務教育ちゃいますからね。
 
 まず俺が感じたことは、何故オリジナルを作ると、みんな既成のダサい歌謡ポップスの模倣になってしまうのか、ということだ。オリジナリティのないオリジナルは悲しい。(しかし、これは80年代半ばの話だからで、今の若者は古今東西のポップス~ロックのセンスをうまく取り入れてオリジナルを作ってると思う。その咀嚼力がすごい。なんでもyou tubeで聴ける時代だし、宅録機材も超絶進化したから)。
 なんとなれば、模倣だろうが、なんちゃってだろうが、自由に歌を曲を作って発表する権利は誰にも等しくある。それはそう。しかし、それが表現として身内だけではない第三者に突き刺さるかどうかという話だ。俺、中学生みたいなこと言ってますか? ローザと他のバンドを見ていると、その点での絶対的な違いを感じてしまう。ローザは、もう立ち位置が違う。違いすぎる。それがまた切なく悲しい。

 4番手に登場し、「在中国少年」を披露したローザは、当時まだ21歳のどんとが動く動く。演奏うまいうまい。アイデアもあるある。オリジナリティあるある。ちなみに「在中国少年」ってのは「在広東少年」のもじりなわけだが、そこは審査員の矢野顕子にコメントをもらったのかどうか気になる(もらってないと思う。84年のこの回は各バンドへの審査員の講評が映像を見る限りない)。
 ドラムの三原重男が自身のブログで当時の思い出を書いている。新幹線での上京時はメンバーそれぞれの彼女たちも自腹でついてきて大騒ぎだったという。合間に挿入される前日の通しリハの楽屋風景で、大声でコーラスをがなりたてるローザ軍団にいらつきながらスティックを持って練習するどこかのバンドのドラマーが映っている。この楽屋風景を見ていると本当にみんなどこかの大学のゆるい軽音サークルのようだ。「歌謡曲の世界に通じるロックをやろうかな、なんちゃって(笑)」とか「最初はわかる人だけにわかってもらって、そこから広げて行ければ」とか、各バンドのメンバーが言ってることも若くて青くて幼い…。84年は前年度の金賞受賞者として石田裕が幕間に登場する。これが「なにがどうしてこうなった?」という紫色のジャンプスーツで佐野元春のようなロック歌謡、「ちまたのロマンチスト」を披露。これはローザと違った意味で悪夢のようなインパクトを残す(石田裕は85年にムーンから「僕たちが待ってた第三世代のSSW」としてデビューした時は、ちゃんとテレキャス抱えて、それ風のルックスになっている)。

 この「ヤングミュージックフェスティバル」は審査員が豪華で84年は細野晴臣、伊藤銀次、矢野顕子、渋谷陽一、NHKの変なディレクター(みんな若い!)。同時に動画が残っている85年は、林立夫(イケメン)、矢野顕子、ピーター・バラカン(若い)、渋谷、難波弘之、NHKの変なディレクターという豪華さ。ついでに言えば、84年の司会はNHKの千田アナ(若い)、飯島真理(アイドル時代、コメントにそつがない)、85年はNHKの若作りおっさんアナ(無理してる)、松原みき(ちょっと雰囲気がケバい)。もひとつついでに書いておくと84年のゲストはEPO(バンドに村松邦男と村上ポンタがいる)、85年のゲストはRCサクセション。RCは人気爆発期か。どちらも結構尺がある。

 84年は最後だけちょこっと審査員の全体の講評が出る。細野さんが「このコンテスト、大きな期待はしてなかったけど、ローザみたいなとんでもない奴に出会えたので意味があった」といった意味のことを言ってる。※俺の解釈です。
  これが85年になると各バンドに審査員の講評がつき、みんな忖度抜きでかなりきついことを言ってて面白い。みんな出てくるバンドにかなりムカついてたんだろうなということがわかる。85年はボウイ+ルースターズ+ロッカーズ+吉川晃司みたいなバンドがいきなり二組登場する。時代は変わった。お手本になるビートバンドの台頭を感じ出せる。また、この数年後にやってくるバンドブームを予期したかのような対応に困ってしまうコミック系も登場。これには矢野顕子が相当、立腹したようでトロピカルで呑気な楽曲に合わせ、ダッコちゃんを思わせる南の島の人メイクで、でかいヤシの葉を頭部に装着したベーシストを擁したチャンプキッズに「自分たちが楽しいのかお客さんを楽しませたいのか、よく考えてほしい」とキツイコメント。でも俺もそう思う。これはメンバー全員、幼稚園児コスで登場したマキちゃんとポップマンズにも言えることだ。ヴォーカルのマキちゃんに「お年はおいくつ?」とアッコちゃんのキツイ一言。85年はピーター・バラカンさん絶賛の沖縄出身の「六人組」が金賞。六人組もメジャーデビューしてるはず。エスニックポップで、できあがってる感じはダントツだった。
 

 ダサいダサいと書いたけど、思い起こしてみれば、この頃、俺もダサいバンドやってたんじゃないか。サルサをベースにしたラテン歌謡バンド。完全オリジナル指向(ティンバレス担当のヴォーカルの人が全部作っていた)。口さがない友人から、ちょっと馬鹿にされてたのを思い出した。ついでにラテン歌謡になる前、なんちゃってニュー・ウェイヴもやってた頃、俺は顔を黒塗りにして、迷彩服でステージに立ったことも思い出した(爆風スランプの影響。これがすべりまくった)。
 俺も相当ダサかった、80年代はみんなダサかったということでおあとがよろしいようで。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?