ふくはら

『全裸監督』を見た。

 ネトフリで『全裸監督』を見た。その昔に出た村西監督の著書、『ナイスですね』は持っていたし、ダイヤモンド~クリスタル映像の作品も何本か見ている。村西監督は、紆余曲折を経つつも、ツイッターを見る限り、今も健在らしいので何よりだ。村西監督は永遠のトリックスターだと思う。
この作品で村西役の山田孝之が、かなり忠実にコピーしている「おまたせしました!お待たせしすぎたかもしれません!」といった丁寧で気持ち悪いトークと白ブリーフ一枚で、でかいカメラを担いだハメ撮りスタイルの印象が強烈すぎる(山田は村西監督のようにブリーフの前をぐっしょり濡らしていないのが唯一残念でございます。それやってたらパーフェクト! マーベラスでございます!)。
 『全裸監督』のドラマは本橋信宏の同名著書を原作に進む(劇中で村西の片腕となる「川田」が本橋だろうと推定される。※wikiではクリスタル映像社長の西村忠治となっている→「村西」のネタ元)。虚々実々というか、ノン・フィクショナルなフィクションというか、ある程度、事実をベースにしながらも、そこはドラマなので、ドラマ的に歪曲された部分はある。例えば池沢(石橋凌、ライバル、ポセイドン映像のドン)、村井(リリー・フランキー、裏世界とつながる気持ち悪い警部)、古谷(國村準、歌舞伎町のヤクザ組長、裏ビデオを制作)、この三悪トリオの暗躍はなかなかにVシネチックだ(そこがいい)。事実をそのまま描けないというか、描いても面白くないし、第一洒落にならんで、ということだろう。
 最初、この作品は90分程度の所謂、映画だと思っていたが、見始めて全8話のシリーズ作だと気がついた。有吉何某やベッキー等、有名タレントが口々にあまりの面白さに一気見したというツイートを見たが、さすがに俺は一気に見れず、2日に分けてちびちび見た。
物語の核は「村西とおると黒木香がエロスに革命を起こした」ということになる。最初、女子学生役で出てくる黒木香役の森田望智が、それと理解できなかった。この森田嬢、おっぱいは小ぶりだが、エロ演技も堂に入っており、かなり感じが出ている(特に「黒木香」になってからのTV出演シーン)。何者だろうか?(今、調べたらめっちゃ新人だった。22歳。wikiもない)。
 感じが出てたといえば、このドラマの基調にあるのは80年代の初頭から末期、昭和から平成に変わってゆく時代感で、これはかなり本気。サファイア映像のガレージ・オフィスとその周辺のセットは、もう昭和30年代かと思わせる裏ぶれた新宿感が出ているし、黒木香が話題になるシーンで登場する各種フェイク雑誌も作りがかなり細かく、やっぱ美は細部に宿るのだ(美術さんのいい仕事)。
 全体に思った以上に金がかかっており(失礼!)、力作だ(字幕は勿論、各国語の吹き替え版もあり、全世界発信という前提で作られている)。
Vシネっぽい見せ場はともかく、俺が一番気になったのは、現在の村西監督と黒木香だ。
 村西監督は、オットセイドリンクを売り出したり、往年の勢いこそないものの一応は意気軒高なところを見せているが、黒木香は94年の自殺報道以来、2000年代は映像をめぐっての訴訟問題しか出てこない(現在54歳とのことだが、俺とそんなに世代差はないのか…)。
 ドラマはハワイで懲役370年の判決を受け、投獄された村西をサファイヤ映像の仲間たちが尽力して1億を工面して保釈し、時代の寵児となった黒木香と再びハメ撮りに挑み、「まだまだ頑張るでえ!エロスにもっと革命起こすでえ!というハッピーなシーンで終わる。今、村西とおるのwikiを見ていたが壮絶すぎる。実際はもっとぐちゃぐちゃだったわけで、ちょっとこれはそのままドラマ化できないだろう。
 最後で村西役の山田がちょこっと言ってる「空からスケベが降ってくる」という通信事業への挑戦(は、少し前の衛星放送の隆盛を思うと、あまりにも先を読みすぎたのだろう(CSバーンで「ダイヤモンドチャンネル」を開設→2年で中止。衛星放送自体が整備されていなかったことも大きい)。それも今やネトフリ、アマプラに代表されるネット配信の時代になっている…。
今やネットでエロいものはなんでもかんでも(タダで)簡単に見ることができる時代になってしまった(本当に大概のものは見ることができる)。しかし80年代末には、ブリーフ一枚と腋毛で時代を切り開いた男と女がいた、ということを忘れてはならない。
【おまけ】各話にゲストが出演するが、中盤からレンタルビデオ屋の店主役でピエール瀧がちょこちょこ出てくる。ピエールがややこしいこと抜きで普通に出てくるのがうれしい。しかしリリーさんとか、ピエールとか、どこからそういう芝居できるようになったのか。特に役者目指してたわけじゃないじゃん。でも芝居バリバリにできるじゃん。経験値なのかな? 聞いてみたい。阿部サダヲがいきなり温水さんの代役で準主役に抜擢されたら、いきなり芝居ができたのも思い出す(→『演歌なアイツは夜ごと不条理(パンク)な夢を見る』)。ひょんなことから村西をエロ業界に引き込むチンピラ、トシ役の満島真之介もうまいなあ。姉ちゃんに憧れて役者になったそうだが、みんな芝居できるものなのか?

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