競馬関係者の持続化給付金不正受給問題で抱く疑念

日本中央競馬会(JRA)が調教師や調教助手らが、新型コロナウイルス感染症対策の国の持続化給付金を不正受給していた問題で、JRAは6日にこれまでに行った状況調査の結果を発表しました。

この件について、衆議院予算委員会でJRAの後藤正幸理事長が参考人招致されるなど、一大社会問題にまで発展しました。
国会質疑が行われた時点では、調教助手や厩務員の受給は確認されていましたが、新たに調教師19人と騎手13人を含む計165人が受給し、総額は1億8983万9222円に及ぶことも判明しました。
165人中163人は既に返還、或いは返還予定となっており、残り2人の内1人は副業の収入減の影響による受給で、もう1人は現在病気休職中だそうです。

新型コロナウイルス感染症の影響で誰もが経済的に甚大な損失を被り、一事業者として持続化給付金を受給して生活を少しでも楽にしようと思う気持ちは誰もが共有しているものです。
ただ、中央競馬はコロナ禍においても無観客競馬の時期がありながらも順調に勝馬投票券を売り上げています。
上記の参考記事によると、昨年11月の時点で、美浦と栗東の調教師会が調教師を通じて厩舎スタッフに注意喚起があったそうで、注意喚起に受給申請をした厩舎関係者が7人いたというのです。
注意喚起そのものに気付いていなかったのか、注意喚起がされていても尚、藁をも縋る思いで給付金の受給申請をしなければならない程の経済状況だったのかまで、わたしは窺い知ることはできません。
それでも、調教師や騎手まで競馬単体の収入では生活していけない者もいるという現実を想像せずにいられません。

今回の持続化給付金の不正受給を指南したのは、数多の競走馬を所有する馬主でもある大阪の税理士であると言われています。
その税理士との関係の深い者が栗東に集中したことで、持続化給付金の趣旨を深く理解しないまま受給した栗東トレセン関係者が美浦トレセン関係者よりも多くなっていったのでしょう。

わたしが疑念を抱くのは、昨年秋の「注意喚起」の時点で報道されていれば、そこまでの一大社会問題に発展していたかということです。
今年の2月17日に確か共同通信が報道するまで、少なくとも一般の競馬ファンはこの問題を知ることはできませんでした。
報道の翌日の2月18日にJRAが書面での調査を開始しましたが、報道される前から本格的な調査を行おうともせず、報道される頃合を見計らったのではないかと訝って当然です。

また、スポーツニッポンや競馬専門紙の記者も持続化給付金を受給していたそうです。
競馬記者も、コロナ禍で競馬場内外でのイベントが忽ち中止となり、イベント出演に伴う収入が2019年以前と比較して無くなったことから受給を申請していたのでしょう。
そんな背景もあって、競馬記者の中にも持続化給付金の不正受給をこれまで批判できる雰囲気ではなかったのではないでしょうか。
そこから、競馬関係者と取材する記者の強い癒着構造が問題の表面化を遅らせる結果になったとわたしは強く疑念に思わざるを得ません。
問題を隠蔽すればする分だけ、問題のダメージは際限なく拡大します。
「バレない限りはやっても問題ないだろう」と思っていた者も多かったのかもしれません。
しかし、国会でも取り上げられる程、競馬を深く知らない者にも問題は認知されましたし、JRAの体質の問題に気付いている者は、「どうせ今回も自浄作用が働くことはないのだろう」と既に諦めている筈です。

日本の競馬界は古くからお役所体質が強く横たわっていますが、今回の持続化給付金の不正受給問題でも「バレなければいい」との意識が通底していたのではないでしょうか。
一般市民も持続化給付金の受給申請が通らないと嘆いている中で、競馬関係者が指南役の口車に乗って受給していては、過失では到底片付けられない代償を払うことになります。
JRAの後藤理事長、日本調教師会長の橋田満調教師、日本騎手クラブ会長の武豊騎手が一斉に謝罪していますが、1回の謝罪では到底信頼回復は不可能です。
それを競馬関係者やファンは深く共有しなければなりません。

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