厩舎関係者の労働争議決裂なのに中央競馬開催の怪

日本中央競馬会(JRA)の厩務員と調教助手が加入する労働組合と日本調教師会による第3回団体交渉が3月17日に決裂し、1999年4月3日以来24年ぶりのストライキによる中央競馬開催中止の可能性が取り沙汰され、ツイッター上でも関連ワードがトレンド入りした程でした。

今回の厩舎関係者の春闘の焦点は、2011年に開始された厩舎制度改革における新賃金体系の廃止で、当時の中央競馬は売上減少が深刻となり、人件費の削減が行われたのですが、近年は勝馬投票券の売上が回復し、厩務員や調教助手らが組織する4つの労働組合(関東労、全馬労、関西労、美駒労)は新賃金体系を廃止し、従来の体系に戻すよう訴えていました。
しかし、団体交渉は決裂し、全馬労は妥結したものの、残る3労組1342人が、3月18日と19日の競馬開催をストライキすることになりました。
そこでJRAは、競馬開催当日の業務を調教師や定年退職者を含む非組合員、補充員(一般企業における非正規雇用者でしょうか)らが行うことにより、中央競馬開催に漕ぎ着けることにしたのです。
その影響もあり、電話・インターネット投票の金曜夜から土曜朝9時までの発売は中止されることになりました。

尤も、厩舎関係者の賃金は日本の一般労働者の水準よりも高いとはいえ、競走馬という動物相手の仕事であり、厩舎作業や調教騎乗等で怪我を負ったり死亡したりするリスクが他の職種よりも高いことを鑑みても、決して高収入とは言えないという見解もあります。
また、一般の生命保険に厩舎関係者は加入できないと、わたしはオールド競馬ファンの父から聞きました。

今時の日本でストライキが社会の営為を妨害する行為として白眼視される情勢ですが、ストライキに持ち込んだだけでも評価すべきだと思う者も多いのでしょう。
しかしながら、3労組が決裂した中で1労組が妥結を受け容れざるを得なかったことだけでも、競馬サークル内の組合員と非組合員間の分断ばかりか、人間関係の断絶まで至らしめる効果が発生したことでしょう。
競走馬を育てる責任が人間にあるとはいえ、その人間の醜いエゴが発露した結果、労働争議の決裂に至ったことを、我々競馬ファンからも怒りを上げなければなりません。
場合によっては、ファンの立場からも馬券の購入を止める等の個人的なストライキに打って出るべきです!

売上が低迷していた時期に導入された賃金体系のまま競馬サークルに居続けることが、自分にとって本当に幸せか疑義を感じた者は、闘って待遇を改善させていくか、後先考えずスッパリ辞めていくかに分かれていくでしょう。
只でさえ、競馬学校厩務員課程の応募者そのものも減っているそうで、競馬の仕事をどうしてもしたいならば、外国に出るという者も増えるのではないでしょうか。

残る3労組のストライキが今週末以降も続くか不明で、それに調教師会が応えないならば、全ての厩舎関係者にとって最悪の展開が今後も続くでしょう。
せっかく「ウマ娘」を契機に競馬に関心を持ち始めた若者層も、厩舎関係者のストライキに驚いたかもしれませんが、そうした競馬ビギナーをも絶望させるような結果にもしもなるようならば、日本の競馬の未来は非常に暗いだけでしかありません。


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