朝、スーパーの駐車場で

 夜勤明けでスーパーに行ったら買い過ぎた。駐車場に上がるまでに4人前の寿司の平衡を保てなさそうだ。ホールのケーキはなんとか10キロの米袋の上に載せたが、寿司は手持ちしかない。エレベーター人がいませんようにと願っていたが親子が乗っている。朝早くになにをしているのだろう?

「サンタさんは?」
「サンタさんね、茉莉ちゃんがおばあちゃんのお家来るの知ってたら来てくれるかも」
 夫が飲みに出たタイミングで逃げ出した。駐車場で仮眠を取り、トイレを済ませてパンを1つだけ買ってここから実家まで最後の1時間。私も茉莉も疲れている。一緒にエレベーターに乗っているおじさんも。

 どうやら事情があるのだろう。娘はパンを握りしめている。この寒いのに、ダウンの下は着の身着のままのようだ。娘はサンタさんが来ないことを悟っているらしい。でも、母に気を遣っているのだろう。何も言わない。クリスマスの朝に心が痛んだ。しかし、ここで何かしてあげるわけにもいかない。

 ここら辺はまだ雪は降っていない。実家の周りは雪の予報で、スタッドレスではないから、どうしたらいいだろう。ここに昼までいて様子を見ようか。いや、早めに行かないと。
「ママ…」と茉莉が服の裾に掴まって駐車場の奥を指した。そちらを見ると、橇があって、トナカイがいて、さっきのおじさんが袋をごそごそしている。

「あの、これ、茉莉ちゃんに、よかったら」
「え、いや…茉莉、ありがとうは?」
「ありがとう」
「後、これ、買い過ぎちゃって、割引シールついてるけど、もしよかったら、食べてください」
「…いいえ、結構です」
「…そうですか」
「メリークリスマス」
「あ、メリークリスマス」

poise/均衡

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