顔を合わせたくないのは

「健太同窓会出んの?」
「出ないけど? 武は?」
「出るよ。全然会ってないし」
「ふうん」
「健太出たら?」
「いや、いい」
「どうして?」
「聞くなよ」
「いや、聞くでしょ」
「飯来るの遅くない?」
「何それ、下手くそなん?」
「は? 別に何にもねえし」
「明美は商社に決まったんだって」

「え、それ、すごいよかったじゃん」
「ああ、うん」
「すげえ苦労してるって聞いたけど、そうでもなかったの?」
「いや、全然知らん」
「え、じゃあ、今のはなに?」
「いや、気にしてるかなって思って」
「…気にはしてる」
「言えよー。行こうよー」
「いや、だから行かん」
「は? 行くしかないっしょ」

「俺、何もしてないしな」
「いや、今からするチャンスじゃんか」
「違う、俺、今何もしてないし、他の人が何かしてるの見たり話聞いたりするの、耐えられない」
「え、そうなん」
「まあ、別にいいんだけど」
「別に普通に仕事してんじゃん」
「そうだけど」
「じゃいいんじゃね?」
「本当に俺がしたいことかわかんないから」

「え、まだそんなんなの?」
「なんかまだできそうな気がすんのよ」
「それ、しんどくね?」
「お前は?」
「俺は諦めたけど。何もできないし」
「偉いな」
「いや、偉いとかじゃないし。普通っしょ、それが」
「飯遅いな」
「まあ、健太っぽいんじゃない? そこが。な、同窓会、行こうぜ」
「無理だわ」

grate

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